ずっと、いっしょ。

朝の光が窓から差し込み、キョウは布団の中で目を覚ました。
夢の残像がまだ頬を冷やす。
田んぼの夢、クネクネ、そして消えたタツオミ――あの恐怖が、まるで昨日のことのように鮮明だった。
手帳は机の上に置かれている。
昨夜、震える手でページをめくり、祖母の言葉を読み返した記憶が蘇る。
息を整え、キョウはゆっくりと手帳を開いた。

『必要なものは揃ったか?
道具、場所、順序。確かめること』

文字は冷たく、しかし導く光のようでもあった。
手帳に従えば儀式は成功する――そんな希望と、同時に失敗への恐怖が胸を締め付ける。

「……やるしかないんだよな……」

キョウはつぶやき、制服に着替える。
学校への道すがら、普段の景色がどこか違って見えた。
友達の笑い声、教室の匂い、廊下の窓から差す光
――すべてが、手帳で知った過去の影を映すように感じられ、胸がざわつく。
放課後、キョウは祖母の手帳を肩に抱え、必要な道具の確認を始めた。
紙片に書かれた材料のリストを、一つ一つ思い出す。道具箱の奥から、古いロウソクや小瓶を取り出し、手帳の指示通りに並べる。
手が震え、汗がにじむ。だが、振り返れば夢の中の田んぼの恐怖がさらに胸を締めつける。

「……これで、いいのか……?」

不安に囚われながらも、キョウはページの指示に従う。
手帳は迷わず正しい順序を示す。
道具を整え、置き場所を確かめ、儀式の場所として手帳に記された小屋の位置を頭に入れる。
日常の風景の中で、キョウの目は少しずつ「儀式のための世界」を探しているようだった。
家に戻ると、夕暮れが差し込む。
手帳を抱え、キョウは机に向かい、最後の確認をする。
紙に描かれた図形、注記、文字――すべてが過去と未来をつなぐ手がかりだ。
恐怖は消えない。胸の奥で、クネクネの影、消えたタツオミ、そして双子の弟タツキの存在が渦巻く。
それでも、キョウは手帳に従う。

『決して急ぐな。焦れば道を誤る』

その言葉を胸に、手帳の指示に沿って儀式への準備を進めるキョウ。
日常の中で、誰も知らない不安と恐怖を抱えながらも、儀式という非日常へ、少しずつ足を踏み入れていく。
外の風が、彼の心を揺らす。
だが、手帳と祖母の意志は確かに彼を導いていた。

「……行くんだ、俺は……」

手帳を握る手に力を込め、キョウは決意と恐怖を抱えつつ、儀式の世界への第一歩を踏み出した。