灯之村発熱事件 記録集

【資料10-C】現地調査報告(続き)────

 取材を終えて村を出ようとしたとき、一人の老婆が近づいてきた。

 彼女は何も言わず、両手を差し出した。

 皺だらけの掌を、夕日に向けるように上に向けて。

 私はじっと見ていた。

 老婆は微笑んだ。穏やかな、満足そうな微笑みだった。

 そして、静かに手を下ろした。

「ありがとうございます」

 彼女はそう言って、去っていった。

 車に乗り込み、山道を下った。

 バックミラーには、夕日に染まる村の姿が映っていた。