灯之村発熱事件 記録集

【資料8-A】遺族証言────

 対象者:匿名(故人の娘)
 収録日:2025年10月25日
※遺族の強い希望により、録音は行わず筆記のみ

 父は七十八歳でした。心臓に持病がありましたが、普段は安定していて、医師からも「旅行は問題ない」と言われていました。

 灯之村のことは、テレビで見て知ったんです。「長寿の秘密を知りたい」と父が言い出して、母と二人で行くことになりました。

 帰ってきた日の夜、父は元気でした。「いいところだった」「空気がきれいだった」と話していました。あの挨拶のことも「変わってるけど、温かみがあった」と言っていました。

 翌日の朝、父が熱を出しました。三十八度くらい。風邪かなと思って、市販の薬を飲ませました。

 でも、夜になっても下がらなくて。むしろ、どんどん悪くなって。

 夜中の三時頃、父が苦しみ始めました。救急車を呼んで、病院に運ばれましたが……。

 朝の六時に、亡くなりました。死因は心不全だと言われました。

 でも、おかしいんです。父の心臓は、確かに弱かったけど、そこまで悪くなかった。薬も飲んでいたし、定期検診も受けていた。なのに、なぜ突然……。

 母は、灯之村から帰ってきて何ともなかったんです。私も一緒に行きましたが、何ともありませんでした。なのに、父だけが……。

 あの挨拶のせいだとは、思いたくありません。でも、タイミングが……。

 父は、何度もあの挨拶を受けたと言っていました。村を歩くたびに、すれ違う人みんなが両手を出してきて。父は嬉しそうにしていました。「歓迎されてる」って。