完璧美貌な女装公子は、夜だけ猛獣へと豹変する~顔面凶器な女装公子の秘密を握ったら、知恵も身も心もまるごとお買い上げされました~

 お茶会での大立ち回りを終えた翌日。
 私は莉鷹(薔薇姫)様から「監視してこい」という身も蓋もない命令を受け、再び凛星様の住まう『木蓮宮(もくれんきゅう)』へと足を運んでいた。

「遅いわよ、櫻花! 待ちくたびれて干からびるところだったわ!」

「僕も! あのキラキラしたお茶、早く作ってよ!」

 ……到着早々、十二歳の凛星様と十歳の東宮様に詰め寄られる。
 人払いを済ませた密室。
 きらびやかな装飾に囲まれたこの場所で、なぜか私は調理実習のインストラクターをやる羽目になっていた。

「はいはい、お待たせいたしました。そんなに食い付かなくても逃げませんから」

 私は手際よく、薬草園からくすね……いえ、正式に譲り受けてきたハーブと、貴重な氷、そして甘いシロップを並べる。
 二人はまるでお菓子を待つ小型犬のような目で、私の手元を凝視していた。

「いいですか、大事なのは『放置』です。冷たい水の中でじっくりと香りが開くのを待つ。焦ってかき混ぜると、せっかくの透明感が濁って美しくありません。忍耐です、忍耐」

「……待つのね。外交と同じだわ」

 凛星様がポツリと漏らした言葉に、私は心の中で「重っ」とツッコんだ。
 十二歳にして隣国から売られてきた人質。
 彼女のこういう、ふとした大人びた一面が、現代っ子の私の良心を地味に削ってくる。