眠りたくなかった。
でも、意識は沈む。
抗えない。
暗い。
水の底。
前より、ずっと深い。
冷たい。
重い。
「……タツキ」
呼ぶ。
返事はない。
白い揺れが、遠くで漂っている。
でも静かだ。
攻撃してこない。
ただ、見ている。
その奥。
かすかな光。
近づく。
足が沈む。
動きが遅い。
やっと見つける。
タツキ。
膝をついている。
輪郭が、崩れている。
肩はほとんど白い。
顔だけが、まだ残っている。
「……遅い」
冗談みたいに言う。
でも声は薄い。
「消えるなよ」
キョウが掴もうとする。
手が、すり抜ける。
触れられない。
前より、もっと。
「ごめん」
タツキが言う。
それは謝罪じゃない。
諦めに近い。
「俺、あんまり強くなかった」
苦く笑う。
昔と同じ顔。
「でも」
顔を上げる。
まっすぐ、キョウを見る。
「お前は、まだ選べる」
胸が締めつけられる。
「助けるって」
言いかける。
タツキは首を振る。
ゆっくり。
「俺じゃない」
その言葉が、落ちる。
重く。
「思い出せ」
何度目かわからない。
でも、今度は意味が違う。
「全部」
白が、肩から首へと上がる。
時間がない。
「儀式は、終わってない」
「え?」
「失敗したのは——」
ノイズ。
白が口を覆う。
声が途切れる。
キョウが叫ぶ。
「待て!」
タツキの目だけが、残る。
「怖がるな」
優しい。
本当に。
優しい目。
「お前が、決めろ」
その瞬間。
光が消える。
水が崩れる。
白が、全面を覆う。
目が覚める。
朝。
涙が頬を濡らしている。
夢の内容が、崩れていく。
顔。
声。
ほとんど思い出せない。
ただ。
「思い出せ」
それだけが残る。
起き上がる。
鏡を見る。
自分の顔。
でも、少しだけ違う。
影が、わずかに遅れる。
一拍。
背後で、ドアがノックされる。
「キョウ?」
タツキの声。
いつもの。
穏やかな。
「起きてる?」
混乱が胸を満たす。
昨夜。
車。
守られた。
逃げた。
夢。
消えた。
助けろ。
全部が絡まる。
「……起きてる」
声が震える。
ドアが開く。
タツキが立っている。
怪我は、ない。
完璧に。
人間の顔。
でも。
キョウには、わかる。
もう夢では会えない。
助けは、来ない。
ここからは。
自分で。
タツキが微笑む。
「昨日、ごめんな」
心配そうな目。
本物みたいに。
「怖かったよな」
その言葉に、胸が揺れる。
守られた。
確かに。
でも。
あの回復。
あの影。
「……うん」
曖昧に答える。
タツキが近づく。
距離が、近い。
「俺がいる」
その言葉。
救いみたいで。
鎖みたいだ。
キョウは、はっきり理解する。
夢は、終わった。
あとは。
現実だけ。
でも、意識は沈む。
抗えない。
暗い。
水の底。
前より、ずっと深い。
冷たい。
重い。
「……タツキ」
呼ぶ。
返事はない。
白い揺れが、遠くで漂っている。
でも静かだ。
攻撃してこない。
ただ、見ている。
その奥。
かすかな光。
近づく。
足が沈む。
動きが遅い。
やっと見つける。
タツキ。
膝をついている。
輪郭が、崩れている。
肩はほとんど白い。
顔だけが、まだ残っている。
「……遅い」
冗談みたいに言う。
でも声は薄い。
「消えるなよ」
キョウが掴もうとする。
手が、すり抜ける。
触れられない。
前より、もっと。
「ごめん」
タツキが言う。
それは謝罪じゃない。
諦めに近い。
「俺、あんまり強くなかった」
苦く笑う。
昔と同じ顔。
「でも」
顔を上げる。
まっすぐ、キョウを見る。
「お前は、まだ選べる」
胸が締めつけられる。
「助けるって」
言いかける。
タツキは首を振る。
ゆっくり。
「俺じゃない」
その言葉が、落ちる。
重く。
「思い出せ」
何度目かわからない。
でも、今度は意味が違う。
「全部」
白が、肩から首へと上がる。
時間がない。
「儀式は、終わってない」
「え?」
「失敗したのは——」
ノイズ。
白が口を覆う。
声が途切れる。
キョウが叫ぶ。
「待て!」
タツキの目だけが、残る。
「怖がるな」
優しい。
本当に。
優しい目。
「お前が、決めろ」
その瞬間。
光が消える。
水が崩れる。
白が、全面を覆う。
目が覚める。
朝。
涙が頬を濡らしている。
夢の内容が、崩れていく。
顔。
声。
ほとんど思い出せない。
ただ。
「思い出せ」
それだけが残る。
起き上がる。
鏡を見る。
自分の顔。
でも、少しだけ違う。
影が、わずかに遅れる。
一拍。
背後で、ドアがノックされる。
「キョウ?」
タツキの声。
いつもの。
穏やかな。
「起きてる?」
混乱が胸を満たす。
昨夜。
車。
守られた。
逃げた。
夢。
消えた。
助けろ。
全部が絡まる。
「……起きてる」
声が震える。
ドアが開く。
タツキが立っている。
怪我は、ない。
完璧に。
人間の顔。
でも。
キョウには、わかる。
もう夢では会えない。
助けは、来ない。
ここからは。
自分で。
タツキが微笑む。
「昨日、ごめんな」
心配そうな目。
本物みたいに。
「怖かったよな」
その言葉に、胸が揺れる。
守られた。
確かに。
でも。
あの回復。
あの影。
「……うん」
曖昧に答える。
タツキが近づく。
距離が、近い。
「俺がいる」
その言葉。
救いみたいで。
鎖みたいだ。
キョウは、はっきり理解する。
夢は、終わった。
あとは。
現実だけ。
