完璧美貌な女装公子は、夜だけ猛獣へと豹変する~顔面凶器な女装公子の秘密を握ったら、知恵も身も心もまるごとお買い上げされました~

 彼が食事を終える頃には、私はすっかり共犯者としてのスイッチに切り替わっていた。

「莉鷹様。昨夜、渡された過去三年の帳簿をすべて突き合わせました。面白いことがわかりましたよ」

「ほう、聞こうか」

 私は懐から、夜通し作成した日本語交じりの報告書を取り出す。
 こちらの文字は漢字に似た文字なのだけれど、なんせ画数が多い。
 筆を使って、手早く書き付けるのが、難しい。

「尚食局から丞相の私邸へ流れている食材と備品の総額……なんと、後宮の年間運営費の一割に相当します。それも、ただの横領じゃありません。帳簿上は『東宮妃の入内準備』として処理されているみたいです」

「凛星の名を使っているのか。……いい度胸だな、皇后の犬どもは」

 莉鷹様の瞳に、冷徹な殺気が宿る。昨夜私を押し倒した時の色気とは違う、政治家としての鋭い輝きだ。

「まずは外堀から埋めるか……。櫻花、お前は次に開かれる皇后主催の茶会の席で、凛星に薔薇姫への貸しを作ってもらうか」

 莉鷹様は立ち上がり、私の顎を指先でクイと持ち上げた。

「私の所有物として、最高の働きを期待しているぞ。……もし失敗したら、次の奉仕はもっと過酷なものになると思え」

「……はいはい。精一杯、頑張らせていただきますよ、主人様」

 こうして、月宵宮の秘密の主従による、最初の大仕事が幕を開けた。
 私は襟元の指跡を隠しながら、隣国から来た勝気な公主と、実権を握る皇后が待つ戦場へと向かう準備を始めた。