逃げようとした瞬間、扉が内側から勢いよく開く。
視界が反転し、私は背後の壁に強く押し付けられていた。
「……見たな?」
耳元で響いたのは、鈴を転がすような美女の声ではない。
地を這うように低く、そして喉の奥が震えるような、紛れもない男の人の声だった。
目の前には、乱れた長い髪の間から覗く、鋭利な刃物のような瞳。
薔薇姫だった人の手が、私の首筋に添えられる。
細くしなやかな指だと思っていたそれは、今や獲物の息の根を止めるための、冷徹な万力のように感じられた。
「あー……その。……えーっと、綺麗な背中ですね?」
「この状況で、よくそんなふざけた口が叩けるな」
鼻で笑い、私を逃がさないようにさらに距離を詰めてきた。
裸の胸板から発せられる体温と、男特有の香りが、逃げ場のない空間に充満する。
顔面凶器。その美しさは、暗闇の中でより一層の毒気を帯びていた。
「薔薇姫は今、国外逃亡中だ。……ここにいるのは、お前の雇い主にして、お前の命をいつでも刈り取れる男だ」
顔が、唇が触れそうなほど近くにまで降りてくる。
冷たい汗が背中を伝う。
これは、今まで経験したことのない、本当の意味での死の予感。
視界が反転し、私は背後の壁に強く押し付けられていた。
「……見たな?」
耳元で響いたのは、鈴を転がすような美女の声ではない。
地を這うように低く、そして喉の奥が震えるような、紛れもない男の人の声だった。
目の前には、乱れた長い髪の間から覗く、鋭利な刃物のような瞳。
薔薇姫だった人の手が、私の首筋に添えられる。
細くしなやかな指だと思っていたそれは、今や獲物の息の根を止めるための、冷徹な万力のように感じられた。
「あー……その。……えーっと、綺麗な背中ですね?」
「この状況で、よくそんなふざけた口が叩けるな」
鼻で笑い、私を逃がさないようにさらに距離を詰めてきた。
裸の胸板から発せられる体温と、男特有の香りが、逃げ場のない空間に充満する。
顔面凶器。その美しさは、暗闇の中でより一層の毒気を帯びていた。
「薔薇姫は今、国外逃亡中だ。……ここにいるのは、お前の雇い主にして、お前の命をいつでも刈り取れる男だ」
顔が、唇が触れそうなほど近くにまで降りてくる。
冷たい汗が背中を伝う。
これは、今まで経験したことのない、本当の意味での死の予感。

