優等生の僕が、問題児に「つまみ食い」されるまで

 恥ずかしいし、嬉しいし。複雑な感情が織り混ざって、何も言えなくなっていた。
 僕たちの関係を言いたいらしいけど、僕は言わないでほしい。純粋な瞳で、質問されてしまった。

「だって……怖いでしょ」
「怖い? なんで」
「だって……男同士って、誰もが受け入れてくれるわけじゃないし」
「確かにな……ごめんな。無神経だった」

 朔弥くんと付き合うのも、一緒にいるのも別にいい。言うのも別に気にしないし、お母さんは応援してくれている。
 そこはいいんだけど、心無い言葉を言われることもあるだろう。その度に、傷付いて慰めてもらう。

 それじゃ、対等にはなれない。僕だって、好きな人を守れるぐらいにはなりたい。
 自分のエゴかもしれないし、自己満足だよね。分かっているけど、僕だって強くなりたい。
 少し寂しそうな顔をしていて、胸が痛くなった。だから、精一杯の勇気で想いを伝えるよ。

「嫌なわけじゃないから」
「分かってる」
「い……ずれは言っても」
「無理はすんな。それよりも重要なのは、望が笑顔でいることだから」
「朔弥くん、ありが」
「ぶえっ! クション!!!!」
「盛大な……ぷっ、あはは!」

 僕の気持ちだけで、行動するのはダメだよね。だけど、素直に言うことはできない。
 そのため、嫌なわけじゃない。それだけは、分かってほしい。

 他の人のことよりも、その……か、彼氏のためだし。なんか、恥ずかしい。
 抱きしめてくれて、優しくおでこにキスをしてくれた。好きだって分かったら、いつもよりもカッコよく見えてきた。

 恐るべし、恋愛フィルターである。まあ、好きなんだしいいかな。
 カッコいいこと言っているのに、盛大なくしゃみをしていた。お互いに爆笑して、微笑み合った。

 寒いのかと思って、より一層身を寄せ合った。優しい温もりと、心地いい香りが僕を包み込んだ。
 急いで絵を描いたが、僕たちは驚くくらいに絵の才能がなかった。時間がなかったのもあるが。

「さて、デートに行こう」
「おまっ」
「大丈夫。どうせ、またか〜で済むから」
「なるほど」

 放課後になり、朔弥くんに声をかけられた。デートだと言われて、僕は焦ってしまった。
 言わないって、約束したのにっ! しかし周りは全くもって、我関せずだった。

 興味がないようで、日常の風景そのものだった。彼の言う通り、誰も気にしていない様子だ。
 それはそれで、どうなのだろうか。まあ、僕たちにとっては好都合のためいいか。

「ハンカチ、可愛いな」
「ハート柄……僕はいいと思うよ。うん……人それぞれの趣味だし」
「何を勘違いしてるんだよ。姪っ子にだな」
「あーそういう設定」

 アニメショップに来て、買い物をしていた。僕は漫画コーナーを見て、特に買いたいものがなかった。
 そのため、朔弥くんを探した。そこでハンカチを見ていたため、横から見てみる。

 メガネをクイッと上げて、手元を見た。ハート柄で、フリフリのレースがついていた。
 女の子向けで、可愛らしい。まあ別にいいんだけど、イメージがね。

 まあ、可愛いものを男が使ってはいけない。そんな法律や、規則はないし。
 僕だって、可愛いものは好きだよ。だけど、そんな嘘まで言わなくてもね。

「ちがーうっ! 母さんのお兄さんの娘。可愛いんだよ」
「確かに、可愛い。だけど、まさかのロリコンだったとは。趣味は止めやしないけど、手は出しちゃダメだよ」
「どこから、ツッコもうか」

 確かに、可愛い姪っ子さんだ。四歳ぐらいなのかな? ピースして、ドヤ顔している。
 目元が綺麗で、可愛らしい。将来は絶対に、美人さんになるだろう。

 揶揄っているだけなのに、ムキになっている。そんな彼氏が可愛いため、更に揶揄うことにした。
 いつも揶揄われているから、たまにはいいよね。確かに、揶揄うのって楽しい。

 僕って意外と、Sの才能があるのかもね。涙目になって、訴えている。
 その様子を見て、高揚してしまった。ああ、最高に可愛いな。

「ただいま〜あれ、いない」
「ゴンザレス〜手を洗ったぞ〜いないのか」
「うん……あっ、メッセージ来てた。散歩がてら、買い物に行くって」
「なるほど」
「食べて行くか、聞いてって」
「食べる」
「りょーかい」

 家に帰ってくると、誰もいない。スマホを見ると、メッセージが来ていた。
 ゴンザレスと買い物に行くけど、朔弥くんの夕飯は? って買いてあった。

 もう最早、当たり前になっている。お父さんよりも、我が家で食べているかも。
 付き合いとかで、飲みに行くことが多いからね。将来、朔弥くんと一緒に暮らしたいな。
 恥ずかしいため、今は言わないでおこう。僕ももう少しぐらい、素直になれるように頑張ろう。

「何してんだ。来いよ」
「なあ、今は誰も家にいない。そして俺たちは、付き合いたてだよな」
「そ……うだね」
「部屋に招く意味、分かるか」
「い……つも、入ってるし」
「いつもとは、意味が違う。まあ、いいや。焦らなくても、付き合えただけでいいし」

 いつもなら、言わなくても僕の部屋に来る。しかし何故か、そわそわしている。
 声をかけると、妙な雰囲気を醸し出した。リビングで後ろから抱きしめられて、耳元で囁かれる。

 後ろを向くと、真面目な顔をしている。揶揄っているわけじゃなくて、優しい瞳で見つめてきた。
 付き合えただけいいって、なんかそれって違う。確かにそうなんだけど、何かが違う。
 その言い方だと、僕が嫌々付き合っているみたいじゃないか。そのため、僕は思っていることを言おうと思う。

「べ……別に……僕は……仕方ないから、付き合っているわけじゃない」
「分かってる」
「ほんとに、分かっているのか」
「分かってる。好きだ」
「ぼ……くも」

 恥ずかしいが、目を見て伝えた。少し驚いていたけど、嬉しそうだった。
 首元に顔を埋めてきて、少しくすぐったい。頭を撫でられたから、その手に手を重ねた。

 自分の心臓がどうにかなるんじゃないかと思うぐらいに、煩かった。自分だけじゃなくて、朔弥くんの鼓動も聞こえているような気がした。
 当たり前のように僕たちは、お互いの唇を重ねた。優しくて暖かい、そんな温もりを感じた。