ずっと、いっしょ。

手帳を抱きしめると、キョウの手が震えた。
夜の部屋は静まり返り、唯一の音は紙をめくる音だけだった。
だがその音すら、不安を増幅させるかのように耳に刺さる。

「……俺、本当にやれるのかな……」

指で文字をなぞる。
祖母の筆跡は小さく揺れ、かすかに生きているかのようだった。
ページの端に添えられた書き込みが目に入る。

『決して焦るな。儀式は急かす者を罰する。
真実は一つ、守る意志を曲げるな』

文字は冷たくも確かで、しかしその威圧感にキョウの胸は高鳴り、不安が増す。
夢の中の田んぼ、クネクネ、消えたタツオミ――その光景が頭に浮かび、思わず体が縮こまった。

「……でも、もし俺が間違えたら……?」

手帳を握る手がぎゅっと強くなる。
祖母の文字が、過去の儀式の失敗や警告をすべて書き残していることを、キョウは知っていた。
だが同時に、恐怖が重くのしかかる。
ページをめくるたび、祖母が自分を見守る視線を感じるような錯覚に陥る。

「……ばあちゃん……あの時、助けてくれなかったのは……どうしてなんだ?……」

問いかける声は小さく、震えていた。
すると、文字が小さく揺れ、紙面に言葉が浮かんだ。

『あの日、あなたを守るために私は動けなかった。
タツオミは想像以上に強く、狡猾だった。
しかし、知ることは力。恐れるな、慎め』

キョウは目を伏せる。
恐れるな――その言葉は理解できるが、心の底の不安は消えない。
手帳は導きだが、それに従えば従うほど、危険は近づくのだ。

『必要なものはすべて書き留めてある。
道具、場所、順序。すべてはあなたの手の中に。
だが、決して一人では動くな』

ページを押さえ、キョウは息を吐く。
恐怖は消えない。手帳は確かに助けてくれるかもしれない。
しかし、過去の恐ろしい記憶が頭をよぎるたび、心臓が早鐘のように打つ。

「……やらなきゃ……でも、怖い……」

震える手で手帳を抱きしめる。
祖母の意志を感じつつも、キョウの心はまだ揺れている。
恐怖と期待、迷いと覚悟――すべてが入り混じり、夜の静寂に波紋のように広がる。
手帳の文字がかすかな光を放ち、まるでキョウを呼んでいるかのように揺れた。
その光に導かれ、キョウは深く息を吸い込み、かすかな決意を胸に秘めた。

「……俺、やる……やらなきゃ……」

不安は完全には消えない。
だが、手帳の導きと祖母の意志を胸に、キョウは儀式に向けて一歩を踏み出すことを覚悟した。