夜。
タツキの部屋。
カーテンは閉まっている。
月明かりが、隙間から細く差し込む。
キョウは目を覚ます。
理由はわからない。
ただ、胸がざわついている。
隣で、タツキが眠っている。
規則正しい呼吸。
穏やかな寝顔。
安心するはずなのに。
なぜか、目が離せない。
違和感。
どこが?
じっと見る。
まつ毛。
鼻筋。
唇。
いつもの顔。
なのに。
“静かすぎる”
瞬きもしない
当たり前だ。
寝ているのだから、でも。
呼吸の間隔が、妙に正確だ。
吸って、吐いて
吸って、吐いて
機械みたいに。
ピタリ、と
次の瞬間
止まる、呼吸が
キョウの心臓が跳ねる。
止まった
三秒
四秒
五秒
――ひゅ、と音を立てて吸い込む。
深く。
溺れた人みたいに。
そのとき。
タツキの目が、開いた。
真っ直ぐ、キョウを見ている。
瞬きもせず。
完全に覚醒した目。
でも。
焦点が、合っていない。
キョウを見ているようで、
その“奥”を見ている。
ぞくりとする。
「……タツキ?」
返事はない。
視線が、ゆっくり動く。
キョウの顔から、額へ。
そして。
その、少し後ろで止まる。
祖母の声が蘇る。
――後ろ、見るな。
喉が凍る。
タツキの口が、ゆっくり開く。
声が出る。
低い。
少しだけ、重なる響き。
「……まだ」
心臓が強く打つ。
「何が」
答えない。
代わりに、笑う。
寝たまま。
口角だけが、ゆっくり上がる。
目は笑っていない。
その瞳の奥。
白いものが、揺れた。
確かに見た。
細く、縦に。
瞳孔の奥で。
キョウは息を呑む。
その瞬間。
タツキのまぶたが、すっと閉じる。
呼吸が戻る。
規則正しい。
何事もなかったみたいに。
静か。
静かすぎる。
キョウは動けない。
今のは、夢か?
頬をつねる。
痛い。
現実だ。
タツキの手が、無意識に動く。
キョウの腕を掴む。
ぎゅ、と。
強い。
寝ているのに。
「……離れない」
かすれた声。
寝言。
でも。
はっきり聞こえた。
キョウの喉が鳴る。
怖い。
怖いはずなのに。
逃げたいはずなのに。
なぜか。
その手を、握り返してしまう。
「……離れないよ」
言ってしまう。
部屋は静かだ。
外は真っ暗、それでも。
カーテンが、わずかに揺れた。
風は、吹いていない。
タツキの部屋。
カーテンは閉まっている。
月明かりが、隙間から細く差し込む。
キョウは目を覚ます。
理由はわからない。
ただ、胸がざわついている。
隣で、タツキが眠っている。
規則正しい呼吸。
穏やかな寝顔。
安心するはずなのに。
なぜか、目が離せない。
違和感。
どこが?
じっと見る。
まつ毛。
鼻筋。
唇。
いつもの顔。
なのに。
“静かすぎる”
瞬きもしない
当たり前だ。
寝ているのだから、でも。
呼吸の間隔が、妙に正確だ。
吸って、吐いて
吸って、吐いて
機械みたいに。
ピタリ、と
次の瞬間
止まる、呼吸が
キョウの心臓が跳ねる。
止まった
三秒
四秒
五秒
――ひゅ、と音を立てて吸い込む。
深く。
溺れた人みたいに。
そのとき。
タツキの目が、開いた。
真っ直ぐ、キョウを見ている。
瞬きもせず。
完全に覚醒した目。
でも。
焦点が、合っていない。
キョウを見ているようで、
その“奥”を見ている。
ぞくりとする。
「……タツキ?」
返事はない。
視線が、ゆっくり動く。
キョウの顔から、額へ。
そして。
その、少し後ろで止まる。
祖母の声が蘇る。
――後ろ、見るな。
喉が凍る。
タツキの口が、ゆっくり開く。
声が出る。
低い。
少しだけ、重なる響き。
「……まだ」
心臓が強く打つ。
「何が」
答えない。
代わりに、笑う。
寝たまま。
口角だけが、ゆっくり上がる。
目は笑っていない。
その瞳の奥。
白いものが、揺れた。
確かに見た。
細く、縦に。
瞳孔の奥で。
キョウは息を呑む。
その瞬間。
タツキのまぶたが、すっと閉じる。
呼吸が戻る。
規則正しい。
何事もなかったみたいに。
静か。
静かすぎる。
キョウは動けない。
今のは、夢か?
頬をつねる。
痛い。
現実だ。
タツキの手が、無意識に動く。
キョウの腕を掴む。
ぎゅ、と。
強い。
寝ているのに。
「……離れない」
かすれた声。
寝言。
でも。
はっきり聞こえた。
キョウの喉が鳴る。
怖い。
怖いはずなのに。
逃げたいはずなのに。
なぜか。
その手を、握り返してしまう。
「……離れないよ」
言ってしまう。
部屋は静かだ。
外は真っ暗、それでも。
カーテンが、わずかに揺れた。
風は、吹いていない。
