優等生の僕が、問題児に「つまみ食い」されるまで

「確かに」

 次はお化け屋敷にやってきた。僕は怖いものが嫌いだけど、怖いもの見たさがある。
 心霊番組がやっていると、つい見たくなってしまう。お風呂の時とか、寝る時に怖いけど。

 そういう時は、ゴンザレスにもふもふする。そうすれば大抵のことは、大丈夫になってしまう。
 帰ったら、もふもふしないとね。それが使命なのだから、楽しみである。

 朔弥くんに掴まりながら、歩いている。初めて、この人を頼りに思った。
 もちろんそれは嘘だけど、恥ずかしいじゃん。まあニヤニヤしているし、頭を撫でてきた。

 僕の強がりだって、分かっているんだろうけど。声が大きいことを指摘すると、ツッコまれてしまった。
 朔弥くんの癖して、的を射た発言している。思わず納得すると、優しい笑顔を浮かべていた。
「はあ〜楽しかった」
「だな〜のぞむんが、煩かったけど」
「お化け屋敷は、大声を出す場所だろ。ジョーシキだ」
「あー、はいはい」

 お化け屋敷から出て、近くのベンチに座っていた。朔弥くんの服を掴んでいるが、別に怖かったわけじゃない。
 寒いし、本悪的に雪が降りそうだから。マフラーを巻いているから、近くにいないとね。

 僕は精一杯の強がりを見せると、朔弥くんは笑っていた。確かに怖かったけど、隣に好きな人がいる。
 腕を組んで、手を繋いでいる。そんな状況で、幸せじゃないはずがない。

 もう完全に暗くなってきて、帰る時間が迫ってきた。もっと一緒にいたいのに、帰りたくないな。

「メリーゴーランドに行こうぜ」
「う、うん」

 朔弥くんに手を差し出されて、その手を取った。優しい笑みを浮かべていて、見惚れてしまった。
 立ち上がって、メリーゴーランドに向かう。その道中、すれ違う親子連れやカップルがいた。

 そうか、そろそろパレードが始まるのか。何か、色々と雑談をしていた。
 だけど街灯に照らされる朔弥くんが、綺麗だった。その光景を目に焼き付けるために、話を聞く暇がなかった。

「のぞむんっ、俺王子に見える?」
「そういうこと、言わなきゃ見える」
「手厳しっ」
「僕以外に見えない方がいい」
「何か言った? のぞむん姫っ」
「姫じゃないし」
「俺ものぞむんが、他の人に見つからないで欲しいから〜同じだね〜」

 メリーゴーランドに乗って、僕たちは微笑み合った。朔弥くんは、白馬に乗った。
 僕は怖いから、馬車に乗った。隣同士のため、なんか守られているみたい。

 本当に王子みたいにキラキラしていて、見惚れてしまった。心臓が煩くて、他の音が聞こえない。
 そこで朔弥くんは、ギャルピースしてきた。王子様にギャルピースは違うだろうと思ったが、イケメンはイケメンだった。

 王子に見えるかと聞かれ、思わず悪態をついた。ふざけているが、本当にカッコいい。
 僕以外に見つかる必要性がないから、この乗り物はダメだね。今はパレードに人が集中しているからいいんだけど。

 姫とか言われても、全然嬉しくない。だけどその後の言葉が嬉しいって思うのは、朔弥くんの笑顔が眩しいからだよね。

「のぞむんっ! 外見て、綺麗」
「怖いから、無理」
「ジェットコースターは平気なのに」
「それは、一気に落ちるから大丈夫。ゆっくりは怖い」
「変な理屈。ほら、見て」
「こわっ……くない」
「でしょ」

 観覧車に乗ったが、怖いよね。高いとこ、苦手なんだよね。
 前に座ろうとしたから、腕を強引に引っ張った。ニコニコ笑顔で、隣に座ってきた。

 腕を絡ませて、密着した。正直、お化け屋敷よりも怖いかもしれない。
 昼間だったら、まだ景色を見られるかもしれない。だけど夜は、普通に怖い。

 朔弥くんの腕にしがみつき、ギュッと目を閉じている。優しく頭を撫でてくれて、そのおかげで冷静を保てている。
 耳元で優しく囁かれて、ゆっくりと目を開けた。すると綺麗な夜景が、目に飛び込んできた。

 ありきたりだと自分でも思う。それでも、その夜景よりも朔弥くんの横顔の方が綺麗だ。
 どうして、こんなにも綺麗なんだろう。本当に僕には勿体無いぐらいに、洗練されている。

「朔弥くんのこと、嫌いだった」
「知ってる」
「だけど……今は」
「知ってる。俺もだから……好きだよ、望」
「僕も……す……き」

 微笑み合っていると、好きが溢れてきた。そこで、自分の気持ちを伝えようと思った。
 朔弥くんのことは、最初嫌いだった。複雑な感情が、入り混じっていたんだ。

 知っていると、嬉しそうにしている。変な感じがするが、それが僕たちなのかもな。
 意味が分からないが、気にしないでほしい。誰に何を言い訳しているのか、分からない。

 自分でも迷走気味だけど、今の気持ちは変わらない。僕の見る優しい瞳も、僕を呼ぶ綺麗な声も。
 頬を触っている手の温もりも、胸の鼓動も全て。僕たちの気持ちを、表している。
 好きだと言われて、好きだと告げた。顔が近づいてきたから、静かに目と閉じた。
「着きましたよ〜」
「あっ……ぷっ」
「行こう。のぞむん」
「うんっ」

 キスしようとすると、下に到着したようだ。係員のお姉さんに声をかけられて、思わず笑ってしまった。
 朔弥くんも笑っていて、手を差し出してきた。その手を掴んで、ゆっくりと観覧車を降りた。
 そのまま腕を組んで、パレードに向かった。まだ帰りたくないのは、お互い様らしい。

「のぞむん、好きだよ」
「僕も、好きだよ」
「ツンデレじゃないのか」
「そんな僕は嫌い?」
「好きに決まってんだろ」
「そうだね」

 パレードの前に来たのに、僕たちはお互いしか見ていない。他のものが、見えないほどに見つめ合った。
 朔弥くんの胸に両手を置き、抱きしめてくれた。頬を触ってくれて、お互いの顔を穴が開くほど見つめ合う。

 素直に自分の気持ちを伝えると、ツンデレじゃないと言っている。ツンデレの僕が好きなのかと、不安になった。
 頬を膨らましていると、優しく微笑んでくれた。好きだと言ってくれて、本当に嬉しい。

 まさか、こんなにも人を好きになるなんて思わなかった。アニメで使い古されたいい回しだけど、本心だ。
 僕は朔弥くんのことが、本当に好きだ。顔が近付いてきたから、静かに目を閉じた。

 キスをして、お互いの顔を見つめ合った。雪が降って、イルミネーションが綺麗だった。
 だけど彼の方が、何倍も綺麗だった。初めての恋、初めての恋人。

 最初で最後の恋は、何よりも甘い。これからも一緒に過ごしていく中で、最高の日を更新できるといいな。
 朔弥くんとの日々が、これからも続いていきますように。愛する人の胸の中で、そう願った。

 ――――ありきたりだけど、これが僕たちである。