ずっと、いっしょ。

キョウが目を覚ました。
夢の断片も、手帳の中身も、祖母の名前も、儀式の全貌も——あいつはすべてを思い出してしまったのだ。
タツオミは心底嫌悪した。目の前で、あいつが理解の糸をつむぎながら、手帳を握りしめる姿を見る。
こんなにも順調に、思った通りに計画が進まないことが、こんなにも苦しいとは。
本物のタツキまで、あの守護者の顔でそこにいる。
自分の存在を露わにできないくせに、無邪気そうに、いや無力そうに、そこにいるだけで邪魔だ。

「くそ……どうしてあの時、祖母(ババァ)の存在を消しておかなかったんだ」

後悔が胸を刺す。あの手帳も、あの遺品も、すべてキョウの手に渡った。
自分がもっと早く介入していれば、あいつはここまで思い出すことはなかった。
だが、そんな小さな後悔も、胸の奥では熱を帯びてくる。
焦燥と興奮が入り混じる奇妙な感覚——儀式は、計画通りにいかないほうが面白いのだ。
やがて、タツオミは自分の存在を思い出した。
あの田んぼの夢——あの恐怖——自分が潜伏し、タツキに寄生したあの瞬間。
あれがすべての鍵であり、儀式の核心である。
キョウが思い出した今、すべては表舞台に引き上げられる
自分の影は、隠れたまま、だが確実に影響を与える。


「本物のタツキ…か…お前、ほんと邪魔だな」

舌打ちが小さく漏れた。タツキは守護者で、儀式の中心でもある。
だが、自分の存在が潜むことで、タツキの価値は揺らぐ。
あいつが守ろうとするキョウを、自分が監視し、誘導していることに、タツオミは密かな優越感を覚える。
そして何より、儀式の核心は自分が握っている。
キョウが知ったところで、すべてをコントロールできるのはまだ自分だ。
恐怖、混乱、疑念——それらを計算通りにかき混ぜることで、儀式は完成に近づく。
タツオミは目を細め、静かに笑った。

「ふ……いいぞ、キョウ。すべて思い出したなら、これからが本番だ」

後悔と期待が入り混じる胸の中で、タツオミは自分の存在を確かめる。
影として、潜伏してきた日々の価値を、今こそ示す瞬間。キョウの恐怖を味わい、
タツキの焦燥を引き出す——そのすべてを、儀式という舞台で楽しむ。
そして何より、祖母の遺した手帳の存在も、自分の思惑を助ける道具になる。
あの手帳がなければ、キョウはまだ夢の中で迷っていただろう。しかし今は違う。すべてのピースが揃った。
タツオミは視界の端で、キョウが手帳を握る姿を見つめた。

「くく……よし、次は儀式の始まりだ。お前たちの恐怖、全部味わわせてもらう」

焦燥と期待が混ざる胸の奥で、タツオミは自分の存在と、これから起こる混乱を、心底楽しみにしていた。
もう、後戻りはできない。すべては儀式のために、確実に動き始めているのだ。