惚れちゃいけない恋なんて、

 この世界には、触れちゃいけない事が沢山存在する。
 関わっちゃいけない事、見ちゃいけない事など。
 そのような、触れちゃいけない物が数多く存在するのだ。そして、僕が通っている学園にも、触れちゃいけない事が存在していた。いや、事というより存在と言ったほうが正しいだろうか?
 この学園には柊 初彩《ひいらぎ そあ》とうい少女がいる。その少女は、学園で一番の美少女と言われているが、同時に学園で一番塩対応な少女だ。声を掛けたらゴミのような目で見られるし、会話できた人間なんて殆どいないらしい。それ故、告白して玉砕をした人間は数え知れないとの事だった。
 けれど僕はその少女に惹かれた事は無かった。何故ならば、どれだけ顔が良かろうとも性格がダメなのであれば付き合えたとしても無駄だからだ。だから僕は、一切柊初彩という少女に関わらないつもりでいた。だというのに、そんな彼女は今何故か僕の隣に座っていた。
 「晴天だねぇ〜」口を開かないで有名な彼女が、口を開く。どう考えてもおかしい状況だ。男子たちがいたら、間違いなくボコボコにされてそうな、そんな状況だ。
 「どこか行ってくれるか?」
 「うん?どうして?」
 「あんたといると、僕が変な目で見られる。だからどっか行ってくれ」
 いきなりだった、柊初彩はここに現れて、僕の隣に座ってきた。心の底からどこかへ消えてほしいと僕は思ってたのだが、
 「え?嫌だけど」
 と否定してきた。なんなんだ?本当に。そこで僕は言った。「あんた、塩対応で有名な女だろ?なのになんで僕の隣にいるんだよ」「このままだと僕が変な噂に巻き込まれちまうだろうが」
 「嫌なの?そういう噂が立つの?」
 「嫌だ、マジでやだ!あんたと付き合ってる的な噂をなんで立てられないといけないんだ、あんたは有名人なんだ。僕みたいな凡人に構ってないで、どっか行ったらどうだ?」
 「それじゃぁ、なお私はここにいるね」
 「なんでだよ」
 「知ってると思うけど、私ってモテるんだよね」
 「らしいな」
彼女が急にそう言ってきたのでなんとなく返した。
「私を見た人間は確実に一度は私に惹かれるし、惹かれない男の子の方が少ないの。それで、君の視線だけは違ったんだよね」
「そうだっけ?」
「そうだよ、全然違った。君だけは私を軽蔑するような、今まで感じた事のない視線を感じたんだよ」
まぁ、僕が彼女に惹かれる事は絶対にないからな。
顔が良くても性格がダメなのであれば話にならない。
そしてそんな奴のせいで、僕に妙な噂が立ったらさらに面倒だ。だから切実に傍を離れて欲しいのだが、一向に離れない。
「私、手に入れられない物が欲しいんだよね。そしてきっと君は、私じゃ手に入れられない。つまり、難易度が高いんだよ」「それで?」「だから、君を攻略するまでは傍に居ようと思ったの」「いい迷惑だ、二度と近づかないでくれ」切実に僕はそう言った。
「う〜ん、やっぱり君って他と違うよね。私ってそんな魅力ない?」つぶらな瞳で覗き込んでくる。そんな彼女に僕は嘆息する。「魅力はあるのかもしれんが、生憎とあんたの噂は沢山聞いてるんだよ。ゴミのような視線で見てくるやら、地球の言葉と思えないほどの罵倒をされたとか。そんな話をよく聞くんだよ。そんな奴を魅力があるだとか思うとでも思っているのか?」
僕がおかしいんじゃない、周りがおかしいのだ。普通、そんな悪い噂が立ってたら誰だってそんな印象を持たないか?「う〜ん、多分だけどきっと皆確かにそういう悪い噂を耳にした事はあると思うんだけど、結局私を見たら惹かれちゃうんじゃないかな?だって私可愛いし」
「可愛いが全てじゃないだろ」
「けど、人間誰しも第一印象は顔なんだよ。だから皆、私を見たら必ず惹かれる。だから初めてだったの。君のように、心の底から軽蔑するかのような視線を送りつけてきたのは」「だから、絶対に君を惚れさせてやろうって!そう思ったんだよ!」
「あー、おまえにほれちまったよ、だいすきだ〜」
「演技って分かってるけど、もう少し心込めて言ってくれない?」
「頑張ったが無理だった、悪いな」
「ただ悪いが、僕はお前と関わるつもりは一切ない。お前が近くに来ても僕は無視し続ける。」
「果たして、お前が惚れさせるのが先か、お前が諦めるのが先なのか、見物だな」
「ふふんっ!負けるつもりは全然ないからね!」

 こうしてこれから、柊初彩という、少女に纏わりつかれる生活が始まった。

この話は主人公が惚れたら終わりの物語
惚れたらもうそこらへんの男と変わらない
柊初彩が興味があるのは自分に惚れない主人公なのだから