灯之村発熱事件 記録集

【資料1-C】インタビュー記録────

 対象者:花村園子
 収録日:2025年9月12日
 場所:都内スタジオ
※事故の2日前に収録されたもの


 ──まず、灯之村からの依頼を受けた経緯を教えてください。

 花村:はい。八月の中旬に、突然メールが届いたんです。灯之村役場観光課という、聞いたことのない差出人から。

 ──第一印象はいかがでしたか。

 花村:正直、最初は怪しいと思いました。地方自治体からの依頼は珍しくないんですけど、報酬が相場の二倍以上だったので。普通、そんな高額オファーはありえないですから。

 ──それでも引き受けた理由は? 

 花村:検索してみたら、灯之村は実在する村で、確かに長寿で有名だったんです。テレビの健康番組でも何度か取り上げられていて。それで、これは本物の依頼だなと。

 ──チャンネルの視聴者層を考えると、長寿村というテーマは相性が良さそうですね。

 花村:そうなんです。私のチャンネルは年齢層が幅広くて、健康や食生活に関心のある方も多いので。「長寿の秘密を探る」というテーマなら、きっと喜んでもらえると思いました。

 ──依頼を受ける前に、何か気になることはありませんでしたか。

 花村:……今思えば、ですけど。

 ──何でしょう。

 花村:報酬が高すぎたんです。観光資源としては、正直そこまで珍しいものがあるわけじゃない。棚田とか、古い神社とか、どこにでもある田舎の風景で。なのに、なぜあんな高額を提示してきたのか。

 ──今はどう思われますか。

 花村:……わかりません。でも、何か理由があったんだと思います。

 ──灯之村について、事前に調べたことはありますか。

 花村:ええ、一応。長寿村として有名なこと、山間部の小さな集落であること、独自の風習があること……そのくらいです。

 ──独自の風習というのは。

 花村:ネットで見つけた古い記事に、「変わった挨拶がある」と書いてありました。でも、詳しいことはわからなくて。現地で確認しようと思っていました。

 ──その記事は、何年前のものでしたか。

 花村:昭和六十二年の学術論文と、大正時代の新聞記事です。どちらも、灯之村を訪れた人が発熱したと書いてありました。

 ──それを読んで、不安には思わなかったのですか。

 花村:……正直、オカルトだと思いました。大正時代や昭和の話ですし。二十一世紀の現代に、そんなことがあるわけないと。

(長い沈黙)

 花村:……甘かったですね。