皇后は、凛星様に促されるまま、渋々とグラスを口にした。
その一口で、彼女の眉間の皺が、驚きによってわずかに緩む。
「……ふん。変わった味ね。でも、確かにこの暑さには悪くないわ」
場の空気が、劇的に変わった。
張り詰めていた毒の応酬は雲散し、妃たちの関心は一気に『薔薇姫様の侍女が淹れた、見たこともないお茶』へと向けられた。
皆、後宮という檻の中で、退屈を持て余しているのだ。
莉鷹様は、その様子を満足げに眺めながら、扇で口元を隠して囁いた。
「……上手いな。皇后の意識をお茶に向けさせつつ、凛星を味方につけるとは。お前、本当にただの『下女』か?」
「かつて、茶館で給仕したことがあるだけですよ」
私は小声で答え、さらに追加のグラスを準備した。
このお茶会での一番の成果は、皇后の機嫌を損ねることなく、東宮妃凛星様との間に、目に見えない細い絆を築いたこと。
そして何より……
「櫻花。お前が注意を引き付けていた間に、皇后の懐にある『帳簿の鍵』を盗み出す隙ができた」
お茶を受け取る際に、莉鷹様の指が、私の指先に触れる。
その指の熱さに、私は思わず心臓を跳ねさせた。
お茶碗の中の革命は、成功。
とはいえ、この主人との秘密の共有は、お茶よりもずっとずっと、心臓に悪い刺激を含んでいた。
その一口で、彼女の眉間の皺が、驚きによってわずかに緩む。
「……ふん。変わった味ね。でも、確かにこの暑さには悪くないわ」
場の空気が、劇的に変わった。
張り詰めていた毒の応酬は雲散し、妃たちの関心は一気に『薔薇姫様の侍女が淹れた、見たこともないお茶』へと向けられた。
皆、後宮という檻の中で、退屈を持て余しているのだ。
莉鷹様は、その様子を満足げに眺めながら、扇で口元を隠して囁いた。
「……上手いな。皇后の意識をお茶に向けさせつつ、凛星を味方につけるとは。お前、本当にただの『下女』か?」
「かつて、茶館で給仕したことがあるだけですよ」
私は小声で答え、さらに追加のグラスを準備した。
このお茶会での一番の成果は、皇后の機嫌を損ねることなく、東宮妃凛星様との間に、目に見えない細い絆を築いたこと。
そして何より……
「櫻花。お前が注意を引き付けていた間に、皇后の懐にある『帳簿の鍵』を盗み出す隙ができた」
お茶を受け取る際に、莉鷹様の指が、私の指先に触れる。
その指の熱さに、私は思わず心臓を跳ねさせた。
お茶碗の中の革命は、成功。
とはいえ、この主人との秘密の共有は、お茶よりもずっとずっと、心臓に悪い刺激を含んでいた。

