翌朝。私が目を覚ました時、腰から下に物理的な拒絶反応が起きていた。
「……っつ。……っあー、まじか。これ、労働基準法違反どころの騒ぎじゃないんだけど」
現代のブラック企業でも、ここまで全身の節々がミシミシ言うほど働かされたことはない。
ぼんやりとした視界の先、豪華な天蓋付きのベッドの傍らで、主犯格の男——莉鷹様は、すでに宮の主である『薔薇姫』としての身支度を始めていた。
「お目覚めか、櫻花。……案外、体力がある。昼まで寝ているかと思ったが」
鏡越しに、満足げな、それはもう最高に機嫌の良い猛獣の顔で笑いかけてくる。
昨夜、私の理性を粉々に砕いたあの低い声。あの情熱的な、けれど逃げ場のない執着愛。
……思い出しただけで、顔から火が出そうだ。
「……莉鷹様の『一睡もさせない』という言葉に、誇張がないことはよく分かりました。……今度から、残業代の計算に『深夜加算』と『危険手当』、あと『精神的苦痛への慰謝料』を乗せさせていただきます」
「ふっ。お前にしては、声が震えているぞ。……昨夜の余韻が、まだ抜けていないのか?」
莉鷹様は老女官たちを下がらせると、音もなくベッドの縁に腰掛け、私の額に手を置いた。

