帰宅してまず驚いたのは、家に父の姿があったことだ。
「お父さん、仕事は?」
「残業時間が超えかけてたから、帰ってきた。まあ、勤務時間外にもちょっと資料をまとめたりするけどな」
「そっか」
父がいては、矢島と打ち合わせをする場所は変えた方がいいかもしれない。
矢島にメッセージを送ろうとすると、父がふいに言った。
「矢島君……だったか。彼とは、どういう関係なんだ」
「え?」
「いや、お前の交友関係に口出す権利はないな」
父はすぐに追及をやめてパソコンに視線を戻すが、俺は気になって近づいた。
なぜなら、父が見ていたのは仕事の資料ではなく。
「お父さん、それ。なんで」
「ああ、これか?」
動揺しながら父の答えを待とうとしたが、着信音が遮った。
「電話、出ないのか?」
しばらく鳴り響く電話を指摘され、半ばぼんやりしながら見ると、矢島からだった。
「お父さん、後でまた訊くから」
言い捨てて、自分の部屋に上がると、通話ボタンを押す。
「矢島さん、あの、父が……」
「鷺澤さんが作ったホームページを見ていた。そうでしょう」
「あの、どういうことですか?なんで……」
「俺が教えたんです。あの中に、ご両親について語っているメッセージがあるでしょう?あれを特に聞いてもらいたかったんです。他にも、鷺澤さんがどうして前を向こうと思ったのか、ご両親は知りたかったんじゃないかと思ったんです」
「父はともかく、母はそんなことありませんよ。俺のことなんて」
「本当にそうでしょうか。本当に無関心なら、鷺澤さんが不登校だろうと、退学しようと、全く気にしなかったと思うんです。俺を雇ったのだって……」
「そんなことはありません。あるはずはないんです。だって……」
目を閉じれば、いつも一人きりだった自分が浮かぶ。
今は学校に友達ができたけれど、それは矢島がきっかけをくれたからだ。
父も母も、俺に無関心だったから、ずっと俺に構わなかった。
学校に行かなくなっても、最初は気づきもしなかった。
「信じたくない気持ちは分かります。俺の親も、鷺澤さんとは種類が違いますが、親としてはあまりよくありませんでした。でもそんな時、鷺澤さんが言ってくれた言葉で気がついたんです。方向は間違っていたけれど、俺のためを思って言っていたって。親も人間です。間違うことはあります。誰だってきっと、親に対して理想像を思い描いていて、だからこそ、現実との違いに落胆するんです」
「矢島さん、俺……」
その時、自室の扉をノックする音が響いた。
「父が来たのかもしれません。一旦切ります。また後で」
通話を切ったところで、俺は扉を開きに行く。
人生でこれほど、扉が重いと感じたことはなかった。
「お父さん、仕事は?」
「残業時間が超えかけてたから、帰ってきた。まあ、勤務時間外にもちょっと資料をまとめたりするけどな」
「そっか」
父がいては、矢島と打ち合わせをする場所は変えた方がいいかもしれない。
矢島にメッセージを送ろうとすると、父がふいに言った。
「矢島君……だったか。彼とは、どういう関係なんだ」
「え?」
「いや、お前の交友関係に口出す権利はないな」
父はすぐに追及をやめてパソコンに視線を戻すが、俺は気になって近づいた。
なぜなら、父が見ていたのは仕事の資料ではなく。
「お父さん、それ。なんで」
「ああ、これか?」
動揺しながら父の答えを待とうとしたが、着信音が遮った。
「電話、出ないのか?」
しばらく鳴り響く電話を指摘され、半ばぼんやりしながら見ると、矢島からだった。
「お父さん、後でまた訊くから」
言い捨てて、自分の部屋に上がると、通話ボタンを押す。
「矢島さん、あの、父が……」
「鷺澤さんが作ったホームページを見ていた。そうでしょう」
「あの、どういうことですか?なんで……」
「俺が教えたんです。あの中に、ご両親について語っているメッセージがあるでしょう?あれを特に聞いてもらいたかったんです。他にも、鷺澤さんがどうして前を向こうと思ったのか、ご両親は知りたかったんじゃないかと思ったんです」
「父はともかく、母はそんなことありませんよ。俺のことなんて」
「本当にそうでしょうか。本当に無関心なら、鷺澤さんが不登校だろうと、退学しようと、全く気にしなかったと思うんです。俺を雇ったのだって……」
「そんなことはありません。あるはずはないんです。だって……」
目を閉じれば、いつも一人きりだった自分が浮かぶ。
今は学校に友達ができたけれど、それは矢島がきっかけをくれたからだ。
父も母も、俺に無関心だったから、ずっと俺に構わなかった。
学校に行かなくなっても、最初は気づきもしなかった。
「信じたくない気持ちは分かります。俺の親も、鷺澤さんとは種類が違いますが、親としてはあまりよくありませんでした。でもそんな時、鷺澤さんが言ってくれた言葉で気がついたんです。方向は間違っていたけれど、俺のためを思って言っていたって。親も人間です。間違うことはあります。誰だってきっと、親に対して理想像を思い描いていて、だからこそ、現実との違いに落胆するんです」
「矢島さん、俺……」
その時、自室の扉をノックする音が響いた。
「父が来たのかもしれません。一旦切ります。また後で」
通話を切ったところで、俺は扉を開きに行く。
人生でこれほど、扉が重いと感じたことはなかった。

