ずっと、いっしょ。

目を覚ますと、夏の光がカーテンの隙間から差し込んでいた。
頭は重く、夢の余韻で胸がざわついている。
手元を見ると、いつの間にか布団の中で両手をぎゅっと握りしめていた。
――田んぼ。くねくね(アレ)。タツオミ。
夢の中で起きた出来事が、まだ肌の奥で微かに疼いている。
息を整え、キョウはふと机の上に置かれた、祖母の手帳に目を向けた。
小さな革表紙に金色の文字で「記録」とだけ書かれた手帳。
これまでただの遺品として埃をかぶっていたものだ。
指先が震えながら表紙をめくる。
紙の感触は懐かしく、そして冷たく硬い。
書き込まれた文字は祖母の筆跡で、整然としているが、どこか異様な緊張感をはらんでいた。

「儀式…の続き…?」
ページをめくると、そこには祭りや呪いの話ではなく、明確な“手順”が記されていた。
日付、道具の配置、参加者の役割、そして最後に“守護者の選別”――
キョウの胸がざわつく。
夢の中でタツオミが、自分とタツキを守るためにくねくねに吸収されたこと――それは、手帳に書かれた儀式の意味と重なっていた。
ページの片隅に、小さな図が描かれている。
二つの丸が重なり、その中心に小さな点。説明文にはこうある。

「中心に守護者を置き、外側の影を制御すること。
失敗すれば守護者は吸収され、影は宿主に潜む」

胸の奥がひりつく。
田んぼの夢で体験した恐怖
――タツオミが双子の弟タツキに潜伏したこと――
それはまさに、この文章の通りだった。

「……全部、繋がってる……」

ページをめくるたび、断片だった記憶が線で結ばれていく。
過去に三人で遊んだこと、くねくねの存在、タツオミの自己犠牲――手帳はすべてを整理し、儀式の全貌を静かに教えてくれた。
しかし同時に、重い事実も伝わってくる。
守護者の役目は選ばれた者しか果たせない。
タツオミはもういない。
残るは自分とタツキ――そして、儀式を正しく終えるかどうかは、今の自分たちにかかっている。
キョウは手帳を胸に抱き、窓の外の光を見つめる。
目の前には現実のタツキがいる。その肩には、夢の中で宿ったタツオミの意思の痕跡が微かに残っているように見える。

「……やらなきゃ。俺たちで、終わらせるんだ」

恐怖と決意が交錯する胸の奥で、キョウの心は静かに固まった。
手帳の文字が、過去と夢と現実を結びつけ、今、彼に次の行動を指し示している。
――儀式は、もう避けられない。