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 月宵宮に戻ったのは、夜の帳が完全に下りた頃だった。

 主寝室では、すでに薔薇姫の仮面を取り去り、薄衣を羽織っただけの莉鷹様が、気怠げに寝椅子へ横たわっていた。

「……報告は?」

 鈴を転がすような女の声ではない。
 低く、鼓膜を心地よく震わせる男の声。

 私は一礼し、今日、木蓮宮で起きた秘密会議について詳細を伝えた。
 東宮様と凛星様が、腐敗した大人たちに反旗を翻す決意を固めたことも含めて。

「……ほう。子供たちを『共犯者』に仕立て上げたか。お前、自分が何をしたか分かっているのか?」

 莉鷹様がゆっくりと上体を起こす。
 長い黒髪が肩から滑り落ち、月の光に照らされたその胸元は、昨夜見た通り、残酷なほど男であることを主張していた。
 
 目に毒過ぎる。

「後宮の解体計画を、私の許可なく彼らに開示した。これは重罪だぞ、櫻花」

「これは、投資という概念です。将来、有益となる人材を今のうちに囲い込んでおく。組織再編の鉄則です」

 私は努めて冷静に、現代っ子のビジネス論をぶつけてみた。
 けれど、莉鷹様の瞳に宿る熱は、政治的な関心とは別の方向へ向かっているように見えた。