ずっと、いっしょ。

夜。
ワンルームの明かりは、暖色でやわらかい。
レポートを終えたキョウが、ソファに倒れ込む。

「もう無理」
「まだ十一時だよ」

キッチンからタツキの声。
カップを二つ持って戻ってくる。
ココアの甘い匂い。
隣に座る距離が、近い。
大学生になってから、触れることが増えた。
肩が触れる。
膝が触れる。
自然に。
わざとじゃないふりで。


「ありがと」

カップを受け取るとき、指先が触れる。
そのまま、離れない。
キョウが顔を上げる。
目が合う。
タツキは笑っている。
柔らかい、穏やかな笑顔。
昔よりもずっと、安定した表情。
キョウの胸が、少しだけ高鳴る。

「なに」

照れ隠しの声。

「疲れてる顔してる」

そう言って、タツキが指先でキョウの頬に触れる。
親指が、ほんの少しだけ撫でる。
優しい。
逃げ場を作る触れ方。
キョウは一瞬迷ってから、距離を詰める。
深くじゃない。
確かめるみたいに。
唇が、触れる。
ほんの一秒。
体温だけを交換するみたいな、軽い接触。
離れる。
どちらからともなく、少しだけ笑う。

「……急に?」

タツキが言う。
声は落ち着いている。
でも、目がわずかに細くなる。
満足そうに。


「別に」

キョウは視線を逸らす。
心臓がうるさい。
ただのキス。
軽いもの。
それなのに、胸が温かい。
ちゃんと、好きだと思う。
タツキが、今度は自分から近づく。
額に、そっと口づける。

「おやすみ、キョウ」

その声は、優しい。
包むみたいに。
キョウは目を閉じる。
安心する。
この温度。
この距離。
この生活。
ずっと一緒。
——選んだ未来。
目を開けると、タツキがまだこちらを見ている。
視線が絡む。
深い。
ほんの少しだけ、深すぎる。
でも。
キョウはもう、目を逸らさない。
「おやすみ」
今度はちゃんと、微笑む。
灯りを消す。
暗闇。
隣の呼吸。
一定で、静かで、安定している。
キョウは眠りに落ちる。
その頬に、もう一度だけ、触れる唇。
暗闇の中で、タツキは目を閉じない。
しばらく、キョウを見ている。
柔らかく。
愛おしそうに。
まるで。
やっと手に入れた宝物を見るみたいに。


「ずっと、いっしょだ、、、、、キョウ。くく」