ずっと、いっしょ。

朝。
目の下が重い。
夢の内容は、はっきり残っている。
田んぼ。
夕方。
一人で見つかるな。
忘れていない。忘れられていない。
制服に袖を通しながら、深呼吸する。
普通に,いつも通りに玄関を出る。
角を曲がると、タツキが立っている。
タイミングが良すぎる。

「おはよ」

柔らかい声
笑顔

「……おはよ」

喉が少しだけ硬い。
見抜かれるな
絶対見抜かれるな
並んで歩く。
距離はいつもと同じ。
でも今日は、その一歩分がやけに遠い。

「昨日、ちゃんと寝た?」

不意打ち。

「寝たよ」

即答。
自然に言えた、はず。
タツキは少しだけこちらを見る。
横目。
観察するみたいに。

「夢、見なかった?」

心臓が跳ねる。
でも顔は動かさない。

「最近よく見るのんだ、そういや」

軽く返して会話を逸らそうと試みる。
タツキは一瞬だけ黙る。
その沈黙が、長い。

「……ふーん」

微笑む。

「顔、疲れてるから大丈夫かなって」

優しい声。
でも。
試している。
探っている。
キョウは肩をすくめる。

「テスト近いし、勉強してるだけ」

嘘じゃない。
でも本当でもない
校門が見える
生徒のざわめき
日常の音
少しだけ呼吸が楽になる。
教室
席に座り窓の外を見る、遠くに田んぼが見えた。
昼間は、ただの風景だ、揺れていない。
それでも、、、
胸の奥がざわつく。
昼休み。
タツキが隣のクラスから来る。

「今日、帰りどうする?」

自然な問い。

「部活ないだろ」

ふと嘘をつく。

「ちょっと用事」

視線を逸らし、ペンを回す。
タツキの空気が、わずかに変わる。
ほんの一瞬。
温度が下がる。

「どこ?」

軽い調子。
でも目が笑っていない。

「駅のほう」

即興。
痛いほど鼓動が速い。
間が空く。
ほんの、半拍。
悟られぬように、息を整える。

「そっか」

笑う。
恐怖を覚える完璧な笑顔。

「気をつけてな」

その言葉に、なぜか寒気が走る。
授業中。
背中に視線を感じる。
同じ教室じゃないはずなのに。
振り向く。
誰もいない。
放課後。
昇降口。
今日は一緒に帰らない。
それだけで、空気が重い。

「じゃあな」

タツキが言う。

「うん」

すれ違う瞬間。
耳元で、囁き。

「田んぼ、行くなよ」

足が止まりそうになる。
でも、止めない。
振り向かない。

「なんで」

自然を装う。
タツキは首を傾げる。

「なんとなく」

笑う、その影が、ほんの一瞬だけ揺れる。
二重にみえた
キョウは背を向けたまま歩き出す。
鼓動がうるさい。
バレている。
完全じゃない
でも勘づいている。
夕方が近づく。
空が赤くなる。
選択の時間が、迫っている。