初恋は永遠に

 ――俺は現代から再び過去に戻った。

 星空雪菜という初恋の相手の未来を変えるために。

 さらにあわよくば俺の想いを星空さんに受け取ってもらうためにも。

 それが彼女の運命を救う方法だと言っていたのは1度目のタイムリープをした中学の時に出会い、受験勉強を助けてくれた風岡美波だ。

 俺は風岡という大きな存在に何度も感謝をしながら過ごしていた。

 もちろんこの過去でも現代でも。

 俺にとって本当に大切な存在である風岡だが、いまこの時代ではお互いの関係に少し不穏な空気が漂っていて数日間、口を聞いてもらえず、連絡のやり取りも止まっている状況だった。

 
 「おい柿沢。今日はカレーパン買ってきたぜ」

 「いつもありがとうな」

 風岡や星空さんとお弁当を食べなくなってからと言うもの。
 前の席に居る大山がいつも購買までパンを買ってきてくれて一緒に食べる日が続いていた。

 「柿沢はもう風岡や星空さんとは一緒に食べないのか?ってか何があったか知らないけど変にこじれ続ける前に早く謝った方がいいぜ」

 大山なりに俺のことを心配してくれているようだった。

 「あぁ。俺も今日には決着をつけようって思ってる」

 星空さんの未来を変えると言う大きな目的を遂行するためにも、星空さんが心を開きかけている風岡と仲直りするのが今のおれの最優先事項だ。

 その為にも…。

 

 ――昼休み終了間際――

 「風岡あの…今日の放課後って時間空いてないかな?」


 俺は昼休みが終わる為に教室に星空さんと一緒に戻ってきた際に話し掛けた。

 「部活があるから遅くなるけど…」

 「うん。正門前で終わるの待ってる」


 そう言って風岡と放課後に話す約束を取り付けた。

 そのやり取りの際、席に戻る途中の星空さんから「頑張ってね」と鼓舞するような仕草をしてもらえた。

 頑張るよ…俺は。星空さんの為にも。


 「ねぇ、あなた。柿沼くんと言いましたっけ?」

 「いや、違うけど…柿沢だよ」

 そう風岡と話してすぐの俺に話し掛け、堂々とクラスメイトでもある俺の名前を間違えたのは。
 
 「氷堂さん何かよう?そう言えば今日学校に来れたんだね」

 「お兄――いや、兄がどうしてもって言うから…それより昨日のこと誰にも言ってないでしょうね?」

 「きのうって…」

 「とぼけないで。ショッピングモールでの私のことですよ。さっき風岡さんと話していたのってもしかして――」

 「そんなわけないって。全然べつの話だから」

 そう説明して氷堂さんの疑いの目を晴らした。

 「まぁあなたがそんな言いふらすようにも見えないですしひとまず様子を見ることにします。でも少しでも話そうとしたりしたら…」

 獲物を刈るような目で睨み付けてくる姿を見て俺は改めてショッピングモールでの様子が信じられなくなった。

 「分かってるから。誰にも言わないから」

 そう俺に約束させ氷堂さんは去っていった。

 星空さんが言っていた彼女の本当の姿とは兄のセンパイに対しての姿なのか…それともセンパイへの姿だけが特別なのか?

 今の俺にはそれよりもやらなければいけないことが沢山あってそれどころではなかった。

 
 ――そしてあっという間に美波と約束した放課後がやってきた。

 「お疲れ様」

 夕陽が沈みゆく放課後。

 美波が待ち合わせの約束を行った正門前にやってきた。

 「ありがとう。結構待ったんじゃない?部活もない柿沢からしたら放課後に居残るなんて暇だったでしょ」

 

 「図書室で勉強してたからあっという間だったよ」

暇ではない。勉強についていくのがやっとの俺にとっては余っている時間も勉強に費やさなくてはいけなかった。
 
 「へー柿沢も図書室で勉強とかするんだ」

 風岡と学校の帰り道に2人で会話をする。

 この感じは久しぶりだった。  
 
 「そりゃするよ。でも1人でやってたらなかなか効率悪いんだよね」

 「それって、最近私が勉強みてあげてないから?もしかして私の有り難みが分かってきたとか?」

 風岡が言ってるのとは少し違う。

 俺は……。


 「違うよ。俺はずっと風岡の存在が有難いって思ってる。
 流星学園に入学させてもらったのも風岡のお陰だし、勉強だけじゃなく色々な面でも支えてもらってる。過去でも…未来でも…」


 俺は恥ずかしさもありながらもストレートに風岡への想いを伝えた。

 「未来って。でも何かそんな真っ直ぐに感謝されてるの聞かされると照れるよね」

 「だからこれからも風岡とこうやって一緒に帰ったり、お弁当食べたり、勉強教えてもらったりしてもらいたい!」

 言ったよ。言ったよ。

 俺は言えた。 これが俺の風岡への全力の想いだ。

 「そっか……」

 暫く沈黙した風岡は間を置いて明るくこう言った。


 「結局勉強教えてほしいだけじゃん!まぁいいけど。今から久しぶりに夕食食べに来ない?私がみっちりと勉強を教えてあげる!弟たちが居るから集中出来るかは保証できないけど」

 そう笑顔で答える風岡を見て―いつもの風岡に戻った―と安心した俺だった。

 
 しかし、この時の俺は結局のところ、風岡がどうして口を聞いてくれなくなったのか、現代の風岡がなぜ警鐘を鳴らしていたのか、さらには風岡が心の奥にしまおうとしていた気持ちにも全く気付かないまま、友人として風岡との距離を縮めようとしていたのだった。