◇
「……捨てても帰ってくる日本人形か」
全て話終えると、信永くんが神妙な顔付きになる。
「もしかして、メリーさん的な?」大和さんの例えに信永くんはスパッと切り捨てた。
「いや、それとは違うな。寧ろ、あれは律儀に自分の居場所を教えてくれる親切な奴だろ。こいつのは突拍子もなく現れる。遠くに捨てても、家に戻るとあの人形が置いてある。まるで、最初からそこに居たみたいに……」
「でも、人形……棗ちゃんをどうしても何とかしたくて。お寺に行って供養してもらおうとしたんです。だけど、そのお寺が全焼したり別のお寺では和尚さんが病にかかったりで、不幸な事ばかりが続いて」
「んで、お前が言っていた例の人形はどこにあるんだ?」
「ないんです」非常に言いにくいが口を開けざるをえなかった。
「は?」
案の定、拍子抜けた反応を受け僕は心底家に帰りたくなった。
「お、お父さんの転勤と高校先の影響でここに引っ越した後に捨てたんです。そしたら、家に帰ってこなくなったんです」
「帰ってこなくなった? 妙だな……普通なら引越し先にでも現れる筈だが」
「もう、解放されたってほっとしたんですけれど……。呪われてるだなんて……」
そこまで話した所で僕は顔を俯く。当時は棗ちゃんから離れたい一心だった。だから捨てるのにも必死で、できるだけ戻ってこられないように隣の市のごみ捨て場まで一人で向かったりもした。
しかし、どれも効果はなく不気味さが増すだけだった。
今思えば罰当たりだったのも知っている。今更呪われていると指摘されてもしょうがない。
「それにしてもお前、人形に名前なんか付けたのかよ」
信永くんにそれが恰も駄目みたいな言い方をされる。僕はムキになって「だって!」と声を荒げた。
「だって、あの時は本当に可愛くてずっと一緒に居たかったから……」
「馬鹿じゃねーの。いいか、名前って言うのはその人そのものを表す呪いみたいなものなんだよ。それを、人形とかに付けたら解きたくても解くことは難しいっつーの。特に、名付け親がお前ならな」
主張激しめに指さされる。そこまで全否定されると、ショックが込み上げてきた。今日の今日まで初対面だった人に対して、並々ならぬ嫌悪感を抱いた。
「お兄ちゃん?」僕の表情を察知した敦さんが兄を睨みつける。
兄弟揃って美形であるためか、敦さんの目付きも背筋がゾワゾワする。信永くんは終始しまったと口を噤んだ。そして、彼は僕の目を何度もチラ見しながら慎重な言葉遣いへと変わった。
「た、確かに、幼い時は愛着が湧くものには名前を付けて一緒に遊んだりする癖がある。お、俺も昔、ぬいぐるみに名前を付けて一緒に居たからな」
「え?! そうなの?」
不愉快な感情が一気に吹き飛んだ。信永くんの顔を見ると、頬が僅かに赤くなっていた。僕から視線を逸らし、「あ、あぁ」とたどたどしい返事が返ってくる。
「だから、別にその……。気にするなって言うのは嘘だけど……」
「お兄ちゃん、あなたに言い過ぎたって思っているみたい。だから、あまり気を落とさないでください」
「はぁ!? ちげーし、敦お前出鱈目なこと言うんじゃねーよ」
敦さんの付け足し言葉に信永くんは大袈裟に反応した。敦さんはしてやってりと余裕の笑みだ。
こんな美人でかっこいい人も、ぬいぐるみを大切にするんだなぁ。男性だから、ぬいぐるみを持つだなんて気持ち悪いと言われるかと思った。
もしかして信永くんって本当は優しい人なのかな。そんな淡い期待が心の中で生まれたと同時に、ある疑問も抱える。
じゃあ、なんで信永くんは学校に来ないんだろう。こんなに綺麗な人ならきっとクラスで人気者な筈なのになぁ。
何だか勿体ない。
しかし、信永くんの次の言葉でそんな考えも一気に吹き飛んだ。
「結論から言うがその呪いは簡単には解けない」
「えぇ?! そんな……」
薄々気付いていたが、何より信永くんの目付きが怖い。
「だからこそ、まずはその人形の穢れを取るために供養しないといけないんだ。今のお前は、その人形の穢れで充満してるんだよ」
穢れ……?
じゃあ、臭うっていわれたのもそれが原因ってこと?
「でもどうやって治すの?」
「お前、名前はなんて言うんだっけ」
「音羽暖です……」
さっきも言った筈なんだけれど、僕の名前は覚えにくいのかな。余計なことは言わずに、おずおずと告げる。
「暖。そうか。そう言えばさっき、俺らに何でもするから許してって言ったよな?」
「え?! で、でもさっきのは仕方なく」
「言ったよな?」
「は、はい」
威圧的な眼差しに半ば強制に首を何度も振った。その反応に、大和さんや敦さんが顔を綻ばせたのだ。
一体何をさせられるんだろう。あの時何でもするだなんて言わなきゃよかった。過去のことを後悔しても遅く、彼らの中では既に話が膨らんでいた。
大和さんは胡坐をかいて、うんうんと頷く。
「丁度、人も欲しかったんだよなー。子守係」
「全く、大和さんがあんなに依頼を持ち出すから大変になっちゃうんですよ。お陰で家計簿を支える良い糧にはなってますけれど」
「こ、子守係?」二人の言葉に唖然とする。
まさか、育児の手伝いをするの!?
どうしよう、家事ならできそうだけれど赤ちゃんのあやし方なんて分からないよ。
「馬鹿、本物の赤ん坊の面倒を見るわけじゃねーから」
「そうなの?」
「敦、ちょっと誰か連れてきてくれないか?」
「うん。ちょっと待ってて」
敦さんはそう言うと一度居間を抜け出す。何を連れてくるんだろう、僕は彼が戻ってくるであろう扉を凝視していた。
間もなくして、廊下を歩く音が大きくなる。
敦さんが「お待たせしました」と現れる。彼の腕には確かに誰かが抱かれていた。
「うわぁ!!」
僕はその正体を知り、思わず逃げ腰になった。
敦さんが抱えていたのは紛れもない日本人形だった。
おかっぱ頭に青い着物、死んだような目と目が合う。僕は瞬時に棗ちゃんを想起させた。
「あれ、そんなに怖がらなくても……。可愛いのに」敦さんは眉を下げて呟く。そして、人形を大事そうに頭をなで始める。
僕はこの時点ですぐに嫌な予感が働いた。
「敦、音羽くんは人形関連でトラウマを抱えてるんだ。ましてや日本人形なら尚更だろ?」
「でもこの仕事を任せて大丈夫なの?」
敦さんの不安そうな表情に信永くんは「大丈夫だろ。俺らがいるから」と自論付けた。
「あの、僕もしかしてその人形のお世話をするんですか……?」
恐る恐る訪ねて見ると当たり前だという反応が返ってきた。
「と言うよりも、この家にいる人形たちの子守の手伝いをして欲しいんだ」
「に、人形たち?」
「あぁ。言うのが遅くなったが菊山家は代々、日本人形御守っていう役職の家系なんだ」
聞いたことのない職業名だ。名前通り日本人形の子守をすれば良いってことなのかな。煮え切らない反応を零すと、更なる情報が入る。
「簡単に言えば人形供養の一種だな。一般的な供養だとお焚き上げとか寺に預けたりすることが多いんだけれど、俺たちは違う。その名の通り、人形の子守をして供養をするんだ。御守って堅苦しいから、周りから『日本人形子守係』って呼ばれてる」
「その、事情は分かったんですけれど……。どうして子守係の手伝いを? 逆に呪われちゃうんじゃ……」
人形を何度も捨てたことのある人間なんてそれこそ罰当たりな気もする。恨みを買って気付いたら祟られてたりして……。
嫌な想像が頭の中を巡るが、「そんなことはねーよ」と一蹴された。
「大丈夫だって。暖が誠心誠意を込めて愛情を注げば、こいつらが浄化してくれるから。お前の穢れも何とかなる」
「ほ、本当?」
信永くんの言葉を上手く信じれそうになかった。しかし、今の状況ではこの案しか呪いを解く方法はない。僕はもう神頼みしかなかった。
僕は半信半疑で肯首する。
信永くんは僕の反応に目付きが柔らかくなる。
「大丈夫だ。もし、何かあっても俺らがいるから」
その時、僕の中にできた大きな疑問が消化されようとしていた。
「信永くんがあまり学校に来ないのってもしかして……」僕は彼に確かめるように問いかけた。
信永くんはやや気まずそうに視線を逸らすも、首元を手で触りながら話し始めた。
「……まぁ、こいつらの面倒を見てるので忙しいって言うのがある」
「嘘付け、ただ学校に行きたくないってだけだろ?」
「うるっせーな」
大和さんの茶化し文句に信永くんは図星を突かれたようで、そっぽ向く。僕は背中を向けてしまった彼を見つめる。
何故だか分からないが、この人といると不思議と安心するのだ。最初は物凄く嫌な印象だったが、嫌悪感がすうっと消えていた。
……もしかして、勘違いしてたのかも。
僕は密かにそう結論付けた。しかし、その数秒後に彼はくるりと向いてあの怖い目つきを晒した。
「兎に角、今日から呪いが解けるまでここに居候して貰うからな」
「居候!? 何で!」
「それくらい今のお前は危機的状況なんだよ。全く、呪い殺されてないだけ幸運だと思え。ちなみに拒否権はないからな」
「そ、そんなぁぁ……」
やっぱり前言撤回。
一度でも希望を持った僕が馬鹿だった。信永くんって本当に怖い!!
感情の起伏の激しさに辟易してしまい、僕は肩を落とすしかなかった。
これは、そんな呪われた僕と菊山家の日本人形にまつわる怖い物語である。
「……捨てても帰ってくる日本人形か」
全て話終えると、信永くんが神妙な顔付きになる。
「もしかして、メリーさん的な?」大和さんの例えに信永くんはスパッと切り捨てた。
「いや、それとは違うな。寧ろ、あれは律儀に自分の居場所を教えてくれる親切な奴だろ。こいつのは突拍子もなく現れる。遠くに捨てても、家に戻るとあの人形が置いてある。まるで、最初からそこに居たみたいに……」
「でも、人形……棗ちゃんをどうしても何とかしたくて。お寺に行って供養してもらおうとしたんです。だけど、そのお寺が全焼したり別のお寺では和尚さんが病にかかったりで、不幸な事ばかりが続いて」
「んで、お前が言っていた例の人形はどこにあるんだ?」
「ないんです」非常に言いにくいが口を開けざるをえなかった。
「は?」
案の定、拍子抜けた反応を受け僕は心底家に帰りたくなった。
「お、お父さんの転勤と高校先の影響でここに引っ越した後に捨てたんです。そしたら、家に帰ってこなくなったんです」
「帰ってこなくなった? 妙だな……普通なら引越し先にでも現れる筈だが」
「もう、解放されたってほっとしたんですけれど……。呪われてるだなんて……」
そこまで話した所で僕は顔を俯く。当時は棗ちゃんから離れたい一心だった。だから捨てるのにも必死で、できるだけ戻ってこられないように隣の市のごみ捨て場まで一人で向かったりもした。
しかし、どれも効果はなく不気味さが増すだけだった。
今思えば罰当たりだったのも知っている。今更呪われていると指摘されてもしょうがない。
「それにしてもお前、人形に名前なんか付けたのかよ」
信永くんにそれが恰も駄目みたいな言い方をされる。僕はムキになって「だって!」と声を荒げた。
「だって、あの時は本当に可愛くてずっと一緒に居たかったから……」
「馬鹿じゃねーの。いいか、名前って言うのはその人そのものを表す呪いみたいなものなんだよ。それを、人形とかに付けたら解きたくても解くことは難しいっつーの。特に、名付け親がお前ならな」
主張激しめに指さされる。そこまで全否定されると、ショックが込み上げてきた。今日の今日まで初対面だった人に対して、並々ならぬ嫌悪感を抱いた。
「お兄ちゃん?」僕の表情を察知した敦さんが兄を睨みつける。
兄弟揃って美形であるためか、敦さんの目付きも背筋がゾワゾワする。信永くんは終始しまったと口を噤んだ。そして、彼は僕の目を何度もチラ見しながら慎重な言葉遣いへと変わった。
「た、確かに、幼い時は愛着が湧くものには名前を付けて一緒に遊んだりする癖がある。お、俺も昔、ぬいぐるみに名前を付けて一緒に居たからな」
「え?! そうなの?」
不愉快な感情が一気に吹き飛んだ。信永くんの顔を見ると、頬が僅かに赤くなっていた。僕から視線を逸らし、「あ、あぁ」とたどたどしい返事が返ってくる。
「だから、別にその……。気にするなって言うのは嘘だけど……」
「お兄ちゃん、あなたに言い過ぎたって思っているみたい。だから、あまり気を落とさないでください」
「はぁ!? ちげーし、敦お前出鱈目なこと言うんじゃねーよ」
敦さんの付け足し言葉に信永くんは大袈裟に反応した。敦さんはしてやってりと余裕の笑みだ。
こんな美人でかっこいい人も、ぬいぐるみを大切にするんだなぁ。男性だから、ぬいぐるみを持つだなんて気持ち悪いと言われるかと思った。
もしかして信永くんって本当は優しい人なのかな。そんな淡い期待が心の中で生まれたと同時に、ある疑問も抱える。
じゃあ、なんで信永くんは学校に来ないんだろう。こんなに綺麗な人ならきっとクラスで人気者な筈なのになぁ。
何だか勿体ない。
しかし、信永くんの次の言葉でそんな考えも一気に吹き飛んだ。
「結論から言うがその呪いは簡単には解けない」
「えぇ?! そんな……」
薄々気付いていたが、何より信永くんの目付きが怖い。
「だからこそ、まずはその人形の穢れを取るために供養しないといけないんだ。今のお前は、その人形の穢れで充満してるんだよ」
穢れ……?
じゃあ、臭うっていわれたのもそれが原因ってこと?
「でもどうやって治すの?」
「お前、名前はなんて言うんだっけ」
「音羽暖です……」
さっきも言った筈なんだけれど、僕の名前は覚えにくいのかな。余計なことは言わずに、おずおずと告げる。
「暖。そうか。そう言えばさっき、俺らに何でもするから許してって言ったよな?」
「え?! で、でもさっきのは仕方なく」
「言ったよな?」
「は、はい」
威圧的な眼差しに半ば強制に首を何度も振った。その反応に、大和さんや敦さんが顔を綻ばせたのだ。
一体何をさせられるんだろう。あの時何でもするだなんて言わなきゃよかった。過去のことを後悔しても遅く、彼らの中では既に話が膨らんでいた。
大和さんは胡坐をかいて、うんうんと頷く。
「丁度、人も欲しかったんだよなー。子守係」
「全く、大和さんがあんなに依頼を持ち出すから大変になっちゃうんですよ。お陰で家計簿を支える良い糧にはなってますけれど」
「こ、子守係?」二人の言葉に唖然とする。
まさか、育児の手伝いをするの!?
どうしよう、家事ならできそうだけれど赤ちゃんのあやし方なんて分からないよ。
「馬鹿、本物の赤ん坊の面倒を見るわけじゃねーから」
「そうなの?」
「敦、ちょっと誰か連れてきてくれないか?」
「うん。ちょっと待ってて」
敦さんはそう言うと一度居間を抜け出す。何を連れてくるんだろう、僕は彼が戻ってくるであろう扉を凝視していた。
間もなくして、廊下を歩く音が大きくなる。
敦さんが「お待たせしました」と現れる。彼の腕には確かに誰かが抱かれていた。
「うわぁ!!」
僕はその正体を知り、思わず逃げ腰になった。
敦さんが抱えていたのは紛れもない日本人形だった。
おかっぱ頭に青い着物、死んだような目と目が合う。僕は瞬時に棗ちゃんを想起させた。
「あれ、そんなに怖がらなくても……。可愛いのに」敦さんは眉を下げて呟く。そして、人形を大事そうに頭をなで始める。
僕はこの時点ですぐに嫌な予感が働いた。
「敦、音羽くんは人形関連でトラウマを抱えてるんだ。ましてや日本人形なら尚更だろ?」
「でもこの仕事を任せて大丈夫なの?」
敦さんの不安そうな表情に信永くんは「大丈夫だろ。俺らがいるから」と自論付けた。
「あの、僕もしかしてその人形のお世話をするんですか……?」
恐る恐る訪ねて見ると当たり前だという反応が返ってきた。
「と言うよりも、この家にいる人形たちの子守の手伝いをして欲しいんだ」
「に、人形たち?」
「あぁ。言うのが遅くなったが菊山家は代々、日本人形御守っていう役職の家系なんだ」
聞いたことのない職業名だ。名前通り日本人形の子守をすれば良いってことなのかな。煮え切らない反応を零すと、更なる情報が入る。
「簡単に言えば人形供養の一種だな。一般的な供養だとお焚き上げとか寺に預けたりすることが多いんだけれど、俺たちは違う。その名の通り、人形の子守をして供養をするんだ。御守って堅苦しいから、周りから『日本人形子守係』って呼ばれてる」
「その、事情は分かったんですけれど……。どうして子守係の手伝いを? 逆に呪われちゃうんじゃ……」
人形を何度も捨てたことのある人間なんてそれこそ罰当たりな気もする。恨みを買って気付いたら祟られてたりして……。
嫌な想像が頭の中を巡るが、「そんなことはねーよ」と一蹴された。
「大丈夫だって。暖が誠心誠意を込めて愛情を注げば、こいつらが浄化してくれるから。お前の穢れも何とかなる」
「ほ、本当?」
信永くんの言葉を上手く信じれそうになかった。しかし、今の状況ではこの案しか呪いを解く方法はない。僕はもう神頼みしかなかった。
僕は半信半疑で肯首する。
信永くんは僕の反応に目付きが柔らかくなる。
「大丈夫だ。もし、何かあっても俺らがいるから」
その時、僕の中にできた大きな疑問が消化されようとしていた。
「信永くんがあまり学校に来ないのってもしかして……」僕は彼に確かめるように問いかけた。
信永くんはやや気まずそうに視線を逸らすも、首元を手で触りながら話し始めた。
「……まぁ、こいつらの面倒を見てるので忙しいって言うのがある」
「嘘付け、ただ学校に行きたくないってだけだろ?」
「うるっせーな」
大和さんの茶化し文句に信永くんは図星を突かれたようで、そっぽ向く。僕は背中を向けてしまった彼を見つめる。
何故だか分からないが、この人といると不思議と安心するのだ。最初は物凄く嫌な印象だったが、嫌悪感がすうっと消えていた。
……もしかして、勘違いしてたのかも。
僕は密かにそう結論付けた。しかし、その数秒後に彼はくるりと向いてあの怖い目つきを晒した。
「兎に角、今日から呪いが解けるまでここに居候して貰うからな」
「居候!? 何で!」
「それくらい今のお前は危機的状況なんだよ。全く、呪い殺されてないだけ幸運だと思え。ちなみに拒否権はないからな」
「そ、そんなぁぁ……」
やっぱり前言撤回。
一度でも希望を持った僕が馬鹿だった。信永くんって本当に怖い!!
感情の起伏の激しさに辟易してしまい、僕は肩を落とすしかなかった。
これは、そんな呪われた僕と菊山家の日本人形にまつわる怖い物語である。

