「……あの、莉鷹様。さすがにこれはやりすぎでは?」
月宵宮の裏庭。
私は、目の前に立ちはだかる絶世の美女を見上げて溜息をついた。
私の手には、使い慣れた洗濯桶。
中には、朝一番で洗おうと思っていたシーツが入っている。
だが、莉鷹様はその桶を奪い取るどころか、私の腕を掴んで離さない。
「櫻花。言ったはずだ、重いものを持つなと。その細い腕でこんなものを運んで、もし筋でも違えたらどうする」
「ただの洗濯物ですよ。以前はこれ三つ担いで階段登ってましたから」
「以前は以前だ。今は、お前は私の所有物だ。……琥珀! 源内!」
莉鷹様が鋭く呼ぶと、茂みの陰から「げっ」という顔をした琥珀と、無表情を通り越して仏のような顔になった源内が現れた。
「……はいはい、お呼びでしょうか、主人様」
「これを洗っておけ。櫻花の指に、これ以上無駄なタコを作るな」
莉鷹様がシーツの入った桶を、ゴミでも投げるように琥珀に押し付ける。
琥珀は受け取った桶を抱え、私を見て深々と溜息をついた。
「ねえ櫻花、君からも言ってよ。僕たち、これでも『国を揺るがす隠密』とか『精鋭武官』とか呼ばれてるんだけど。下女の洗濯代行が任務になるなんて聞いてないよ」
「……同意。最近、剣より洗濯板を持ってる時間の方が長い」
源内までが、ボソリと、けれど切実なトーンで愚痴をこぼす。
「すみません、お二人とも。……ほら、莉鷹様。みんな困ってます。私にやらせてください」
「ダメだ。お前の手は、私のための計算書を書き、夜に私を癒やすためだけに使え」
薔薇姫姿の莉鷹様は、人目があるのも構わず、私の腰をグイと引き寄せた。
鈴を転がすような美声で、なんて恥ずかしいことを!
月宵宮の裏庭。
私は、目の前に立ちはだかる絶世の美女を見上げて溜息をついた。
私の手には、使い慣れた洗濯桶。
中には、朝一番で洗おうと思っていたシーツが入っている。
だが、莉鷹様はその桶を奪い取るどころか、私の腕を掴んで離さない。
「櫻花。言ったはずだ、重いものを持つなと。その細い腕でこんなものを運んで、もし筋でも違えたらどうする」
「ただの洗濯物ですよ。以前はこれ三つ担いで階段登ってましたから」
「以前は以前だ。今は、お前は私の所有物だ。……琥珀! 源内!」
莉鷹様が鋭く呼ぶと、茂みの陰から「げっ」という顔をした琥珀と、無表情を通り越して仏のような顔になった源内が現れた。
「……はいはい、お呼びでしょうか、主人様」
「これを洗っておけ。櫻花の指に、これ以上無駄なタコを作るな」
莉鷹様がシーツの入った桶を、ゴミでも投げるように琥珀に押し付ける。
琥珀は受け取った桶を抱え、私を見て深々と溜息をついた。
「ねえ櫻花、君からも言ってよ。僕たち、これでも『国を揺るがす隠密』とか『精鋭武官』とか呼ばれてるんだけど。下女の洗濯代行が任務になるなんて聞いてないよ」
「……同意。最近、剣より洗濯板を持ってる時間の方が長い」
源内までが、ボソリと、けれど切実なトーンで愚痴をこぼす。
「すみません、お二人とも。……ほら、莉鷹様。みんな困ってます。私にやらせてください」
「ダメだ。お前の手は、私のための計算書を書き、夜に私を癒やすためだけに使え」
薔薇姫姿の莉鷹様は、人目があるのも構わず、私の腰をグイと引き寄せた。
鈴を転がすような美声で、なんて恥ずかしいことを!

