あなただけが教えてくれた

「鷺澤君、昨日の投稿見たよ。何を始めるつもりなんだ?」
 登校して早々に、間宮が駆け寄ってきた。
 よほど楽しみにしてくれているらしく、目を輝かせている。
「これから準備するけど、まだ言えないんだ。ごめん」
「そうか、投稿した時は教えて。速攻で見る」
「うん、もちろん」
「何の話?」
 山笠が水無瀬と連れ立ってやって来る。
 真面目そうな水無瀬がどういうリアクションを取るか気がかりだったが、気にしても仕方ない。
「俺さ、このアプリで時々呟いているんだけど、ホームページのリンク貼ってて、そこにはボイスメッセージを載せているんだ」
「へえ、面白い試みだね」
 意外にも、水無瀬は眼鏡を押し上げながら、興味深げに覗き込んできた。
「それ、今流行りの動画配信とは少し違うね。でもそのやり方の方が、僕は好きだな。僕も朗読動画とか上げてみようかな」
「え、ほんと?俺絶対聞く!」
 勢いよく山笠が声を上げる。
 水無瀬が圧倒されたように後ずさりながらも、頬を掻く仕草から悪い気はしていないのだと分かる。
「ごめん、僕の話で逸れたね。僕も興味あるな、その話」
「水無瀬もフォローしたらどうだ?ほら、これが鷺澤君のアカウントだけどさ……」
 みんなで盛り上がり、少しずつ輪が広がっていくのを、俺は目を細めて眺める。
 こんなふうに友達ができるなんて、あの頃は想像していなかった。
 それもこれも、矢島と宇宙のおかげだ。
 だからこそ、矢島にも。
 その時、スマートフォンにメッセージが届いた。
「鷺澤さん、打ち合わせの件で話があります。今夜、7時頃に自宅にお邪魔します」
「質問じゃなくて確定事項なんだ。矢島さんらしいな」
 一人で笑った途端、俺は自分の中で、宇宙と矢島が溶け合い、一つになったのを確かに感じた。