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 お茶がゆっくりと琥珀色に染まっていくのを眺めていると、東宮様がぼそりと口を開いた。

「……ねえ、櫻花。母上(皇后)は、あのお茶を飲んで少しは優しくなったかな?」

「どういう意味ですか?」

「最近、母上は怖いんだ。いつも怒鳴っているか、誰かを罰している。丞相のおじさんと会っている時は、もっと怖い。……僕、本当はあの人、苦手なんだよね」

 十歳の少年が漏らした、切実な本音。
 この国の次代を担う東宮様は、自分の母親が実権という魔物に取り憑かれていることを、子供心に察しているらしい。
 
 ……あー。こういうのって、前世でもあったな。
 仕事に私情を持ち込みすぎて、家庭でもピリピリしてる上司。

「東宮様……」

「情けないわね、おねしょ太子。……でも、私の国も似たようなものよ。兄様たちは殺し合い、父様は強い方に味方するだけ。だから私は、ここへ売られたの」

 凛星様が自嘲気味に笑い、完成した冷たいお茶を一口飲んだ。

「……美味しい。でも、これだけじゃ足りないわ。ねえ、櫻花。あなたは薔薇おば……薔薇姫の懐刀なんでしょ? あの方は、何を企んでいるの?」