優等生の僕が、問題児に「つまみ食い」されるまで

「僕が? それはないだろ」

 何があったのか、聞くことにした。そんな風な態度を取られていると、流石に怒るぞ。
 だけどいつだって、僕のために動いてくれてる。弱い部分も全て見られているし、慰めてくれている。

 だから僕だって、悩みがあるなら聞きたい。それだけなのに、どうして僕がモテているという話になるのか分からない。

「はあ……いいか、お前は可愛い。綺麗で聡明で、非の打ち所がない。完璧で、兎に角カッコいい……えっと」
「そこまで、無理に出さなくても」
「待て、まだある……えっと……あれ、なんだっけか? 憧れみたいな……高価なものみたいな」
「もしかして、高嶺の花って言いたいのか」
「そうっ! それだっ!」
「はあ……」

 何を言うのかと思ったが、真面目な顔で何を言っているんだ。しかも、僕の褒めてくれるのは嬉しい。
 だからと言って、流石に褒めすぎだろ。悪い気はしないが、言い過ぎだろう。

 恋は盲目や、恋愛フィルターもあるだろう。そうじゃなきゃ、僕みたいなの好きにならないだろう。
 なんか、自分で言っていて恥ずかしくなってきた。こいつは興奮しすぎて、前のめりになっている。

 僕の両肩を掴んで、猛抗議している。ここまでの熱意を他に、使えないのだろうか。
 顔も近くになっているため、静かに目を逸らした。だって、こいつの息遣いを感じられるから。

 心臓が煩くなっているし、このままじゃ身が持たない。やっぱり、こいつは少しアホのようだ。
 高嶺の花って、僕には似合わないだろう。美しく魅力的で、手を伸ばしても届かないものだからな。

「えっと……まずは、落ち着け。僕は、高嶺の花じゃないだろう」
「やっぱり、自覚はないのか。じゃあ聞くが、今まで告白されたことは」
「ない。お前が初めてだ」
「そのことについては、高く評価しよう」

 頭を抱えるとは、このことを言うのだろう。自覚と言われても、全く分からない。
 告白は、こいつ以外にされたことはない。そのことを告げると、満足しているようだ。

 変な奴だが、やっぱり面白いな。こいつといると、自然体でいられる。
 まあ、変なスイッチが入っているようだが。意味が分からないため、もっと聞いた方がいいだろう。

「で? それで?」
「のぞむんは、友達ができないって悩んでいたでしょ」
「ああ、そうだな。それとこれに、因果関係はないだろ」
「それがあるんだな〜真面目に勉強している様子が、近寄り難いって思われてるんだよ」
「そうなのか。お前もだったのか」
「まあな〜邪魔しちゃいけないっていう、暗黙の了解が出来上がってた」

 僕が友達ができないのと、この議題は関係ないだろう。真面目に勉強している姿が、拍車をかけていた。
 まあ、それは一理あるのかもな。こいつもそうだったらしく、なんか複雑である。

 邪魔しちゃいけないって、別にそんなんじゃなかったのにな。まあ、確かに何かに一生懸命になっている人に話しかけづらいもんな。
 高校ではそうであっても、中学は違うような気がする。まあ、それは言わなくてもいいか。

 だけど一つだけ、疑問に思ったことがある。それを聞かないと、モヤモヤしてしまうからな。

「それは理解した。だけど、モテてるって言うのは飛躍しすぎだろ」
「はあ……じゃあ、なんで物を貰っているんだ」
「間違えたって」
「本当に、そうだと思うのか。ここ一週間、当たり前のように誰からでも貰って」
「そんな言い方するな。僕だって、悪いって思って」
「貰うのが、ダメなんじゃないんだよ」
「じゃあ、何がダメなんだよ……やっと、受け入れてもらえたって……喜んじゃダメなのかよ」

 言いたいことは分かったが、やはり釈然としない。そのため、素朴な疑問を投げつけた。
 すると何故か、ため息をついている。物を貰っていることを言われ、意味が分からない。

 くれると言うから、貰っているだけだ。食べ物は粗末にできないし、誰でもよかったのだろう。
 バイト先でも、お土産を貰うからな。それと同じ感覚だと思ったが、どうやら違うらしい。

 それがダメなら、どうするのが正解なんだよ。こいつと話していると、些細なことで泣きたくなる。
 優しく抱きしめられて、頭を撫でられた。顔を見ると、優しく微笑んでいた。

 たったそれだけのことで、優しい気持ちになれる。こいつは何か、特別な力でも持っているのだろうか。
 それを深掘りすると、危ないためやめておこう。それにしても泣きたかったのに、不思議と落ち着いている。

「……そうじゃない……ああもう、嫉妬だよ」
「嫉妬? 誰が何に?」
「だから! 好きな人が、他の人と仲良くしていると……ヤキモチの一つや二つ、するだろう」
「告白の返事をしないからか……その」
「別に無理にしなくていい。真剣に考えているのも知っているから。だけど、もし無理なら早めに言ってくれ……」

 こいつは顔を真っ赤にして、嫉妬だと言っていた。何故なのか、理解できなかった。
 好きな人だと言われ、胸が高鳴った。忘れていたわけじゃないが、目を逸らしていた。

 だって、恥ずかしいだろ。確かにこいつといると、自然体でいられるし楽しい。
 それは間違いないが、これが恋なのか分からない。だって、こんな感情初めてだから。

 思わず、蒸し返すようなことを言ってしまった。こいつは、聞かずに我慢しているのに。
 無理ならと言われ、嫌ではない。こんな風に抱き合うことも、見つめ合うことも。

 だけどこいつ以外にこんな風に見つめられても、なんとも思わない。
 こいつの妄想や嫉妬、恋愛フィルターもあると思うが。だけど、こいつ以外では嫌だと思った。

「急ごう、遅れる」
「おうっ! 走るぜっ」
「廊下は」
「走らない。まあ、春木がいるから大丈夫だと思うが」
「はい、走らせませんので」

 放課後になり、朔弥くんの勉強を見ていた。今日バイトなのを完全に忘れていたため、急いで向かうことになった。
 手を繋がれて、教室を出た。すると走ろうとしたため、注意をしようとした。
 声をかけられたため振り向くと、先生がいた。急なことで、慌ててしまった。

「それはいいが、お前たちってどういう関係性なんだ。今も急いで、何処に? もしかして、悪いこととかしてないよな」
「……えっと」
「同じ趣味なんすよっ。それで早く行かないと、欲しい物が売り切れるんでっ」
「そうなんですっ! 廊下は走らないので、失礼しますっ」