ずっと、いっしょ。

既読がつかない。
 田んぼ道を通ったな、とわかる。
 あの道はよくない。
 境界が薄い。
 昔から、よくない。
 キョウは覚えていない。
 覚えていなくていい。
 あそこは、揺れやすい。
 スマホを握る。

《ごめん》

 本心ではない。
 でも必要だ。
 繋いでおくために。
 しばらくして既読がつく。
 それだけで、少し安堵する。
 ――三人。
 祖母が言った。
 あれは余計だ。
 あの人は、勘が鈍っていない。
 記憶は曖昧でも、芯がずれていない。
 ああいうのが、一番厄介だ。
 消すほどではない。
 まだ。
 でも。
 遠ざけないといけない。
 キョウから。
 これ以上、余計なことを言わせないように。
 “見るな”を知っている人間は少ないほうがいい。
 あの人は昔から知っている。
 田んぼのことも。
 風のことも。
 だから、よくない。
 排除、という言葉が浮かぶ。
 自分でも少しだけ驚く。
 そんなつもりはない。
 ただ。
 静かにしていてほしいだけだ。
 入院でもいい。
 施設でもいい。
 キョウの生活圏から、外れてくれればいい。
 それだけだ。
 画面が暗くなる。
 映り込んだ顔を見る。
 ――この顔は、優しい。
 キョウが好きな顔だ。
 問題ない。
 まだ問題ない。
 あいつは、深く沈んでいる。
 出てこられない。
 でも。
 さっき、田んぼで揺れた。
 白いものが。
 あれは俺じゃない。
 あれは、残滓だ。
 完全には食いきれていない。

「……邪魔だ」

 小さく呟く。
 誰に向けた言葉か、自分でもわからない。
 キョウに見せるのは、俺だけでいい。
 二人でいい。
 三人はいらない。