ずっと、いっしょ。

二階の窓。
薄いカーテン越しに、灯りが揺れている。
起きてる。
まだ。
こんな時間まで。
静かな住宅街。
足音は立てない。
慣れている。
昔から、この家の位置は知っている。
どの角度なら見えるかも。
カーテンの隙間。
机に伏せた影。
キョウ。
指が動く。
ペンを落とす。
顔を上げる。
その瞬間。
呼ぶ。
声には出さない。
でも、届く。

「キョウ」

ぴくりと反応する。
聞こえてる。
ちゃんと。
あっちも、まだいる。
奥で、手を伸ばしてる。
だから。
少しだけ、圧をかける。
行くな。
まだだ。
今は、出てくるな。
白い揺れが、足元で波立つ。
抑える。
ここで騒ぐな。
もう、隠れる必要はない。
でも。
焦る必要もない。
キョウは選んだ。
俺を。
自分で。
あとは、時間の問題。
灯りが消える。
布団に入る気配。
窓の向こう、影が横たわる。
安心した顔。
無防備。
ガラス越しに、そっと触れる。
触れられない。
でも、わかる。

「大丈夫」

小さく、今度は声に出す。
聞こえない音量で。
それでもいい。
届いているから。
背後で、微かな抵抗。
内側から。
まだ完全じゃない。
でも。
もう遅い。
窓に映る自分の影が、わずかに揺れる。
一瞬だけ、輪郭が二重になる。
すぐ戻る。
深く、息を吐く。

「もうすぐだよ」

キョウ。
夜は静かだ。
風は、吹いていない。
でも。
カーテンが、わずかに揺れた。