うんめい手繰り寄せ




「ありがとう、淺井くんのおかげだよ〜」



大したことはしていないというのに。


褒め言葉として受け取り、苦笑しながら首を横に振った。
別にそこまで勉強が得意というわけでもないし、たまたま知っている箇所だったから答えられただけだ。



「僕は何もしてないよ」



本当に。
この学校に入学してから一番思っていることだった。


入学してから2年目、になる。


進級してから名指しで学級委員長にされてしまったけど、そこまで優秀ではないし。人望がある人間ではないと自負している。よく話す方でもなく、客観視してもリーダーシップが特別あるようには見えない。
できればやりたくなかった役割で、断ろうとしたのに流されるように落ちつけられた仕事にかなりの頻度でげんなりする。


委員長なんてテイのいい雑用なものだと、中学の頃に思い知った。
それが高校生になって再び実感することになるなんて。


自分からは本当に何もしてない。
なぜか位置付けられて、そこでぼんやりしているだけだ。



「さすが委員長だね」



そんな言葉を向けられるのもさすがに慣れてきた。
事あるごとにかけられる言葉に若干飽き飽きしている。



「…そうかな」



毎回苦笑で返すことしかできず、うまれたわずかな違和感を誤魔化すばかりだ。そんな大層な役割ができるやつじゃない、って。誰か言ってくれてもいいものを。


クラスの代表とか、みんなを引っ張る役割とか、前に立てるような人間性とか。
もっと最適なひとがいるはずだ。


そう、たとえばこのクラスだと───、


──ガラッ



「すいませーん、遅刻し…… って、アレ?」



いきなり大声を響かせた彼、とか。



「え、なに、自習?」



眉根を寄せて教室の入り口に立ち尽くす彼の登場に、一旦静まった教室が再び賑やかになる。



「遅すぎだろ!」

「何時に起きたんだよっ」