野次のように飛んでくる声に「うるせー」とだけ返す彼の、表情が変わる様がはっきりと見える。
ゆっくり踏み出した彼は僕の席の前を通り過ぎ、自分の席の方に歩みを進めた。自然と目で追ってしまって、なんとなく逸らす。
素行とかカンケイなく、遅刻した彼こそ、委員長に相応しいんじゃないかと密かにずっと思っていた。
「ね、びっくりしたね」
隣の席の彼女が小声でそう話しかけてくる。
明らかに自分に向けられていたから同意の意味で頷きながら苦笑した。
だって、担任がいる時に遅刻なんてしたら面倒臭いだろうから。
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とはいえ、どこから漏れてしまったのか。
『淺井! 悪いけど、今後ある研修のプリントを整理しておいてくれないか? あいつと一緒に』
いつの間にか戻ってきていた担任が申し訳なさそうにそう言ってきたのだ。
なぜ指名されているのか不思議に思って黙っていると、
『遅刻した罰かなー。これくらいはさせないとな』
うんうんと頷きながら告げられた。
遅刻の罰らしい。
というか罰と称されている仕事、きっと遅刻がなければ自分一人で任されていたのかと思うと若干カチンとくる。
今日の放課後、やるしかないのかとため息が出そう。いや、反吐が出そうだ。
授業が終わり各々帰る支度しているクラスメイトを横目に気が重く、立ち上がる気力も湧いてこない。特に予定なんてなかったけど、こんなイレギュラーをこなすために時間があったわけではない。
黙っていると怒りが顔に出そうで、切り替えるためにも立ち上がった。
「淺井くん、あの、また明日ねっ」
声をかけてくる隣の席のクラスメイトに同じように返して教室を後にする。
廊下に出ると帰宅に急ぐ生徒で溢れていた。
なるべくゆっくり歩いても職員室に向かってしまう真面目な足だけは褒めて欲しいくらいだ。気持ちは全くと言っていいほど前向きになれない。
なんとかついた職員室で待っていると、へらへらと笑いながら姿を現した担任。僕の怒りには微塵も気がついている様子はなく、むしろ諦めたほうがいいのかとわずかにため息を吐き出すことで折れる。
「じゃ、よろしくな!」

