優等生の僕が、問題児に「つまみ食い」されるまで

 その上、その後のアフターケアもしてくれている。ほんと、身も心もイケメンだよね。

「何? 喧嘩でもしたの? 大丈夫よ、カップルだもの。喧嘩の一つや二つするわよ」
「えっ……まあ……えっ……カップ……えっ」
「あら、違ったの? 付き合ってるって思っていたのだけど」
「こ……くはく……はされたけど……分からなくて……」
「何が? 好きなんでしょ」
「好きだけど……これが……恋なのか、友達としてなのか……初めてで」

 喧嘩したと思ったいたらしく、心配をかけてしまった。すると、いきなり思ってもいなかった発言をされた。
 待って、付き合ってるって思われていたの。確かに告白はされたけど、まだ返していない。

 自分の気持ちも分かっていないのに、言えない。まあ現状、中途半端なことはしているけど。
 母親にこんな話をするのは、照れ臭い。だけど他に誰にも相談できないし、仕方ないよね。

「じゃあ聞くけど、朔弥くんが他の人と付き合ったら。応援できる?」
「無理……絶対に無理」
「それが答えよ。恋ってね、理屈じゃないの。辛い時も悲しい時もあって、だけどそれ以上に楽しいものよ」
「……そうだね」
「うふふ。不器用で真面目で、真っ直ぐなのはお父さん譲りね。あの人も、相当な鈍感くんだったからね」
「なるほどね……」
「これだけは、忘れないでね。お母さんもお父さんもゴンザレスも、何があっても望の味方よ。朔弥くんもね」
「うんっ、ありがと」

 お母さんに、朔弥くんが他の人付き合ったらって言われた。そんなの、仮定でも絶対に嫌だ。
 応援できるはずがないし、学校にも行けなくなる。バイトも無理になるし、何もできなくなる。

 簡単に想像ができるぐらいに、絶対に無理だ。泣きそうになるし、絶対に応援はできない。
 それが答えだと言われて、自分でもすんなりと納得できた。きっと怖くて、目を背けていたんだよね。

 ――――僕は、恋愛感情で朔弥くんが好き。

 だけど、気がついても伝えれない。だってそんな勇気、僕にはないから。
 今思うと、告白って相当に勇気がいる。平然としていると思っていたけど、そんなことない。

 絶対に悩んでいるし、不安にもなっている。想いを告げたいが、どうすればいいんだろう。
 全身全霊で、自分のことを思ってくれている。そんな相手に、どう向き合えば良いのか分からなかった。

「あの、春木くん。一緒に描かない?」
「えっ? あっ、うん。い」
「ダ〜メっ。のぞむんは、俺と組むの。俺意外とか、絶対にダメ」
「どうして、お前が決め」
「いいから、行くよ〜」

 美術の時間に、二人一組になって絵を描くことになった。高校生にもなって、正直めんどくさいものである。
 どうしようと思っていると、隣の席の女子に声をかけられた。別に断る理由もないため、了承しようとした。

 すると後ろから、朔弥くんに抱きしめられた。昨日の今日で、恥ずかしい。
 好きだって、自分の気持ちに気がついた。今まで通りなのに、異様に意識してしまう。

 すると何故か、勝手に決めていた。まあ勝手にしろと言っているし、断る理由もない。
 隣の席の女子には、悪いことしたな。別に僕と同じで誰でもいいから、声をかけてきただけなのに。

「なんで、怒ってるんだ」
「マジで言ってるのか」
「マジだけど」
「……はあ……こっち来て」

 それにしても、何で朔弥くんは怒っているのだろうか。マジで、意味が分からない。
 中庭で描いていたのだが、気になってしまった。何でもいいと言われたので、校舎を写生している。
 首を傾げていると、腕を掴まれて人気のない校舎裏に連れて行かれた。

「えっ! な、何っ!」
「好きな奴が、他の人に声をかけられたら……誰だって、焦るだろ」
「余裕ないんだなっ。かわいっ」
「……煽んなよ。我慢しているのに」

 いきなり抱きしめられて、汗の香りがした。十月だけど、今日は暖かい。
 さっきの授業は、体育だった。それもあってか、ほんのりといい香りがした。
 なんか、僕って変態みたい。ドキドキしつつも、慌ててしまった。

 思わず顔を見上げると、その表情にドキッとした。前髪を掻き上げて、顔を真っ赤にしている。
 このイケメンは、やっぱりズルい。いつだって、僕の心を独り占めにする。

「のぞむん、聞い……んっ」
「さく……や……く」
「のぞむん……えっと」
「す……きっ……えっと」
「聞き間違いじゃないよな。俺のこと好きなのか」
「う……ん」

 何かを言っていたが、僕は聞く気はなかった。もう耐えることが、できなくなってきたから。
 気がつくと、朔弥くんのネクタイを引っ張っていた。背伸びをして、何とかキスをした。

 初めてだけど、情緒とかなかった。衝動的に、相手のことを考えていなかった。
 朔弥くんは、ずっと僕のことを気遣ってくれていた。きっと、ずっと我慢してくれていた。

 だけど、僕はもう無理だった。自分がここまで、直情的な人間だとは思わなかった。
 想いを告げると、優しく微笑んでいた。抱きしめてくれて、僕は胸に顔を埋めた。

 やっぱり、こいつのこの香りが落ち着く。香水の香りも最初は、慣れなかった。
 だけど、今では心地いいものに変わった。人の汗の香りなんて、嫌だった。

 だけど、今では好きになった。きっと好きな人の香りだから、好きになったんだろうな。
 メガネをクイッと上げて、好きな人の顔を見た。いつもよりもイケメンのため、ドキドキしっぱなしである。
 それから、何度もキスをした。僕のために少し屈んでくれて、お互いに見つめ合った。

「なあ、のぞむん。俺たちのこと、言ってもいいか」
「えっ……なんで」
「だって、のぞむん……モテるし。クラスに学校中に、世間にネットにのぞむんは! 俺のだって、教えたいし。自慢したいし、それから〜」
「ス、ストップ。色々と言いたいことはあるけど……僕は言わないでほしい」
「なんで?」
「うっ……なんて、純粋な瞳」

 ひとしきり、イチャついた。改めて言うと、急に実感が湧いてきた。
 落ち着くと、校舎の壁に寄りかかって座った。痛くないようにと、上着を置いてくれた。

 嬉しいけど、汚くなるのに。しかも暖かいとはいえ、肌寒いでしょ。
 だけど、それを言う状況ではない。だって、腰を抱かれているから。
 自分からキスしてしまい、顔から火が出そうになった。恥ずかしいが、朔弥くんはいつも以上にニコニコしている。