齊藤の言葉の意味を理解したのは、それから少し後のことだった。
学校に復学し、2年生をもう一度やり直そうとした時に、担任が齊藤ではないことを知った。
それどころか、齊藤恋という教師は学校に存在しなかった。
何がなんだか分からなかったが、齊藤が元刑事だと言っていたことを思い出し、その可能性に思い至る。
してやられたと思ったが、刑事として近づくよりも、親身な新しい担任として近づいた方が、陽介の元恋人の死の原因を探れると思ったとすれば、筋が通っている。
「覚悟って何だよ、会うことさえできないじゃないか」
独り言で嘆いた時、俺はとっくに齊藤に囚われていたのだと知った。
行き場のない感情を持て余したまま、陽介が入院する病院に向かう。
すると、面会の手続きをしようとした時、看護師が困ったような顔をした。
「すみません、今、実は他の方が水無月さんと面会中でして。もうすぐ終わられるとは思うんですけど、待ちますか?」
「……えっと、はい」
「ではそちらの長椅子で……」
座ろうとした時、厳重に封鎖された扉が開く。
そこから現れた人物に、はっと呼吸が乱れた。
齊藤恋が看護師に頭を下げ、こちらを向く。
俺と目が合うと、ふわりと笑った。
「せん……齊藤さん」
「水無月君と会って来て下さい。ここで待っています」
今すぐ問い質したい気持ちをぐっと堪え、齊藤と入れ違いで扉の中へ入った。
相変わらず陰鬱な空間だった。長い廊下を進み、一番奥の一室の前で、案内していた看護師が振り返る。
「こちらです。面会終了時間が迫っているので、できるだけ手短にお願いします」
頷くと、看護師はきびきびと立ち去った。
息を吸い込み、ドアをノックする。
毎回、この瞬間が相当緊張した。酷い状態の時を知っているだけに。
「はい」
「陽介?俺だけど」
「入っていいよ」
促されるままに入ると、いつも以上に生気を瞳に宿した陽介に出迎えられた。
「調子良さそうだな」
「まあな。あの刑事さんと知り合いなんだって?」
「齊藤さん、俺のこと話していたのか」
「詳しくは聞いてないけど、俺のために戦ってくれたんだってな」
戦っていた。齊藤は、そう思ってくれていたのだ。
涙腺が緩みそうになるのを堪えていると、陽介は思わぬことを言った。
「俺も勉強についていけないから、2年からやり直すことにした。だからよ、失った1年分、一緒にやり直そうぜ」
「うん……っ」
拳をぶつけ合い、病室を後にした。
学校に復学し、2年生をもう一度やり直そうとした時に、担任が齊藤ではないことを知った。
それどころか、齊藤恋という教師は学校に存在しなかった。
何がなんだか分からなかったが、齊藤が元刑事だと言っていたことを思い出し、その可能性に思い至る。
してやられたと思ったが、刑事として近づくよりも、親身な新しい担任として近づいた方が、陽介の元恋人の死の原因を探れると思ったとすれば、筋が通っている。
「覚悟って何だよ、会うことさえできないじゃないか」
独り言で嘆いた時、俺はとっくに齊藤に囚われていたのだと知った。
行き場のない感情を持て余したまま、陽介が入院する病院に向かう。
すると、面会の手続きをしようとした時、看護師が困ったような顔をした。
「すみません、今、実は他の方が水無月さんと面会中でして。もうすぐ終わられるとは思うんですけど、待ちますか?」
「……えっと、はい」
「ではそちらの長椅子で……」
座ろうとした時、厳重に封鎖された扉が開く。
そこから現れた人物に、はっと呼吸が乱れた。
齊藤恋が看護師に頭を下げ、こちらを向く。
俺と目が合うと、ふわりと笑った。
「せん……齊藤さん」
「水無月君と会って来て下さい。ここで待っています」
今すぐ問い質したい気持ちをぐっと堪え、齊藤と入れ違いで扉の中へ入った。
相変わらず陰鬱な空間だった。長い廊下を進み、一番奥の一室の前で、案内していた看護師が振り返る。
「こちらです。面会終了時間が迫っているので、できるだけ手短にお願いします」
頷くと、看護師はきびきびと立ち去った。
息を吸い込み、ドアをノックする。
毎回、この瞬間が相当緊張した。酷い状態の時を知っているだけに。
「はい」
「陽介?俺だけど」
「入っていいよ」
促されるままに入ると、いつも以上に生気を瞳に宿した陽介に出迎えられた。
「調子良さそうだな」
「まあな。あの刑事さんと知り合いなんだって?」
「齊藤さん、俺のこと話していたのか」
「詳しくは聞いてないけど、俺のために戦ってくれたんだってな」
戦っていた。齊藤は、そう思ってくれていたのだ。
涙腺が緩みそうになるのを堪えていると、陽介は思わぬことを言った。
「俺も勉強についていけないから、2年からやり直すことにした。だからよ、失った1年分、一緒にやり直そうぜ」
「うん……っ」
拳をぶつけ合い、病室を後にした。
