ザァーザァーザァー。

 私は、灰色の空を見上げる。

 雨が降り始めるスタート地点ってどこだろう?

 ザァーザァーザァー。

 雨音は、さっきよりも強くなっている。

 昨日、私の住むエリアが梅雨入りしたと、

 気象予報士が言っていた。

 ザァーザァー、キュルキュル、ザーザーザーザー。

 キュルキュルキュルキュル……。

 「また?最近、調子が悪いわね。この前の雨の時は、一度止まったのよ」

 背後から、うんざりしたママの声が聞こえてきた。

 今からさほど遠くない昔、急激な環境の変化によって、
 人類が住めるのは地球上の限られた場所だけになってしまったらしい。

 急激な変化?

 きっと、何かが少しずつ壊れ始めていたのに、わかっていたのに、私たちは気づかないフリを続けてきのだ。

 その結果、限られた場所の〝作られた世界〟でしか生きることができなくなってしまった。

 10階のベランダから見える空も、そこから降る
 〝雨のようなもの〟も、その音でさえも……。

 私は、ベランダからママに向かって『梅雨明けはいつかな?』と笑顔で言った。

 「……はいつかな?」

 「……はいつかな?」

 「……はいつかな?」

 「はぁ-、この子も電池切れね。修理に出さなゃ」
 と、ママの声が雨音にかき消される。

 ザァーザァーザァー、ザァーザァーザァー。

 大丈夫。

 ここは作られた世界。

 箱の中……。

 雨ももうじき止むだろう……。