菊山家の日本人形子守係



 全てが落ち着いたのは、椿坂家の火事から数週間経った頃。

 僕らはことの件により、医師からの診察を受けながら警察の事情聴取にも取り合った。

 そんな中、警察から一つの髪飾りを受け取る。それは、棗ちゃんが以前付けていたもので、唯一燃えなかった物だったらしい。

 そっか。棗ちゃんは、最初から寂しかったんだね。

 椿坂さんは焼死だそうだ。あんなに焼けてしまってはもう手遅れかと思ったが、あの出来事が昨日の様に鮮明に残る。

 そして、僕自身でも変わった事があった。
 ビオラちゃんたちの声もピタリと聞こえなくなった。つまり、()()()()()なんだろうか。
 
 そして、それも全て終え、無事に元の日常へと戻ろうとした。
 学校の支度を終え、家を出ようとすると、信永くんが外で待っていた。

「おせーよ。待ちくたびれたんだけれど」
「おはよう、信永くん」
「ん? 何だその紙袋」
「見てみて、ビオラちゃんのための新しい簪だよ。綺麗でしょ?」
「へー、お前にしてはいい趣味してんじゃん」
「お前にしてはって、それ褒めてるの?」

 軽く笑いながら言えば、信永くんも釣られて笑う。僕は今も、菊山家の日本人形子守係として活動している、
 彼らに寄り添う様に、僕の心の中には棗ちゃんの存在がいつもいる。きっと、彼女を忘れる事は一生ないだろう、

 そして今日も、これからも頑張って生きていこう。そう、心の中で誓った。