ずっと、いっしょ。

 帰宅して、シャワーを浴びて、ベッドに倒れ込む。
 今日一日の熱がまだ体に残っている。
 楽しかったな、と思う。
 三人でゲーセン。
 笑って、騒いで、それだけだ。
 スマホが震える。
 宮野から写真が送られてきた。

 《盛れすぎだろw》

 プリクラの画像。
 三人がぎゅっと並んでいる。
 俺が真ん中で、左に宮野、右にタツキ。
 画面越しに見ると、昼より少し落ち着いて見える。
 笑っている自分の顔が、少し照れくさい。
 拡大する。
 なんとなく。
 背景を。
 白い。
 ……いや。
 ただの光の加工だ。
 最近のプリクラはやたらと明るい。
 指でピンチアウトする。
 画面の端。
 タツキの肩の後ろあたり。
 ほんの一瞬、昼に見た“縦線(違和感)”みたいなものを探す。
 でも、何もない。
 滑らかな壁。
 落書き風のスタンプ。

 「……気のせいか」

 小さく呟く。
 自分でも馬鹿らしいと思う。
 写真は三人だ。
 ちゃんと三人。
 それ以上でも、それ以下でもない。
 アルバムフォルダを開く。
 昔の写真が並ぶ。
 小学校の運動会。
 中学の文化祭。
 誕生日。
 ほとんどに、タツキがいる。
 隣に。
 自然に。
 俺はスクロールを止めた。
 小学校低学年の写真。
 田んぼの前で撮ったものだ。
 あれは、いつだったか。
 泥だらけになって、祖母に怒られた日。
 画質は荒い。
 俺とタツキが並んで立っている。
 笑っている。
 二人。
 ……二人?
 画面を凝視する。
 構図が、少し不自然だ。
 右側に、妙な空間がある。
 人ひとり分、空いているみたいに。

 「……」

 息が浅くなる。
 当時の記憶を辿る。
 あの日。
 俺は。
 ――三人だった。
 そんな気がする。
 でも、写真は二人だ。
 撮ったのは祖母だろうか。
 それとも。
 スクロールを戻す。
 別の年の写真。
 やっぱり、俺とタツキ。
 二人。
 友達と撮った写真はある。
 でも、“あの頃のいつも”は二人だ。
 それが普通のはずなのに。
 どうしてか、胸がざわつく。
 スマホを伏せる。
 天井を見上げる。
 部屋は静かだ。
 エアコンの音だけが低く響いている。
 三人。
 その言葉が、まだ消えない。
 俺と、タツキと。
 あと一人。
 名前が出てこない。
 顔も思い出せない。
 でも。
 思い出せないこと自体が、変だ。
 スマホがまた震える。

 《今日楽しかったな》

 タツキから。
 短いメッセージ。
 少しだけ、安心する。

 《な》

 それだけ返す。
 すぐに既読がつく。

 《また行こ》

 返信が早い。
 いつも早い。
 画面の向こうに、今も起きている気配がする。
 俺はさっきの写真をもう一度開いた。
 三人。
 何度見ても三人。
 なのに、どうしてだろう。
 真ん中に立つ自分の笑顔が、ほんの少しだけ窮屈に見える。
 まるで。
 誰かの場所を、借りているみたいに。
 慌てて画面を閉じる。
 馬鹿らしい。
 考えすぎだ。
 ベッドに横になる。
 目を閉じると、暗闇の中に一瞬だけ白い線が浮かんだ。
 すぐに消える。
 風は、吹いていない。