夜の静けさの中、キョウは祖母の手帳を膝に乗せたまま、ゆっくりとページをめくっていた。
紙は少し波打ち、指先にざらりとした感触を残す。
文字は隙間なく書き込まれ、ところどころに小さな図や見慣れない印が添えられている。
最初は、意味のない記号の羅列にしか見えなかった。
けれど読み進めるうちに、見覚えのある地名や、知っているはずの人の名前が浮かび上がってくる。
――あの日の夜の庭。
風がざわめき、草の匂いが鼻先をくすぐった。
湿った土の感触。
遠くで揺れた木々の影。
記憶の断片が、手帳の文字とぴたりと重なる。
ページの端に書かれた日付。
祖母特有の丸みのある筆跡。
そして、淡い色鉛筆で囲われた文字。
「儀式」
それは強調するように、静かにそこにあった。
この手帳は、ただの記録じゃない。
祖母が“何か”を残そうとした証だ。
「儀式……?」
小さくつぶやき、キョウはその文字を指でなぞる。
読み進めるうちに、ある名前が繰り返し現れることに気づく。
タツキ。
儀式には、特定の人物の存在が不可欠だと書かれている。
余白には、「導く者」「選ばれし者」という言葉。
役割が、示されている。
誰が何を担うのか。
曖昧だが、確かに線が引かれている。
ふいに、昨日の夢が蘇る。
暗い廊下。
揺れる影。
耳元で囁くような声。
「タツキ……」
その名を口にした瞬間、胸の奥に鋭い感覚が走った。
手帳の文字と、夢の記憶が、一本の糸で結ばれる。
タツキは、ただの名前じゃない。
自分のすぐそばにいた存在。
確かに触れたことのある、温かな手。
気づけば隣にあった気配。
あれは、夢の産物なんかじゃない。
キョウは息を呑み、さらにページをめくる。
儀式の手順らしき箇条書き。
必要な道具の断片的な記述。
地名のような言葉。
すべてが不完全だ、少しずつ全体の輪郭が浮かび上がってくる。
そこには、はっきりと書かれていた。
タツキと、自分が深く関わること。
「……俺と、タツキ……」
声に出した途端、胸が強く締めつけられる。
儀式の目的は、まだわからない。
何を終わらせるのか。何を始めるのか。
けれど、避けられないことだけは伝わってくる。
二人が、無関係ではいられないということ。
キョウはそっと手帳を閉じ、部屋の暗がりに目を向けた。
街灯の光がカーテン越しに揺れる。
風が布をふわりと持ち上げるたび、誰かに見られているような気がした。
夢の中のタツキ。
現実のタツキ。
影のように揺らいだタツキ。
その存在が、少しずつ輪郭を取り戻していく。
この手帳は、ただの古い紙の束じゃない。
過去と今を結び、
そして未来へ続く道を示す鍵だ。
キョウは深く息を吸い込む。
怖くないわけじゃない。
わからないことだらけだ。
それでも、、、、
「……やらなきゃ、わからない……」
小さく呟く。
まだ全貌は見えない。
けれど確実に、このページはキョウを次の一歩へと押し出している。
儀式の闇と光が交わる、その入り口へと。
紙は少し波打ち、指先にざらりとした感触を残す。
文字は隙間なく書き込まれ、ところどころに小さな図や見慣れない印が添えられている。
最初は、意味のない記号の羅列にしか見えなかった。
けれど読み進めるうちに、見覚えのある地名や、知っているはずの人の名前が浮かび上がってくる。
――あの日の夜の庭。
風がざわめき、草の匂いが鼻先をくすぐった。
湿った土の感触。
遠くで揺れた木々の影。
記憶の断片が、手帳の文字とぴたりと重なる。
ページの端に書かれた日付。
祖母特有の丸みのある筆跡。
そして、淡い色鉛筆で囲われた文字。
「儀式」
それは強調するように、静かにそこにあった。
この手帳は、ただの記録じゃない。
祖母が“何か”を残そうとした証だ。
「儀式……?」
小さくつぶやき、キョウはその文字を指でなぞる。
読み進めるうちに、ある名前が繰り返し現れることに気づく。
タツキ。
儀式には、特定の人物の存在が不可欠だと書かれている。
余白には、「導く者」「選ばれし者」という言葉。
役割が、示されている。
誰が何を担うのか。
曖昧だが、確かに線が引かれている。
ふいに、昨日の夢が蘇る。
暗い廊下。
揺れる影。
耳元で囁くような声。
「タツキ……」
その名を口にした瞬間、胸の奥に鋭い感覚が走った。
手帳の文字と、夢の記憶が、一本の糸で結ばれる。
タツキは、ただの名前じゃない。
自分のすぐそばにいた存在。
確かに触れたことのある、温かな手。
気づけば隣にあった気配。
あれは、夢の産物なんかじゃない。
キョウは息を呑み、さらにページをめくる。
儀式の手順らしき箇条書き。
必要な道具の断片的な記述。
地名のような言葉。
すべてが不完全だ、少しずつ全体の輪郭が浮かび上がってくる。
そこには、はっきりと書かれていた。
タツキと、自分が深く関わること。
「……俺と、タツキ……」
声に出した途端、胸が強く締めつけられる。
儀式の目的は、まだわからない。
何を終わらせるのか。何を始めるのか。
けれど、避けられないことだけは伝わってくる。
二人が、無関係ではいられないということ。
キョウはそっと手帳を閉じ、部屋の暗がりに目を向けた。
街灯の光がカーテン越しに揺れる。
風が布をふわりと持ち上げるたび、誰かに見られているような気がした。
夢の中のタツキ。
現実のタツキ。
影のように揺らいだタツキ。
その存在が、少しずつ輪郭を取り戻していく。
この手帳は、ただの古い紙の束じゃない。
過去と今を結び、
そして未来へ続く道を示す鍵だ。
キョウは深く息を吸い込む。
怖くないわけじゃない。
わからないことだらけだ。
それでも、、、、
「……やらなきゃ、わからない……」
小さく呟く。
まだ全貌は見えない。
けれど確実に、このページはキョウを次の一歩へと押し出している。
儀式の闇と光が交わる、その入り口へと。
