優等生の僕が、問題児に「つまみ食い」されるまで

 自分で言いたくないって、言っているのに。それを守ってくれただけなのに、本当に嫌な奴だ。
 逆の立場だったら、こんなの嫌に決まっている。それなのに、優しいから辛い。

「否定したけど、事実だろ」
「なっ! 僕と付き合っているのに! 言いたくないのか!」
「違うくて、彼女じゃなくて……彼氏だろ」
「あっ……そういう」
「可愛いヤキモチなら、大歓迎」
「バカにして」
「してない。俺ばっか、好きなのかって思ってたから……単純に嬉しい」

 確かに、僕が自分で決めたことだ。だけど付き合っているって、言ってほしい。
 自分勝手でわがままで、最悪な思考だ。あーもう、こいつに会ってから僕はおかしくなった。

 抱きしめられて、優しい声色で伝えてくれた。彼女じゃなくて、彼氏だと思っている。
 だから、否定したんだ。そのことを知って、顔から火が出そうになった。

 可愛いヤキモチだと言っていて、ほんとバカにしている。だけど嬉しいって思うのは、不思議な感覚だ。
 そこで僕が、不安にさせていたことを知った。こいつはポジティブだから、忘れていた。

 僕と同じように、悩むことがある。僕って本当にダメな奴だな。
 自分のことしか考えずに、相手のこと考えていない。朔弥くんは、いつだって僕のことを考えてくれているのに。

「いいよ……付き合っていること言っても」
「本当か」
「うん……僕はネガティブだし、間違えると思う。だけど、朔弥くんのおかげで前を向けるから」
「俺だって、のぞむんのおかげで前を向けるんだ」

 僕は、やっと決心をつけることができた。怖いって思うけど、朔弥くんを傷つけることの方が怖い。
 きっと心無いことを言われたり、後ろ向きになることもあったりすると思う。

 だけどその度に、二人で乗り越えて行こう。根拠はないし、確証もない。
 だけど僕たちなら、きっと大丈夫だと思う。胸に抱きついて、擦り寄った。

 優しく抱きしめてくれて、暖かくて心地いい。頬を触られて、顔を見上げた。
 いつも以上に綺麗で、見惚れてしまう。朔弥くんの首に腕を回して、見つめ合った。

 顔が近付いてきたから、静かに目を閉じた。優しく触れるだけのキスを、何度も角度を変えてした。

「もう、初めてだよ……歌わずに、出てきたの」
「初めてか、嬉しいな」
「くっ……無駄にイケメンめ」
「えー何か、言ったかな〜もう一度」
「アホ」
「あー、可愛いな〜」

 時間の数分前になって、電話がかかってきた。僕は驚いて、朔弥くんに抱きついた。
 笑って頭を撫でながら、電話に出てくれた。恥ずかしいため、ずっと朔弥くんにくっついていた。

 店員さんに見られていたけど、もうどうでもよかった。手を繋ぎながら、夜道を歩いている。
 寒くなってきて、日が落ちるのが早くなった。なんか、詩人みたいなことを言ってしまった。

 それにしても、カラオケで歌わないなんてな。お金の無駄使いな気がするが、まあいいや。
 高校生の僕たちには、それが限界だったから。だけど僕の発言に、嬉しいと言っている。

 優しい笑みを浮かべていて、見惚れてしまった。無駄にイケメンなのは、困ったものである。
 僕の悪態を可愛いって言うのは、お前ぐらいだ。まあ、こんな奴は一人で十分だ。

「イブは、その服着てこいよ」
「当たり前だろ。そのために買ったんだから」
「ああ、そうだな」
「あっ、服ありがとう。お母さんによろしく」
「おうっ」

 マンションのエントランスまで、送ってくれた。正直離れたくないが、仕方ないよな。
 こいつにだって、帰る場所があるんだから。寂しいと思っていると、頭にキスをしてきた。

 もうこいつはどうして、そんな恥ずかしいことを平気でできるんだ。
 イブのことを言われて、了承した。まあ最初から、そのつもりだったからな。

 だけど、改めて言われると照れるな。名残惜しいが、帰る背中を見送った。
 顔を見たいため、もう一度話しかけた。すると満面の笑みを浮かべ、手を振っている。

 僕も手を振って、今度こそ帰ってしまった。その背中が見えなくなってから、マンションへと入った。

「はあ……流石に、早すぎだっ」
「のぞ! むんっ! おっはー」
「朝から、テンション高いな」
「のぞむんに〜愛しの彼氏に会えるなら、これ以上にない幸福だからね〜」
「はあ……早く行くぞ」
「は〜いっ」

 イブになり、駅で待ち合わせていた。楽しみで眠れなくて、一時間早く着いてしまった。
 ため息をついていると、嬉しそうに手を振っている朔弥くんが目に入った。

 いつも以上にイケメンで、バチバチに決めている。僕のためにオシャレしていると思うと、恥ずかしい。
 前に行くと、優しく抱きしめられた。頭を撫でられて、腰を支えられた。

 周りが見ていて、恥ずかしい。だけどそれ以上に嬉しいって思う僕も、大概なんだろうな。
 付き合っていることを話さない。そんなことを思っていた自分が、不思議に思うぐらいになった。

 学校でもバイト先でも、完全にバレていた。まあ恥ずかしいけど、嬉しいって思うんだ。
 思い切って、腕を組んでみた。すると嬉しそうにしていて、寒いはずなのに暖かい。

「僕が言うことじゃないが、早く来ていたんだな」
「のぞむんは、いつも一時間ぐらいは早く来てるでしょ」
「もし、僕が遅くなったら。どうするつもりだったんだよ」
「あっ」
「考えてなかったな。アホ」
「てへぺろっ」

 今日の目的地は、遊園地である。クリスマスイブのため、かなりの人混みになるだろう。
 だけどこいつとなら、大丈夫だろう。今だって電車に乗っていて、僕のことを守ってくれている。

 バランスを崩しそうになっているが、支えてくれている。他の人も、僕たちに興味すらないからね。
 そこで、僕は気になったことを聞いた。すると深いところまで、考えていなかったらしい。

 暴言を吐いてしまったが、嬉しいんだよね。きっと僕のこういうとこも、見透かしているんだろうな。
 優しい瞳で、僕を見つめている。僕はこの瞳に、本当に弱いらしい。

「マジで、無駄にイケメンだな」
「聞こえな〜い」
「バカ」
「アホの次は、バカか。次は何かな」
「おたんこなす」
「なるほど、そうきたか」

 どうして、こんなにイケメンなのだろうか。日に日に、イケメン度が増している。
 好きだから、恋は盲目だからか。恋愛フィルターには、誰にも逆らえないからか。

 まあそんなことは、どうでもいいか。こいつとふぜけあうのも、悪くない。
 暴言を吐かれているのに、喜んでいる。本当にアホだけど、嬉しいと感じてしまう。