宮?の名前は、もう誰も出さない。
キョウも出さない。
出せない、のほうが近い。
たまに喉まで上がる。
でも、形にならない。
放課後。
昇降口でタツキが待っている。
別クラスなのに、自然に合流する。
それが当たり前になる。
「今日、早く終わった」
「そっか」
短い会話。
心地いい沈黙。
以前よりも、言葉が減った。
でも、距離は近い。
帰り道。
田んぼは静かだ。
白いものは、今日は見えない。
代わりに、影が濃い。
二人分の影。
並んで伸びる。
ぴたりと重なる。
「最近さ」
タツキが言う。
「俺ら、落ち着いたよな」
「何が」
「余計なの、いなくなって」
足がわずかに止まりかける。
余計。
誰のことだ。
思考が滑る。
引っかからない。
「そうかも」
言ってしまう。
違和感が、薄い。
それが一番怖い。
タツキは満足そうに笑う。
「今くらいがいい」
風が吹く。
稲が揺れる。
その揺れの中に、白いものが一瞬混じる。
すぐ消える。
キョウは、もう目を凝らさない。
夜。
タツキの家。
夕飯を一緒に食べる。
テレビの音。
普通の食卓。
「泊まってけよ」
自然な流れ。
断る理由がない。
キョウは頷く。
風呂上がり。
タオルで髪を拭きながら、リビングに戻る。
タツキがソファに座っている。
視線がまっすぐ向けられる。
逃げ場のない距離。
「なあ」
低い声。
「お前、俺のこと信じてる?」
唐突だ。
でも、不思議と答えは決まっている。
「信じてる」
即答。
疑いは、浮かばない。
浮かびにくい。
タツキは、少しだけ目を細める。
安堵と、何か別の色。
「じゃあ、いい」
それ以上聞かない。
その夜。
布団に並んで横になる。
昔はよくこうしていた。
秘密基地みたいに。
でも今は、違う。
距離が、近すぎる。
呼吸が重なる。
「キョウ」
「ん」
「もしさ」
少し間。
「俺が変でも、離れない?」
胸がざわつく。
変?
何が。
でも。
言葉が出る。
「離れない」
それしか選べないみたいに。
タツキの指が、キョウの手に触れる。
絡める。
強い。
逃げられない強さ。
「よかった」
囁き
安心したのは、どっちだろう。
キョウは目を閉じる
白い揺れは見えない
代わりに、夢の縁がざわつく。
何かを忘れている
でも。
思い出さなくていい。
二人だけで、いい。
外では風がない。
それでも。
田んぼは、静かに揺れている。
キョウも出さない。
出せない、のほうが近い。
たまに喉まで上がる。
でも、形にならない。
放課後。
昇降口でタツキが待っている。
別クラスなのに、自然に合流する。
それが当たり前になる。
「今日、早く終わった」
「そっか」
短い会話。
心地いい沈黙。
以前よりも、言葉が減った。
でも、距離は近い。
帰り道。
田んぼは静かだ。
白いものは、今日は見えない。
代わりに、影が濃い。
二人分の影。
並んで伸びる。
ぴたりと重なる。
「最近さ」
タツキが言う。
「俺ら、落ち着いたよな」
「何が」
「余計なの、いなくなって」
足がわずかに止まりかける。
余計。
誰のことだ。
思考が滑る。
引っかからない。
「そうかも」
言ってしまう。
違和感が、薄い。
それが一番怖い。
タツキは満足そうに笑う。
「今くらいがいい」
風が吹く。
稲が揺れる。
その揺れの中に、白いものが一瞬混じる。
すぐ消える。
キョウは、もう目を凝らさない。
夜。
タツキの家。
夕飯を一緒に食べる。
テレビの音。
普通の食卓。
「泊まってけよ」
自然な流れ。
断る理由がない。
キョウは頷く。
風呂上がり。
タオルで髪を拭きながら、リビングに戻る。
タツキがソファに座っている。
視線がまっすぐ向けられる。
逃げ場のない距離。
「なあ」
低い声。
「お前、俺のこと信じてる?」
唐突だ。
でも、不思議と答えは決まっている。
「信じてる」
即答。
疑いは、浮かばない。
浮かびにくい。
タツキは、少しだけ目を細める。
安堵と、何か別の色。
「じゃあ、いい」
それ以上聞かない。
その夜。
布団に並んで横になる。
昔はよくこうしていた。
秘密基地みたいに。
でも今は、違う。
距離が、近すぎる。
呼吸が重なる。
「キョウ」
「ん」
「もしさ」
少し間。
「俺が変でも、離れない?」
胸がざわつく。
変?
何が。
でも。
言葉が出る。
「離れない」
それしか選べないみたいに。
タツキの指が、キョウの手に触れる。
絡める。
強い。
逃げられない強さ。
「よかった」
囁き
安心したのは、どっちだろう。
キョウは目を閉じる
白い揺れは見えない
代わりに、夢の縁がざわつく。
何かを忘れている
でも。
思い出さなくていい。
二人だけで、いい。
外では風がない。
それでも。
田んぼは、静かに揺れている。
