灯之村発熱事件 記録集

【資料2-C】映像記録書き起こし────

 撮影者:花村園子
 日時:2025年8月22日 11:00〜15:30
 場所:村内各所

【診療所にて 11:00】

(白衣の医師がデータを見せている)

 医師:確かに住民の健康状態は良好です。生活習慣病の罹患率も全国平均を大きく下回っています。

 花村:食生活に秘密があるのでしょうか。

 医師:それが不思議なんです。特別な食材があるわけでもない。普通の和食中心の食事です。

 花村:では、何が……。

 医師:正直なところ、私にもわかりません。十年以上ここで診療していますが、説明のつかないことが多いんです。

(診療所を出る。看護師が両手を差し出して挨拶)

 花村(ナレーション):白い制服の袖から伸びた腕が、宙に浮いているように見える。掌には何も乗っていない。

【棚田にて 12:30】

(黄金色に輝く稲穂。農作業中の男性が手を止める)

 男性:いい天気ですな。

(男性、泥だらけの両手を差し出す)

 花村(ナレーション):土の匂いがかすかに漂ってきた。

【神社境内にて 13:45】

(老人たちが日向ぼっこをしている。花村の姿を見つけると、全員が立ち上がる)

 花村(ナレーション):一列に並んで、順番に両手を差し出してくる。まるで儀式のようだった。

(五人、六人と挨拶が続く)

 花村(小声で):彼らは何かを差し出しているのか、それとも受け取っているのか……。

【小学校にて 14:30】

(校庭で遊ぶ子どもたち。花村を見つけて駆け寄ってくる)

 子ども:お客さんだ! 

(子どもたちが小さな手を差し出す)

 子ども:先生が言ってた。お客さんにはこうするんだって。

 花村(ナレーション):無邪気な笑顔だが、その仕草は大人たちと寸分違わない。掌を上に向けて、じっと差し出す。私が何もしないでいると、満足そうに手を下ろした。