菊山家の日本人形子守係

 ◇
 
 居間へと向かうと、信永くんの喋り声と新しい声が耳に流れてくる。
 僕の姿に気付いた信永くんが手招きをした。

「お、暖。来たか」

「ごめんね、用意の時間に遅くなっちゃった」
 
「それくらい気にしてねーよ。いいから隣に座れ」

「分かった」
 
 彼の隣に正座になると、卓袱台の向こう側にいる男性と目が合う。ベレー帽を被ったお洒落な人だ。

「へぇ、君が信永の言ってた……」ベレー帽の男性は物珍しそうに見つめる。
 
 敦さんがお茶菓子を持って現れ、彼のことを指し示した。

「紹介するね。この人は正宗(まさむね)くん。僕たちの従弟で今は美容師の専門学校に通ってるんだ」

「信永から聞いてたけれど、君が新人子守係の音羽暖くんで合ってる? 自分は、千歳(ちさい) 正宗(まさむね)です。よろしくねー」

 そう言って千歳さんは気さくに手を振る。

「従弟?」

「そう、お父さんの弟の息子さんなの。偶にうちに来てもらってるんだ」
 
 信永くんはどうやら千歳さんを呼ぶために電話をしていたみたいだ。
 と言うことは、この人も霊感があるのかな。

 どうやら僕の勘は当たっていたみたいで、顔をずいっと近づけられる。

「ふうん、やっぱり少しオーラが違うね。菊山家に入った瞬間変な空気が漂っていたからびっくりしたよ。ところで、大和さんはどうしたの?」

「大和なら今地下室にいる。俺も後で向かうが、まぁそう時間はかからないだろ」

 信永くんは廊下の方を見やる。

「そっか。相変わらず子守係の仕事は大変そうだねぇ」

 他人事のように呟く彼は、そう言って僕とビオラちゃんに目を向けた。

「ビオラちゃんも久しぶりだねぇ。元気だったかな?」

「名前覚えてるんですか?」

「当たり前でしょー? 一応自分の()()()()()ですし」

()()?」 

 思わず疑問形で呟くと、千歳さんは鞄の中から大きなケースを取り出す。中にはハサミと櫛などが入っている。

「自分、美容師目指しているからその練習として、ビオラちゃん含めたお人形さんたちの髪を定期的に散髪してるんだ」

「そうなんですか?!」
 
「そうだよー。呪いの影響で髪が柳みたいに伸びちゃう子もいるから、その時は緊急で来てるよ。普段は毛先を整えたりが多いんだけれど」

 千歳さんはビオラちゃんにじっと顔を近付ける。「ふむ」と何かを考えたかと思えば、静かに頷いた。

「どうやらビオラちゃんは特に大丈夫みたいだね。髪型も可愛いし、このままで良い感じかな?」

「あぁ、俺らが見て欲しいのはシャクナゲなんだ」

「おや、シャクナゲちゃんか」

 僕は未だ菊山家にいる日本人形たちの全員の名前を覚えていないが、千歳さんはそんな事ないみたいだ。敦くんは一つ結びで結われた茶髪の日本人形を連れてくる。
 白桃のような淡い着物が物凄く綺麗だ。

――シャクナゲ……。

 ビオラちゃんが悲しそうにそう零す。僕は彼女をギュッと抱きしめた。

――ビオラ、アタクシのことは心配しないで大丈夫よ。

 シャクナゲちゃんは平然とした様子だが、どこか疲れた声色だ。呪いの影響が彼女をここまで蝕んでいた。

「今の所、症状は悪化してない?」

「あぁ。大和が対処してると思うから、少しは大丈夫だ」

「まぁ、大和さんなら安心だけれど油断は禁物。その内、抱え切れないくらいの膨大な呪いが押し寄せてくるかもしれないから、信永たちも対策は取るんだよ」

「分かってる」

 菊山家は先祖代々からこの仕事を継いできた訳であり、呪いに対する耐性は強い。だからこそ僕の呪いにもいち早く気付いた信永は、誰よりも警戒している。
 いつか、信永くんたちが酷い目に遭わないと良いんだけれど。

「じゃあ、とびっきり可愛くしていこう。今日の着物は白とピンクだし、珍しく派手にしちゃう? ツインテールはどうかな」

 千歳さんは終始ウキウキ状態でシャクナゲちゃんを見つめていた…

「そんなこと俺に聞くな」

「親御さんの許可も必要でしょう? 了承を得ないでやるのはマナー違反だよ」

「はぁ。マジでめんどくせー。何でも似合うんだから良いだろ」

「信永、何でも良いは禁句なんだよー? まさか、夜ご飯の時とかも「何でも良い」って答えてるの?」

「ずべこべ言わずにさっさとやれ!」投げやり気味に言う彼に、千歳さんは微笑みを残す。

 信永くんも敦くんも人形のことが心配らしく、千歳さんの手付きをずっと眺めている。
 かく言う僕も、雑草のように生えてしまった髪が徐々に艶とまとまり感を見せる変化に夢中になっていた。

 流石専門学校に通っているだけあって、動きに一切の無駄がない。ぼうっとしていると、突然「ねぇ、暖くん」と声をかけられた。

「は、はい」思わず肩が跳ねる。

「君はどうして、この子守係の仕事を?」

「えっと実は……」

 僕は、これまでにあった出来事を千歳さんに告げる。棗ちゃんこと、呪いを解く為に子守係の仕事をしていること。
 千歳さんは「へぇ」や「そうなんだ」と時折反応を示し、同時に作業も進める。話し終えると、千歳さんは一つほっと息を漏らした。
 
「良かったー。このままじゃ、信永は一生友達できない奴になる所だったし」

「お前はいちいちうるせーな」

「そう言えば小椿鷹山くんって子いたよね? その人はどうなの?」

「あいつはただの腐れ縁だよ。偶然、通う学校が一緒だっただけ」

「ま、それもそうだろうね。小椿家は椿坂の分家だし」

「椿坂さんのこと、知ってるんですか?」僕の問いに、今度は彼も驚く。

「暖くん、椿坂さんのこと知ってるの?」

「えっと……」

 しどろもどろになっていると信永くんがすかさず輪に入る。

「暖の持ってた人形が、椿坂で作られた可能性があるんだ」

「あー成る程ね。それにしても、椿坂かぁ……。正直、自分もあの人は苦手なんだよねー。何考えているか分からないし」

 それについては同感だったようで、信永たちは揃って頷く。確かに穏やかな雰囲気と手先が器用なイメージだが、顔が読めないとは思えなかった。
 僕の様子が気になったのか、どこかつまらなそうに信永ば突いてくる。

「そんなにあいつのこと知りたいのかよ」

「えっと、そういう訳じゃなくて……」

「いいか? お前は呪われているんだから、いいから大人しくしてろよ。相手は人形師だから何されるか分からないぞ」

「でも、本当に良い人だったよ。態々お礼を言いに来てくれたし、マスコットも貰ったし。確かに事情は分かったけれど……」

 やっぱりどうしても「優しい人」という印象が拭い切れない。そんな事を言ってしまえば信永くんに何を言われるか分からず、黙っておく。

「マスコット? 椿坂、そんなの渡したんだ」
 
「このマスコットなんですけれど……」

 僕はポケットからクマのマスコットを取り出す。千歳さんはハサミと櫛を置き、興味津々に凝視する。

「ちょっと見てもいい?」

「どうぞ……」

「やっぱり椿坂の実力は本物だね。これを手作りだって言い切れるのが凄いよ。……ん?」

 途端に不審な顔になる彼に、僕の顔も強張る。信永くんたちも気になった様で距離を縮める。

「どうした?」

「ねぇ、よく見たら篝縫いがされている場所が所々少しほつれてるみたい……」

「ほつれてるだぁ?」信永くんは明らかに不機嫌な声を零す。

「あいつがそんなヘマするか? こんなの作って間もないだろ」

「うん。それにしても裁縫だなんて懐かしいね。まぁ、うっかりっていうこともあるだろうし。……あれ? これ……」

 再び何かを発見した千歳さんが、縫い目に注目する。すると道具箱からピンセットを取り出す。

「何か入ってるみたい。綿かな? ちょっと、中をこじ開けてもいい?」

「ど、どうぞ……」

 千歳さんはすっかりマスコットに夢中になっていた。僕は別に気に入ってる訳でもなく、受け入れる。
 何なら信永くんたちが警戒しているため、首を横に振れば良くない反応をされるに違いない。

 千歳さんは「ありがとう」と言うと、再びマスコットに視線を戻す。何やらマスコットから、黒く細い糸が伸びて出てくる。
 それは、随分と長く引き抜かれた後も更に新しい糸が出てくる。
 しかし、糸というには弾性があり線が細い。

「何でしょう、これ」敦さんは不安気に見つめる。

 ピンセットで糸を挟んだまま、千歳さんがこんな事を呟いた。

「……ねぇこれさ、人の髪の毛じゃない?」

 客間一辺に静寂が襲う。彼の予想外な答えと、何故か腑に落ちてしまうズレた感覚があまりにも気持ち悪い。敦さんも口元を歪ませて、「ま、まさかそんな……」と否定する。
 信永くんに至っては黙り込んでいた。

「暖くん」

「な、何ですか?」

「このマスコットを解体してもいいかな? 代わりにお詫びとして、暖くんの好きな物買ってあげるから」

「ぜ、全然大丈夫です! 寧ろ、お好きに……」

 正直言ってそのマスコットに恐怖心しか残っていない。人の髪が入ってると確証付けた訳じゃないが、どうも胸騒ぎがする。
 そんな微妙な空気を他所に、千歳さんの目は瞳孔を開かせどんどん()を引き抜く。

 そして、何十束の()が抜かれる度に、マスコットは力が抜けた様に萎びる。どうやらこれらが綿詰めの役割を持っていた様だ。
 千歳さんはその糸とシャクナゲちゃんの髪を眺める。

「うん。間違いない、人の髪だ」

「ひっ」僕はとうとう引いた声しか出なくなる。

「しかも随分と綺麗で長いし、恐らく女性の髪の毛っぽいなぁ……」

「そんなこと冷静に分析しなくていいですから!」

 敦さんはテーブルに置かれた髪の毛の束に肩を震わせる。千歳さんの好奇心の目は止まらず、ピンセットで髪の毛一本を挟んだ。

「こ、これ、本当に人の髪の毛なの……?」

 今まで持っていたマスコットに実は人の髪の毛が紛れていた事実が忘れられない。怖気付き、思わず逃げ腰になると、信永くんに腕を掴まれる。

「暖、大丈夫だから。落ち着けって」

「こ、怖い……」

「嫌なら俺の後ろに隠れていいから」

 そう言って、信永くんは僕からマスコットを遠ざける。同時に守る様に背中を向ける彼にドギマギしてしまった。
 信永くんはそのマスコットから何かを感じ取ったようで、睨み付けている。

 千歳さんはそれでも髪の毛を離さなかった。それどころか、僕に確かめさせようと見せてくる。

「暖くん。これで分かった? 椿坂は()()()()()なんだよ」

 あたかも最初から分かっていたみたいな発言。千歳さんは、僕が椿坂さんと関わった時点で何かを察していたらしい。
 貰ったマスコットの中身がどうしても気になるという好奇心さに呆気に取られていた。そして、千歳さんは次に目を疑うような事を言い始める。

「多分だけど、暖くんのその呪いはここに居る人形とちょっと近い感じかもね」

「え? それはどういう……」

「暖くんの持っていたお人形さんは、椿坂家で製作されたってこと」

「やっぱり……」信永くんは言葉を落とす。

 千歳さんはまだ何か気になる事があるようで、更に告げる。

「暖くん、もしかしてだけれどこの子達のことで何か感じてるよね? 例えば、声とか……」

「どうしてそれを!」

「君、やけにビオラちゃんやシャクナゲちゃんを見つめているから何かあるのかなぁって。後は、何も会話をしてないのに自然と頷く仕草を見せてたから」

「気が付かなかった?」首を傾げた彼に対して、食い気味に頷く。人に指摘されるくらい無意識に出ていただなんて。

 信永くんたちはビオラちゃんの声がわからないみたいで、なるべく彼等のいないところで話を続けていた。もし見られてしまえば不審感を抱かれること間違いなしだったから。

 しかし、その思いとは真逆で信永くんの静かな問いかけが耳に流れる。

「暖、それは本当か?」

「……うん。今まで黙っていてごめんなさい」

 敦くんも初耳だったようで僕をずっと凝視していた。霊感ゼロで干渉の可能性もない僕でも、不可思議な体験をするのだと未だ信じ切れてないのだろう。
 頭を下げると信永くんの唸る声が聞こえる。

「……まぁ、それについては後で話す。それよりも今は、椿坂についてだ」

「暖くんの呪いが椿坂の仕業であると分かった以上、呪いの根源であるそのお人形を見つける、或いは元凶の椿坂を問い詰める……。この二つが暖くんの呪いを解く方法として良いと思う」

 椿坂さんに直談判しに行くのは正直言って怖い。まだ出会って間もない人に話しかけに行くのは勇気がいる。
 これは臆病な僕だからこそ言える事で、本当は僕が行かないといけないのかもしれない。

 信永くんはまどろっこしいのは嫌いだから、迷わず聞きに行きそうだが……。

 しかし、信永くんが出した答えは耳を疑うようなものだった。
 
「取り敢えず、暖が持っていた人形を探すしか方法はない。レシートとか契約書みたいなのは当の昔に捨てただろうし……」

「つ、椿坂さんに直接話に行かないの……?」

 恐る恐る尋ねると「は?」と返される。僕は未だにその真顔と反応が怖く、肩を縮こませる。
 信永くんはすぐに視線を逸らして、

「椿坂に直接言ったところであいつは絶対惚ける。と言うより、そのお惚けが通常だから何言っても掴めないだろ」

「それに……」まだ何かあるようで、言葉を徐々に濁していく。僕は気になって耳を傾けた。

「お前が怖がるかもしれないだろ。俺は目付きも口も悪りぃし」

「信永くん……。ありがとう」

「別に。お礼を言われるような事は言ってねーだろ」

 ぶっきらぼうな口調とは裏腹に、彼の耳朶がほんのり赤く染まっていた。胡座をかきながらそっぽ向かれ、それでも僕の心の中にじんわりと温かさが広がる。

 その様子を千歳さんはぷはっと吹き出し、居間中に乾いた笑い声を響かせた。信永くんの顔は途端に沸騰したみたいに赤くなり、

「テメー笑ってんじゃねーよ!」と咎める。
  
「いやぁ、人付き合いが苦手な信永がそんな事言うだなんて、明日は槍でも降ってくるのかなって」

 千歳さんの目には一雫が溜まっている。それを拭いながら、彼は堪らず声を上げた。信永くんは肩をワナワナ震わせ、今にも手を出しそうな状態。
 
 けれどもこれ以上何を言っても無駄だと悟ったのか、信永は溜息を付いた後不貞腐れて彼とは目を合わせようとしなくなった。

「信永ごめんってば。ただ、成長したなぁって思っただけだよ。褒めてるんだから」

「テメーの言葉になんの嬉しさも感じねーよ」

「はいはい分かってるから。なら、ちゃんと最後まで彼のことを守るんだよ?」

「言われなくてもそうするつもりだから」
 
 信永くんの答えに千歳さんは眉根を下げ、仕方なさそうに笑みを浮かべた。

「暖くん所でなんだけれど、そのお人形についてはご両親は何とも言ってなかったの?」
 
 彼の質問に、僕はこれまでの事情を自然と話すことになる。それについては信永くんも思う事があったようで、「お前の親父は本当に何も言ってなかったのか?」と訝しげになっていた。

「……うん。ただ、人形のことは捨てろって言ってたから……」

 流石のお父さんも気味悪がって人形の近くには来ないようにしていた。棗ちゃんがくる前の事は、遠い昔の記憶であまり覚えていない。
 お父さんとお母さんの関係は円満だったのかな。僕の誕生日を祝う時までは、物凄く優しかったから関係に亀裂が入ってる事はなかった筈……。

「まぁ、確実なのはその棗ちゃん人形は椿坂の所にはいない事。でも、例え棗ちゃんを見つけたとしてもいつも通りの子守じゃ耐え切れないかもよ」

「千歳さん、それはどう言う事ですか?」

 ()()()()()()という単語が引っかかり、何故か嫌な予感がした。

「呪いの原因である()()なら確実に危害を加える。仮に見つけて保護したとしても、暖くんたちが()()()も無事に生きられるとは考えられないんだ」

「じゃあ……」信永くんの暗く沈んだ声が耳に残る。彼は何かを察したのか、千歳さんも「うん」と頷いていた。

「うん、すぐにお焚き上げをした方が良いと自分は思うよ」

「お、お焚き上げ?!」

 そんな、と声が溢れる反面、心のどこかで腑に落ちる感覚もあった。多分棗ちゃんと再会した所で、今までのようにはなれない。
 それに、最初に拒絶したのは僕の方だ。棗ちゃんを怖いと思って、この手で捨てたのも僕。

 そんな虫のいい話がある訳がない。
 例え呪いのせいだとしても、僕は棗ちゃんと一緒にいる資格も自信もないのだ。
 
「暖くん、大丈夫? 少し顔色が……」敦さんが僕の顔を覗く。

 彼の大きな瞳は心配そうに見つめていた。それを見た千歳さんが真剣な眼差しに変わる。

「もしかしたら、暖くんも呪いの影響を受けているかもしれない……」

「いえ、大丈夫です。ただ、ちょっと頭の整理をしたくて……。棗ちゃんを捨てた自分に責任があるのは充分に理解してるんですが、どうしても……」
 
「そんな話をされたら誰だって、人形を捨てちゃう自信があるもん。そもそも呪いの人形だなんて、幼い頃なら怖がっちゃうし」

「………」

「だからそんなに思い悩む事はないよ」

 彼らの慰めの言葉が鼓動を速くする。気を引き締めていないと、何もかもが溢れ出そうで下唇を噛み締めた。

 本当は、こんな事を言って欲しかったのかもしれない。今まで隠して来た事が、こんな形で打ち解ける日々が来るなんて思いもよらなかった。
 親身になってくれる人たちの存在が何度も胸に突き刺さる。

 僕、ここに来てよかった。

 そうこうしている内に、シャクナゲちゃんの散髪が終わる。千歳さんは慣れた手抜きで彼女の髪を結おうとしていた。

「ずっと前からシャクナゲちゃんに、ロールツインテールやらせてたかったんだよねー。ちょっとだけアイロンかけてもいい?」

「おう、いいぞ」

「どうもね」

 彼のご機嫌な反応と共に、カバンの中からコテを取り出す。念入りに櫛でとかした後、彼は整った髪をアイロンに通した。

「シャクナゲちゃん熱くないかな?」

――えぇ、全然よ。アナタはいつも丁寧でアタクシも安心よ。

「これからもっと可愛くするからねー」

――期待しているわ。

 千歳さんの一方的な言葉に、シャクナゲちゃんの鼻歌を口ずさむよな返事が返ってくる。僕には会話が成り立っているように聞こえるが、千歳さんはどう聞こえてるんだろう。

――シャクナゲ、凄く嬉しそう。

 ビオラちゃんもどうやらそう見えるみたいだ。
 僕は静かにその場面を眺めていた。