提供者:ドーナツさん
撮影時期:2001年6月3日。
撮影者との関係:妹が撮影。
映像に関するエピソード
この映像は3年前に亡くなった妹が、25年前に撮影した映像です。妹は虎倉井ブリーズワールドの熱心なマニアで、仕事が休みの日にはよく、ビデオカメラを片手に一人で遊びに行っていました。私も何度か一緒に遊びに行きましたが、妹の知識量には本当に驚かされるばかりで、それだけに、虎倉井ブリーズワールドの閉園が決まった時の意気消沈ぶりは見ていられませんでした。
今回送らせていただいた映像が撮影されたのは2001年の6月。ブリーズワールド閉園する約半年前ですね。私は同行しておらず、この日来園したのは妹一人です。
3年前。余命宣告を受けていた妹は、亡くなる前に身辺を整理しており、大事にしていた当時の虎倉井ブリーズワールドを撮影したビデオや集めたグッズなどを、ほとんど処分していました。場所を取るものを、家族に残すのは迷惑だと考えたのかもしれません。
そんな中で、妹が一本だけ、処分せずに残していたのがこのビデオです。思い出を全て処分してしまうのは寂しかったのか、それとも家族に残す形見のつもりだったのか。真意は妹のみが知るところです。
妹が生きていたならきっと、この「虎倉井ブリーズワールドメモリープロジェクト」に参加し、そのビデオや写真の数々を喜んで提供していたことでしょう。そう思ったからこそ今回、このビデオをプロジェクトに応募するに至りました。妹が愛した虎倉井ブリーズワールドの記憶が、長く後世にも残っていくことを願っております。そのことが妹に対する一番の供養になる気がしています。
【映像本編】
映像は虎倉井ブリーズワールドに入場してすぐの、ガイドマップや撮影パネルなどが置かれている石畳のエントランス広場から始まっている。カメラが回り、各アトラクションへと向かっていくお客さんの姿や声、アトラクションの走行音などの環境音などが入っているが、撮影者の肉声は聞こえない。個人的な記録なので、実況をしたりはせず、淡々と映像を記録しているようだ。
撮影者はアトラクションには乗らず、散歩を楽しむように、園内を6時の位置の入口から、時計回りにゆっくりと歩き始めた。開園して間もないので、グッズやお土産を売っているタイガーマーケットの利用者はまばらだ。少し進んだところにあるタイガーキッチンは、遅めの朝食か、あるいは早めの昼食か。すでにお客さんが入っている。
ふと撮影者が足を止める。カメラの先ではタイガーウインドの側でキトラくんの着ぐるみがお客さんと触れ合っていた。姿勢を低くして、小学校低学年ぐらいの男の子とハイタッチをしている。その次は、マスコットとの触れ合いに慣れていなそうな老齢の女性を優しくエスコートし、カメラを構えた娘さんらしき女性の「ハイチーズ」の掛け声に、一緒にピースサインで応じた。続けてキトラくんの前にやってきたのは若い男性二人組で、そのうちの一人が近くでカメラを回していた撮影者に気づいた。
「すみません。カメラのシャッターをお願いしてもいいですか?」
「いいですよ」
ここで初めて、撮影者のややハスキーな声がカメラに入り、お願いに快く応じた。カメラマンをするために一度ビデオカメラをしまったのだろう。撮影はそこで一度終わっている。
撮影が再開される。二人組の男性の記念撮影が終わり、人気が少なくなった。この場でのキトラくんのお客様との触れ合いが一段落したようだ。撮影者がカメラを向けると、キトラくんは「撮影に協力してくれてありがとう」と言いたいのだろう。カメラに向かって手を合わせ、頭を下げていた。
キトラくんとお別れし、撮影者は再び歩き始める。タイガーフォレストの前に差し掛かると、小さい子供を抱きかかえた母親が、足早に出てきた。迷路の中で泣くと、他のお客さんの迷惑になると考えたのだろう。他人が映すものではないと、カメラはすぐに向きを変えた。
時計回りの散歩も、3時の位置へと差し掛かる。一番人気のアトラクションであるタイガーホールは多少賑わっているが、それも全盛期に比べると控え目だ。待機列も10分待ち程度。少し離れた位置では、キトラくんの着ぐるみがファンサービスを行っている。時間的に考えて、タイガーウインドの前にいたのとは別のキトラくんの着ぐるみだろう。
撮影者は園内を一周し、6時の位置であるエントランス広場へと戻ってきた。一度休憩にしようと、撮影者はそのまま真っすぐ、中央の噴水広場へと向かっていく。美しい噴水の動きを収めつつ、撮影者は空いているベンチへと座った。そのままカメラを回して、噴水広場の様子を撮影していると。
「キトラくん?」
人気のない噴水広場に、風船を一個持ったキトラくんが現れた。キトラくんは噴水の淵に手をついて水場を眺めていた男の肩をトントンと叩いた。誤って落ちたら危ないので、噴水から離そうとしたのだろう。振り返った男の子にしゃがんで視線を合わせると、キトラくんは風船を手渡した。男の子は赤いキャプを被り、キトラくんがプリントされた黒い半袖のティーシャツに、ベージュのズボンを履いている。本物のキトラくんに会えたことが嬉しいのか、ピョンピョンと飛び跳ね、全身で喜びを表現している。するとその拍子に風船が男の子の手を離れて、見る見るうちに上昇していく。残念そうにその様子を見上げていた男の子を励ますように、キトラくんがその肩に優しく触れると、12時の方向を指さした。
そのままキトラくんは男の子と手を繋ぎ、噴水広場から連れ出していく。周りに大人の姿がないので、男の子は迷子だったのかもしれない。何となく気になり、撮影者はベンチから立ち上がり、二人の後を追った。
「どうしてここに?」
キトラくんと男の子はタイガーフォレストへと到着し、関係者用のバックヤードから施設の中へと入っていった。どうして迷子センターではなく、タイガーフォレストだったのかは謎だが、スタッフが側にいれば安全には違いない。行き先を見届けた撮影者は噴水広場へと引き返していった。
場面は午後のタイガーキッチンへと変わる。撮影者が、新たにバイキングのメニューに加わった、ソースのかけ方で虎柄を表現したエビフライを撮影していると、園内にアナウンスが流れ始めた。
『迷子のお知らせをします。〇〇市からお越しの、〇〇くん、7歳を探しています。身長は120センチくらい。髪は短めで、赤いキャップを被っています。服装はキトラくんがプリントされたティーシャツとベージュのズボン、赤いスニーカーを履いています。お見かけの方は、お近くのスタッフまでお知らせください』
「もしかして、さっきの子? だけどどうして」
その内容を聞き、撮影者の食事をする手が止まった。撮影者はそのままカメラも止めて、撮影を終えたようだ。
以上が、ドーナツさんから提供された映像の全てである。
撮影時期:2001年6月3日。
撮影者との関係:妹が撮影。
映像に関するエピソード
この映像は3年前に亡くなった妹が、25年前に撮影した映像です。妹は虎倉井ブリーズワールドの熱心なマニアで、仕事が休みの日にはよく、ビデオカメラを片手に一人で遊びに行っていました。私も何度か一緒に遊びに行きましたが、妹の知識量には本当に驚かされるばかりで、それだけに、虎倉井ブリーズワールドの閉園が決まった時の意気消沈ぶりは見ていられませんでした。
今回送らせていただいた映像が撮影されたのは2001年の6月。ブリーズワールド閉園する約半年前ですね。私は同行しておらず、この日来園したのは妹一人です。
3年前。余命宣告を受けていた妹は、亡くなる前に身辺を整理しており、大事にしていた当時の虎倉井ブリーズワールドを撮影したビデオや集めたグッズなどを、ほとんど処分していました。場所を取るものを、家族に残すのは迷惑だと考えたのかもしれません。
そんな中で、妹が一本だけ、処分せずに残していたのがこのビデオです。思い出を全て処分してしまうのは寂しかったのか、それとも家族に残す形見のつもりだったのか。真意は妹のみが知るところです。
妹が生きていたならきっと、この「虎倉井ブリーズワールドメモリープロジェクト」に参加し、そのビデオや写真の数々を喜んで提供していたことでしょう。そう思ったからこそ今回、このビデオをプロジェクトに応募するに至りました。妹が愛した虎倉井ブリーズワールドの記憶が、長く後世にも残っていくことを願っております。そのことが妹に対する一番の供養になる気がしています。
【映像本編】
映像は虎倉井ブリーズワールドに入場してすぐの、ガイドマップや撮影パネルなどが置かれている石畳のエントランス広場から始まっている。カメラが回り、各アトラクションへと向かっていくお客さんの姿や声、アトラクションの走行音などの環境音などが入っているが、撮影者の肉声は聞こえない。個人的な記録なので、実況をしたりはせず、淡々と映像を記録しているようだ。
撮影者はアトラクションには乗らず、散歩を楽しむように、園内を6時の位置の入口から、時計回りにゆっくりと歩き始めた。開園して間もないので、グッズやお土産を売っているタイガーマーケットの利用者はまばらだ。少し進んだところにあるタイガーキッチンは、遅めの朝食か、あるいは早めの昼食か。すでにお客さんが入っている。
ふと撮影者が足を止める。カメラの先ではタイガーウインドの側でキトラくんの着ぐるみがお客さんと触れ合っていた。姿勢を低くして、小学校低学年ぐらいの男の子とハイタッチをしている。その次は、マスコットとの触れ合いに慣れていなそうな老齢の女性を優しくエスコートし、カメラを構えた娘さんらしき女性の「ハイチーズ」の掛け声に、一緒にピースサインで応じた。続けてキトラくんの前にやってきたのは若い男性二人組で、そのうちの一人が近くでカメラを回していた撮影者に気づいた。
「すみません。カメラのシャッターをお願いしてもいいですか?」
「いいですよ」
ここで初めて、撮影者のややハスキーな声がカメラに入り、お願いに快く応じた。カメラマンをするために一度ビデオカメラをしまったのだろう。撮影はそこで一度終わっている。
撮影が再開される。二人組の男性の記念撮影が終わり、人気が少なくなった。この場でのキトラくんのお客様との触れ合いが一段落したようだ。撮影者がカメラを向けると、キトラくんは「撮影に協力してくれてありがとう」と言いたいのだろう。カメラに向かって手を合わせ、頭を下げていた。
キトラくんとお別れし、撮影者は再び歩き始める。タイガーフォレストの前に差し掛かると、小さい子供を抱きかかえた母親が、足早に出てきた。迷路の中で泣くと、他のお客さんの迷惑になると考えたのだろう。他人が映すものではないと、カメラはすぐに向きを変えた。
時計回りの散歩も、3時の位置へと差し掛かる。一番人気のアトラクションであるタイガーホールは多少賑わっているが、それも全盛期に比べると控え目だ。待機列も10分待ち程度。少し離れた位置では、キトラくんの着ぐるみがファンサービスを行っている。時間的に考えて、タイガーウインドの前にいたのとは別のキトラくんの着ぐるみだろう。
撮影者は園内を一周し、6時の位置であるエントランス広場へと戻ってきた。一度休憩にしようと、撮影者はそのまま真っすぐ、中央の噴水広場へと向かっていく。美しい噴水の動きを収めつつ、撮影者は空いているベンチへと座った。そのままカメラを回して、噴水広場の様子を撮影していると。
「キトラくん?」
人気のない噴水広場に、風船を一個持ったキトラくんが現れた。キトラくんは噴水の淵に手をついて水場を眺めていた男の肩をトントンと叩いた。誤って落ちたら危ないので、噴水から離そうとしたのだろう。振り返った男の子にしゃがんで視線を合わせると、キトラくんは風船を手渡した。男の子は赤いキャプを被り、キトラくんがプリントされた黒い半袖のティーシャツに、ベージュのズボンを履いている。本物のキトラくんに会えたことが嬉しいのか、ピョンピョンと飛び跳ね、全身で喜びを表現している。するとその拍子に風船が男の子の手を離れて、見る見るうちに上昇していく。残念そうにその様子を見上げていた男の子を励ますように、キトラくんがその肩に優しく触れると、12時の方向を指さした。
そのままキトラくんは男の子と手を繋ぎ、噴水広場から連れ出していく。周りに大人の姿がないので、男の子は迷子だったのかもしれない。何となく気になり、撮影者はベンチから立ち上がり、二人の後を追った。
「どうしてここに?」
キトラくんと男の子はタイガーフォレストへと到着し、関係者用のバックヤードから施設の中へと入っていった。どうして迷子センターではなく、タイガーフォレストだったのかは謎だが、スタッフが側にいれば安全には違いない。行き先を見届けた撮影者は噴水広場へと引き返していった。
場面は午後のタイガーキッチンへと変わる。撮影者が、新たにバイキングのメニューに加わった、ソースのかけ方で虎柄を表現したエビフライを撮影していると、園内にアナウンスが流れ始めた。
『迷子のお知らせをします。〇〇市からお越しの、〇〇くん、7歳を探しています。身長は120センチくらい。髪は短めで、赤いキャップを被っています。服装はキトラくんがプリントされたティーシャツとベージュのズボン、赤いスニーカーを履いています。お見かけの方は、お近くのスタッフまでお知らせください』
「もしかして、さっきの子? だけどどうして」
その内容を聞き、撮影者の食事をする手が止まった。撮影者はそのままカメラも止めて、撮影を終えたようだ。
以上が、ドーナツさんから提供された映像の全てである。



