「わあ……綺麗」
その数分後、俺と矢島は小高い丘の上から夕陽を見ていた。
「ここなら、少し民家から離れていますし、そんなに人が来ることはありません」
「璃日人さん、こんな素敵な場所を知っていたんですね」
「一人で黄昏たい時は時々来てました」
矢島は夕陽を眺めながら、その時のことを思い出したのだろう。
少ししんみりした様子をしている。
俺はその空気を払拭したくて、声を出した。
「でも、これからは俺と一緒ですね。黄昏たい時も、嬉しい時も、いつでも一緒です」
矢島は俺の方を振り向いた。
僅かに驚いた顔をした後、ゆっくりと花開くように笑顔を浮かべていった。
俺は、この夕陽よりも、他のどんな綺麗なものよりも、この笑顔に敵うものはないと感じた。
流石に恥ずかしくて口には出せないけれど。
「璃日人さんは、何の仕事に決まったんですか?」
「前にもちょっと話しましたけど、学校の先生です」
「そうなんですか!どこの学校なんですか?」
尋ねると、なぜか矢島は悪巧みがあるような笑みを見せた後、人差し指を立てて唇に当てた。
「内緒です。いずれ分かりますよ」
「え、何ですかそれ。気になります!」
矢島は笑って誤魔化すばかりで、答える気はないようだった。
「楓さんの方は、やっぱりインフルエンサーに決めてるんですか?」
「……そうですね。俺、実は友達に相談されたんです」
「聞かせて下さい」
「その友達、いろいろあって、女性をそういう目で見れなくなって、その結果、男を恋愛対象にするようになったんですけど、好きな人に振られたらしいんです。男をそういう目で見ることはできないって」
「それは……まあ、人によってはそうですよね」
「はい。それで、その時に俺、的確なアドバイスが浮かばなくて、思わず璃日人さんに言われた言葉を使わせてもらったんです」
「俺の言葉、ですか」
「恋愛というのは、本人の意思で抑え込めるものじゃないんです。落ちてしまったら、もうそこから元には戻れない。璃日人さんはそう言ってましたよね」
「ああ……あの時の俺は、楓さんの宇宙への憧れを掻き消して、本当の俺を見てほしくて必死でしたからね。細かいことは覚えていないんですけど」
「でも俺、その通りだと思ったんです。だから、そのまま使わせてもらって、俺なりに少しアレンジを加えました」
「アレンジ、ですか」
「はい」
本人相手に言葉にするのは恥ずかしすぎるので、俺は話題を変えることにした。
「だから、俺はやっぱりインフルエンサーになろうと思いました。本当は、インフルエンサーにこだわらなくても、人の悩みを聞いて解決する仕事でもいいんですけど、やっぱりSNSは俺の居場所で、何より璃日人さんに出会えた場所なので、そこで生きることに決めています」
「楓さん、変わりましたね」
「璃日人さんのおかげです」
「いいえ、俺はあくまでもきっかけを与えたに過ぎません。人は結局、自分で変わろうとしなければ変われません。俺にも言えることですけどね」
二人で微笑み合い、再び夕陽を眺めた。
その時、俺のスマートフォンが震えて、メッセージの受信を伝える。
「母からです」
「お母様は、何と?」
「ご飯を作ったから、璃日人さんも一緒にどうかって言ってます」
「いいですね。行きますと返して下さい」
「分かりました」
返信を打ったところで、矢島が不思議そうに見ていることに気がついた。
「何ですか?」
「お母様は、最近は仕事から早く帰ることもあるんですか?」
「いいえ。そういえば、珍しいですね」
「俺、もしかしたら何か怒られるんでしょうか」
「まさか」
笑い飛ばしたが、確かに気になるところだ。これは早く家に帰ろうと、矢島とともに歩き始めた。
その数分後、俺と矢島は小高い丘の上から夕陽を見ていた。
「ここなら、少し民家から離れていますし、そんなに人が来ることはありません」
「璃日人さん、こんな素敵な場所を知っていたんですね」
「一人で黄昏たい時は時々来てました」
矢島は夕陽を眺めながら、その時のことを思い出したのだろう。
少ししんみりした様子をしている。
俺はその空気を払拭したくて、声を出した。
「でも、これからは俺と一緒ですね。黄昏たい時も、嬉しい時も、いつでも一緒です」
矢島は俺の方を振り向いた。
僅かに驚いた顔をした後、ゆっくりと花開くように笑顔を浮かべていった。
俺は、この夕陽よりも、他のどんな綺麗なものよりも、この笑顔に敵うものはないと感じた。
流石に恥ずかしくて口には出せないけれど。
「璃日人さんは、何の仕事に決まったんですか?」
「前にもちょっと話しましたけど、学校の先生です」
「そうなんですか!どこの学校なんですか?」
尋ねると、なぜか矢島は悪巧みがあるような笑みを見せた後、人差し指を立てて唇に当てた。
「内緒です。いずれ分かりますよ」
「え、何ですかそれ。気になります!」
矢島は笑って誤魔化すばかりで、答える気はないようだった。
「楓さんの方は、やっぱりインフルエンサーに決めてるんですか?」
「……そうですね。俺、実は友達に相談されたんです」
「聞かせて下さい」
「その友達、いろいろあって、女性をそういう目で見れなくなって、その結果、男を恋愛対象にするようになったんですけど、好きな人に振られたらしいんです。男をそういう目で見ることはできないって」
「それは……まあ、人によってはそうですよね」
「はい。それで、その時に俺、的確なアドバイスが浮かばなくて、思わず璃日人さんに言われた言葉を使わせてもらったんです」
「俺の言葉、ですか」
「恋愛というのは、本人の意思で抑え込めるものじゃないんです。落ちてしまったら、もうそこから元には戻れない。璃日人さんはそう言ってましたよね」
「ああ……あの時の俺は、楓さんの宇宙への憧れを掻き消して、本当の俺を見てほしくて必死でしたからね。細かいことは覚えていないんですけど」
「でも俺、その通りだと思ったんです。だから、そのまま使わせてもらって、俺なりに少しアレンジを加えました」
「アレンジ、ですか」
「はい」
本人相手に言葉にするのは恥ずかしすぎるので、俺は話題を変えることにした。
「だから、俺はやっぱりインフルエンサーになろうと思いました。本当は、インフルエンサーにこだわらなくても、人の悩みを聞いて解決する仕事でもいいんですけど、やっぱりSNSは俺の居場所で、何より璃日人さんに出会えた場所なので、そこで生きることに決めています」
「楓さん、変わりましたね」
「璃日人さんのおかげです」
「いいえ、俺はあくまでもきっかけを与えたに過ぎません。人は結局、自分で変わろうとしなければ変われません。俺にも言えることですけどね」
二人で微笑み合い、再び夕陽を眺めた。
その時、俺のスマートフォンが震えて、メッセージの受信を伝える。
「母からです」
「お母様は、何と?」
「ご飯を作ったから、璃日人さんも一緒にどうかって言ってます」
「いいですね。行きますと返して下さい」
「分かりました」
返信を打ったところで、矢島が不思議そうに見ていることに気がついた。
「何ですか?」
「お母様は、最近は仕事から早く帰ることもあるんですか?」
「いいえ。そういえば、珍しいですね」
「俺、もしかしたら何か怒られるんでしょうか」
「まさか」
笑い飛ばしたが、確かに気になるところだ。これは早く家に帰ろうと、矢島とともに歩き始めた。

