ずっと、いっしょ。

見られた。
完全に。
骨の音も。
肉が戻るところも。
隠せたはずだった。
もっと、うまくやれた。
焦ったのは俺だ。
飛び出したあいつを見た瞬間、計算が飛んだ。
守ることを、優先した。
選ばせる前に。

「……らしくない」

低く呟く。
窓に映る自分の姿は、完璧だ。
傷ひとつない。
呼吸も脈も、ちゃんと人間だ。
でも、奥がざわついている。
見られた。
あの目。
恐怖と、混乱と。
——でも。
ほんの少しの、躊躇。
逃げる直前。
あれは何だ。
嫌悪だけじゃない。
まだ、迷っている。
それが救い。
それで十分だ。
奥で、何かが蠢く。
弱い。
薄い。
それでも消えない。

「……うるさい」

内側から、押してくる感覚。
夢で喋った。
田んぼに行かせた。
余計なことを。

「俺じゃない、だと?」

笑う。
乾いた音。
どこまで善人ぶるつもりだ。
消えかけのくせに。
キョウに選ばせる?
違う。
選ばせたのは俺だ。
あいつは、俺を選んだ。
怖くても。
異形でも。
守った瞬間、確かに揺れた。
あの揺れは、俺のものだ。
白いものが、足元で静かに波打つ。
抑える。
暴れるな。
まだ表に出るな。
計画は崩れていない。
むしろ、早まっただけだ。
夢は閉じた。
内側の声は、もう届かない。
あとは現実だけ。
ゆっくりでいい。
恐怖は、時間をかけて馴染む。
守られた記憶は、強い。

「お前なんか……嫌いなんだよ」

ぽつりと漏れる。
奥に向けて。
「お前のその目」
まっすぐで。
疑わなくて。
キョウを尊重して。
自分を後回しにして。
それが。
気に入らない。
キョウは俺の隣にいる。
今も。
現実で。
触れられる距離に。
それが事実だ。
窓の外、夜は静かだ。
風はない。
影が、ひとつにまとまる。

「もう黙ってろ」

内側が、わずかに軋む。
でも。
弱い。
消える寸前の光だ。
やがて静まる。
深く、息を吐く。
明日も、隣にいる。
離れさせない。
今度は、もっと自然に。
もっと優しく。
もっと深く。
キョウが、自分から手を伸ばすように。