侑は、夜の街を走った。体の熱と、心の中のぐちゃぐちゃをどうにかしたかった。でも、走れば走るほど、桜井との帰宅部の日々を思い出して余計に胸が締め付けられる。息が上がっているからなのか、感情のせいなのかも分からない。
なぜか目頭が熱くなって、視界が滲んだ。
侑の脚は、緩やかに速度を落とした。寂れた商店街の入り口で立ち止まり、両手を膝についた。
──苦しい……。
タイルの床に、ぽたぽたと涙が落ちる。
──何でこんなに苦しいんだ?
ガゼルのような走り、シトラスの香り、追い抜いていくときの桜井の笑顔、病気だったのに黙っていたこと。それから、病室での弱った姿。さっきまでの、通話の声。記憶の中の桜井が、侑の中で膨張していく。
胸の内側が、無理やり押し広げられていくように痛んだ。
──好きって気持ちは、こんなに苦しいものだったっけ?
侑は、乱れた思考のまま、答えを探そうとした。
──井口のことはめっちゃ大事だけど、それとは違う。
あいつのことを考えてこんな風に胸が破れそうになったことはなかった。
「……こんなの、初めてだ……」
整理しきれない感情の波に飲まれそうになりながら、鼻をすすり、拳で涙を拭った。乱れた呼吸を整えようとすればするほど肩が震え、しゃくり上げてしまう。
──何で涙が止まんねぇんだよ……!
クソッ……!
車の排気音がして、ヘッドライトが侑を照らしながら通り過ぎた。
——やば。はずい……。
両目を擦り、ピシャピシャと頬を叩いた。
「早く帰らなきゃ……」
侑は、ふらつきながら歩き出した。
まだ、目も胸も熱い。
今、桜井の声が聞きたい。でももう、消灯時間はとっくに過ぎている。
侑のスマホから、LINEの通知音がした。
──もしかして、桜井!?
期待してしまう自分がいる。ポケットに手を伸ばし、スマホを取り出した。
『生きてる?』
一言だけの、井口からのメッセージだった。
その一言を見た瞬間、淡い期待が萎んだ。でも、そのメッセージがあまりにもいつも通りで、さっきまでのぐちゃぐちゃに絡まった感情が少しだけ解れた。
『遅いけどどうした?』
井口は続けてメッセージを送信してくる。
『ごめん。今、帰る途中』
鼻を啜りながら、侑は文字を打ち込む。
すぐに井口から、サムズアップしたウサギのスタンプが送られてきた。そのあと『きーつけろよ』と一言、追加された。
侑は、再び走り出した。
✳ ✳ ✳
ヘッドセットを装着し、Blood Moonにログインする。
「やっときたか」
井口の声がした。
約束していたのに、井口を待たせたままだった。
「まじゴメン。ちょっと色々あってさ」
桜井との通話、悠貴との対峙、それから自分の本当の気持ちに気づいたこと。それらを、井口に話すか迷った。
井口は、少しは茶化すだろうけど、きっと真面目に聞いてくれる。でも、侑は上手く言葉にできない気がした。
「大丈夫か? なんかテンション低い」
井口には、声で分かってしまうらしい。付き合いが長いとは、そういうことだ。
──悠貴も、井口みたいに桜井のことが分かるんだ……。
俺にはぜんぜん分かんねぇのに。
「……大丈夫。灰の公爵ヴォルガンか双星の姉妹か禽獣の王ガルムのどれかがいいんだけど、井口は?」
侑はマップを開きながら言った。
「じゃあ、ガルムかな」
「オッケー」
巨大な黒い獣が、月光を浴びて咆哮を上げた。
獅子の頭、禍々しい黒い翼、ゴリラのような筋肉質の体躯。腰にボロ布を巻いただけの、荒々しい姿。左手には巨大な棘付きの槌、右手には大剣を構えている。
ガルムが尖塔から羽ばたき、瓦礫の庭に降り立つ。衝撃音と共に、足元からもうもうと砂埃が舞う。
ムービーが終わると、戦闘開始だ。侑は距離を取り、井口はガルムに接近する。
「ガルム苦手なんだよ」
コントローラーをガチャガチャと鳴らしながら、侑はぼやいた。
「前は普通に攻略出来てたじゃん。パリィもバクスタも上手かったのに。どうした?」
「……なんか最近、集中出来ないっつうか」
侑が言った。
「なるほど?」
井口には、その原因が何となく分かる。桜井のことだろうとは思うが、口には出さない。
「疲れてんじゃね? まあ、今日はまったりやろうや」
井口は、ガルムの攻撃パターンは読みやすく、さほど難しいとは思っていない。
ガルムが左の槌を振り上げた瞬間、槌の攻撃が来ると思わせて、右手の剣がプレイヤーを薙ぎ払う。ガルムが両腕を振り上げた瞬間、足元に飛び込んで欲張らずに一ニ発攻撃して即ローリングで避ける。遠距離よりも、足元を狙う。侑も分かっているはずだ。でも、今の侑はなぜかガルムの足元に飛び込めない。
「やらしいフェイントしやがるけど、それもパターンだから」
井口はそう言うと、自分のキャラクターを三度ほどローリングさせて画面左に移動した。
ガルムが左の槌を大きく振り上げた。
「来るぞ、剣!」
井口が素早く声を飛ばす。
侑は即座に右に回避した。しかし、次の瞬間、ガルムの右手の大剣が横薙ぎに振り抜かれ、侑が避けた方向に雷が落ちる。
「うおっ!?」
画面が白く光り、侑のキャラが吹き飛ばされ、HPが一気に三分の一まで削られた。
「槌はフェイントだってば」
「分かってるって!」
侑はガルムから距離を取って回復薬を使う。井口は、槌の振り下ろしを回避しながら足元に飛び込んだ。
青く光る矢がいくつか弧を描いて飛んで行き、ガルムに刺さる。しかし、大してダメージを与えられていない。侑は最大まで弓の威力を上げているのに、ガルムのHPゲージは芥子粒ほども減らない。
「それ、強化しても効かないぞ。安全圏からチクチクしてても削れねぇって」
「分かってるけどさぁ……!」
「スランプってレベルじゃねぇぞ。どうした? マジで。ガルムが両手上げた瞬間に足元に特攻しろって」
「無理死ぬ!」
「合図するからやってみ。前にローリングな。で、一回攻撃して離脱」
「わ、わかった!」
ガルムが両腕を振り上げる直前、井口はカウントダウンを始めた。
「3、2、1、行け!」
井口の合図と共にガルムの足元に転がり込み、二人で斬りつけた。
「引け!」
井口の声に合わせて二人がバックステップとローリングして逃れた瞬間、ガルムが両の武器を地面に叩きつけた。
「出来たじゃん」
「うん」
「今のでHP半分削ったから発狂状態来るぞ」
「……あのさ」
「なに?」
「俺、桜井が好きだ」
「え? 今それ言う!? ちょ、やば!」
突然の侑の告白に井口は動揺して操作をミスし、後方にふっ飛ばされてHPの残りが数ミリになってしまった。回復薬を二度使い、井口はガルムの攻撃を避けた。
「……悪い。急に今言わなきゃって思った」
侑の声は、井口にはどこか沈んで聞こえた。恋の自覚は良いとして、何故こんなにもテンションが低いのか気になった。
「やっと認めたか。おせーよ。でもなんであんま嬉しそうじゃねぇの? LINEしてたときは幸せダダ漏れだったのに」
バフかけをしながら井口が言った。
「それなんだけどさ……。桜井の幼馴染も桜井のことが好きなんだよ。そんで、そいつ、桜井が退院したら告白するって俺に言いにきたんだ」
「……なるほど。それで自覚しちゃったってわけか」
「うん」
「で? 侑はどうする?」
「どうするって言われても……」
侑はモゴモゴと何かを言っているが、ガルムの攻撃音にかき消されてしまう。
「……じゃあ、侑は黙って指を咥えて見てるだけってことだな。その幼馴染に桜井が奪われていくのを」
「……でも……」
「好きって言えば。そいつより先に」
「他人事だと思って簡単に言う!」
「他人事じゃねぇよ」
ボソッと井口が言った。
「え?」
「だから、他人事じゃねぇっての。今までの侑を見てたらほっとけねぇっつうか……桜井とくっついて欲しいって思ってるし」
「でも、桜井の気持ちがわかんないんだよ……」
「まだそんなこと言ってるのかよ。あんだけ甘すぎて脳みそ溶けそうなLINEのやりとりしといて?」
「……でも、俺と幼馴染じゃアドバンテージが……」
「もういい!」
井口は声を荒げた。
「じゃあお前は臆病風に吹かれて惨めにプルプル震えてろ!」
「は? なんだよそれ!」
「俺は! 成瀬が幸せじゃないと嫌なの! て言うか! 手が届きそうな幸せを掴もうとしないお前が嫌だ!」
ガルムの咆哮と共に画面が揺れ、キャラクターが怯んで、数秒間行動不能になる。侑は焦って、コントローラーのボタンを無駄にガチャガチャと鳴らす。
再び、ガルムが両腕を振り上げる。
「……今じゃねぇの? 飛び込むなら」
井口はガルムの足元に転がり、二回斬りつけた。
ヘイトが井口に向いている隙に侑も踏み込んだ。ガルムの背後に回り、バックスタブからの追撃。背中に剣が深く差し込まれ、引き抜くと同時に血飛沫が飛び散り、ガルムは膝をついた。
「ちゃんと言えよ。桜井に。じゃなきゃ、ルーキフェルとレェテネーヴみたいになっちまうぞ」
井口はそう言って、静かにコントローラーを置いた。
ガルムの断末魔が響き、身体が崩れ落ちて、風に舞う砂のように消えた。
暗転した画面の真ん中に『Defeated the enemy』の文字が表示された。
なぜか目頭が熱くなって、視界が滲んだ。
侑の脚は、緩やかに速度を落とした。寂れた商店街の入り口で立ち止まり、両手を膝についた。
──苦しい……。
タイルの床に、ぽたぽたと涙が落ちる。
──何でこんなに苦しいんだ?
ガゼルのような走り、シトラスの香り、追い抜いていくときの桜井の笑顔、病気だったのに黙っていたこと。それから、病室での弱った姿。さっきまでの、通話の声。記憶の中の桜井が、侑の中で膨張していく。
胸の内側が、無理やり押し広げられていくように痛んだ。
──好きって気持ちは、こんなに苦しいものだったっけ?
侑は、乱れた思考のまま、答えを探そうとした。
──井口のことはめっちゃ大事だけど、それとは違う。
あいつのことを考えてこんな風に胸が破れそうになったことはなかった。
「……こんなの、初めてだ……」
整理しきれない感情の波に飲まれそうになりながら、鼻をすすり、拳で涙を拭った。乱れた呼吸を整えようとすればするほど肩が震え、しゃくり上げてしまう。
──何で涙が止まんねぇんだよ……!
クソッ……!
車の排気音がして、ヘッドライトが侑を照らしながら通り過ぎた。
——やば。はずい……。
両目を擦り、ピシャピシャと頬を叩いた。
「早く帰らなきゃ……」
侑は、ふらつきながら歩き出した。
まだ、目も胸も熱い。
今、桜井の声が聞きたい。でももう、消灯時間はとっくに過ぎている。
侑のスマホから、LINEの通知音がした。
──もしかして、桜井!?
期待してしまう自分がいる。ポケットに手を伸ばし、スマホを取り出した。
『生きてる?』
一言だけの、井口からのメッセージだった。
その一言を見た瞬間、淡い期待が萎んだ。でも、そのメッセージがあまりにもいつも通りで、さっきまでのぐちゃぐちゃに絡まった感情が少しだけ解れた。
『遅いけどどうした?』
井口は続けてメッセージを送信してくる。
『ごめん。今、帰る途中』
鼻を啜りながら、侑は文字を打ち込む。
すぐに井口から、サムズアップしたウサギのスタンプが送られてきた。そのあと『きーつけろよ』と一言、追加された。
侑は、再び走り出した。
✳ ✳ ✳
ヘッドセットを装着し、Blood Moonにログインする。
「やっときたか」
井口の声がした。
約束していたのに、井口を待たせたままだった。
「まじゴメン。ちょっと色々あってさ」
桜井との通話、悠貴との対峙、それから自分の本当の気持ちに気づいたこと。それらを、井口に話すか迷った。
井口は、少しは茶化すだろうけど、きっと真面目に聞いてくれる。でも、侑は上手く言葉にできない気がした。
「大丈夫か? なんかテンション低い」
井口には、声で分かってしまうらしい。付き合いが長いとは、そういうことだ。
──悠貴も、井口みたいに桜井のことが分かるんだ……。
俺にはぜんぜん分かんねぇのに。
「……大丈夫。灰の公爵ヴォルガンか双星の姉妹か禽獣の王ガルムのどれかがいいんだけど、井口は?」
侑はマップを開きながら言った。
「じゃあ、ガルムかな」
「オッケー」
巨大な黒い獣が、月光を浴びて咆哮を上げた。
獅子の頭、禍々しい黒い翼、ゴリラのような筋肉質の体躯。腰にボロ布を巻いただけの、荒々しい姿。左手には巨大な棘付きの槌、右手には大剣を構えている。
ガルムが尖塔から羽ばたき、瓦礫の庭に降り立つ。衝撃音と共に、足元からもうもうと砂埃が舞う。
ムービーが終わると、戦闘開始だ。侑は距離を取り、井口はガルムに接近する。
「ガルム苦手なんだよ」
コントローラーをガチャガチャと鳴らしながら、侑はぼやいた。
「前は普通に攻略出来てたじゃん。パリィもバクスタも上手かったのに。どうした?」
「……なんか最近、集中出来ないっつうか」
侑が言った。
「なるほど?」
井口には、その原因が何となく分かる。桜井のことだろうとは思うが、口には出さない。
「疲れてんじゃね? まあ、今日はまったりやろうや」
井口は、ガルムの攻撃パターンは読みやすく、さほど難しいとは思っていない。
ガルムが左の槌を振り上げた瞬間、槌の攻撃が来ると思わせて、右手の剣がプレイヤーを薙ぎ払う。ガルムが両腕を振り上げた瞬間、足元に飛び込んで欲張らずに一ニ発攻撃して即ローリングで避ける。遠距離よりも、足元を狙う。侑も分かっているはずだ。でも、今の侑はなぜかガルムの足元に飛び込めない。
「やらしいフェイントしやがるけど、それもパターンだから」
井口はそう言うと、自分のキャラクターを三度ほどローリングさせて画面左に移動した。
ガルムが左の槌を大きく振り上げた。
「来るぞ、剣!」
井口が素早く声を飛ばす。
侑は即座に右に回避した。しかし、次の瞬間、ガルムの右手の大剣が横薙ぎに振り抜かれ、侑が避けた方向に雷が落ちる。
「うおっ!?」
画面が白く光り、侑のキャラが吹き飛ばされ、HPが一気に三分の一まで削られた。
「槌はフェイントだってば」
「分かってるって!」
侑はガルムから距離を取って回復薬を使う。井口は、槌の振り下ろしを回避しながら足元に飛び込んだ。
青く光る矢がいくつか弧を描いて飛んで行き、ガルムに刺さる。しかし、大してダメージを与えられていない。侑は最大まで弓の威力を上げているのに、ガルムのHPゲージは芥子粒ほども減らない。
「それ、強化しても効かないぞ。安全圏からチクチクしてても削れねぇって」
「分かってるけどさぁ……!」
「スランプってレベルじゃねぇぞ。どうした? マジで。ガルムが両手上げた瞬間に足元に特攻しろって」
「無理死ぬ!」
「合図するからやってみ。前にローリングな。で、一回攻撃して離脱」
「わ、わかった!」
ガルムが両腕を振り上げる直前、井口はカウントダウンを始めた。
「3、2、1、行け!」
井口の合図と共にガルムの足元に転がり込み、二人で斬りつけた。
「引け!」
井口の声に合わせて二人がバックステップとローリングして逃れた瞬間、ガルムが両の武器を地面に叩きつけた。
「出来たじゃん」
「うん」
「今のでHP半分削ったから発狂状態来るぞ」
「……あのさ」
「なに?」
「俺、桜井が好きだ」
「え? 今それ言う!? ちょ、やば!」
突然の侑の告白に井口は動揺して操作をミスし、後方にふっ飛ばされてHPの残りが数ミリになってしまった。回復薬を二度使い、井口はガルムの攻撃を避けた。
「……悪い。急に今言わなきゃって思った」
侑の声は、井口にはどこか沈んで聞こえた。恋の自覚は良いとして、何故こんなにもテンションが低いのか気になった。
「やっと認めたか。おせーよ。でもなんであんま嬉しそうじゃねぇの? LINEしてたときは幸せダダ漏れだったのに」
バフかけをしながら井口が言った。
「それなんだけどさ……。桜井の幼馴染も桜井のことが好きなんだよ。そんで、そいつ、桜井が退院したら告白するって俺に言いにきたんだ」
「……なるほど。それで自覚しちゃったってわけか」
「うん」
「で? 侑はどうする?」
「どうするって言われても……」
侑はモゴモゴと何かを言っているが、ガルムの攻撃音にかき消されてしまう。
「……じゃあ、侑は黙って指を咥えて見てるだけってことだな。その幼馴染に桜井が奪われていくのを」
「……でも……」
「好きって言えば。そいつより先に」
「他人事だと思って簡単に言う!」
「他人事じゃねぇよ」
ボソッと井口が言った。
「え?」
「だから、他人事じゃねぇっての。今までの侑を見てたらほっとけねぇっつうか……桜井とくっついて欲しいって思ってるし」
「でも、桜井の気持ちがわかんないんだよ……」
「まだそんなこと言ってるのかよ。あんだけ甘すぎて脳みそ溶けそうなLINEのやりとりしといて?」
「……でも、俺と幼馴染じゃアドバンテージが……」
「もういい!」
井口は声を荒げた。
「じゃあお前は臆病風に吹かれて惨めにプルプル震えてろ!」
「は? なんだよそれ!」
「俺は! 成瀬が幸せじゃないと嫌なの! て言うか! 手が届きそうな幸せを掴もうとしないお前が嫌だ!」
ガルムの咆哮と共に画面が揺れ、キャラクターが怯んで、数秒間行動不能になる。侑は焦って、コントローラーのボタンを無駄にガチャガチャと鳴らす。
再び、ガルムが両腕を振り上げる。
「……今じゃねぇの? 飛び込むなら」
井口はガルムの足元に転がり、二回斬りつけた。
ヘイトが井口に向いている隙に侑も踏み込んだ。ガルムの背後に回り、バックスタブからの追撃。背中に剣が深く差し込まれ、引き抜くと同時に血飛沫が飛び散り、ガルムは膝をついた。
「ちゃんと言えよ。桜井に。じゃなきゃ、ルーキフェルとレェテネーヴみたいになっちまうぞ」
井口はそう言って、静かにコントローラーを置いた。
ガルムの断末魔が響き、身体が崩れ落ちて、風に舞う砂のように消えた。
暗転した画面の真ん中に『Defeated the enemy』の文字が表示された。
