虎倉井ブリーズワールドの思い出を募集しています

 風祭竜也です。

 直近で収集した情報の数々には、正直なところ驚きを禁じえません。常識では考えられないことばかりなのに、それが複数回重なると、途端に真実味も怯えてくるものです。一度は思考の隅に置いたはずの異形の怪物の存在が、何度も何度も顔を出してくる。

 升谷先生に教えていただいた「鬼虎」および「鬼虎伝説」の内容には驚愕しました。異形の怪物「鬼虎」は恐らく、虎倉井ブリーズワールドの建設現場で目撃されたり、1995年に撮影された写真に写り込んでいた未知の生物と同一の存在なのでしょう。

 そして「鬼虎」の名前は、虎倉井ブリーズワールド建設当時の契約書とされる文章にも「乙」として登場している。一見すると契約書風の怪文書ですが、これを見た瞬間、色々なことが腑に落ちる感覚がありました。

 当時虎倉井ブリーズワールドの建設現場に入っていた方の証言によると、現場で作業員が怪物の襲撃を受ける事件が多発し、恐怖から現場の作業員たちは爆発寸前だった。そこに当時の開発プロジェクトの責任者が現れ「先方と話はついた。もう作業員が襲われることはない」と明言し、実際に怪物による襲撃は治まったそうです。それはもしかしたら会社側が、怪物こと「鬼虎」と契約を結んだという意味だったのではないでしょうか? 伝承によれば「鬼虎」は古くからあの山に棲む神のような存在でもあった。土地の所有者と言い換えることもできます。

 そして異形の怪物と交わした契約書の内容も衝撃的だった。建設計画を停滞させないために会社側は、「鬼虎」に優位な契約を結び、将来的に、遊園地開業後に「鬼虎」の手により行方不明者が出ることを含め、様々な条件を受け入れた。伝承によると「鬼虎」は人間を食らい、中でも小さな子供の肉を好む……すみません。弟の顔が浮かんできて、この話題についてこれ以上は。

 この契約書の内容が本物だと仮定すると、一連の事件で発覚した様々な事実とも辻褄が合う。

 例えば、第3条にある「乙が居住する地下空間と遊園地とを結ぶ通路を、園内に設置しなければならない」という部分は、園長だけが入れる秘密のエリアとされていた、タイガーフォレスト内にあった地下空間へと続く通路のことでしょう。

 第4条の「遊園地開業後、乙と接触できる人間は遊園地の管理責任者のみとする。他の誰にも乙の存在を知られてはならない」について、管理責任者とは恐らく園長のこと。園長がよく秘密のエリアに入っては長時間戻ってこない。行方不明者が出てもどこか冷めた様子だった。などという証言が元スタッフの方から出ていましたが、今になって思えばそれは、園長だけが「鬼虎」とコンタクトを取り、何らかのやり取りを行っていたということなのでしょう。

 そして何よりも驚いたのは、第3条にある「甲は、乙が遊園地内を自由に行動するための器を提供しなければならない。また器の名称は乙の名前と近しいものでなくてはならない」という項目です。見た瞬間に思わずゾッとしてしまいました。

 遊園地の中を怪しまれることなく自由に動き回れる器。それはもしかしたら、着ぐるみのことではないでしょうか? 本来は園内で二体しか活動していないはずのキトラくんの着ぐるみが、時々三体存在していることがあった。また、着ぐるみはデフォルメされた、頭が大きめの2・5頭身のデザインですから、頭が大きい「鬼虎」の姿をすっぽりと覆い隠すには最適な形状をしていると思われます。
 異形の怪物が白昼堂々、マスコットキャラクターの姿で園内を歩き回り、何も知らない無邪気な子供の手を引き、自らの巣穴へと連れていく。想像しただけでもおぞましい話です。

 
 升谷先生から伝承を伺った際、お話を聞き、耳で「鬼虎」と捉えている時はあまりピンときていませんでしたが、後でそれを文字に起こした時にハッとしたんです。「鬼虎」は「キトラ」とも読めるなと。その時は偶然かとも思っていましたが、契約書の第3条にある「また器の名称は乙の名前と近しいものでなくてはならない」という一文を見て、全ては必然だと悟りました。

 まさか人気の愛らしいマスコット「キトラくん」が最初から、「鬼虎」の器となるべく生み出されたキャラクターだったなんて。
 かつて虎倉井ブリーズワールドで楽しい時間を過ごした方々の思い出を否定する気はありません。だけど別の視点から見ればあの遊園地全体が、凶悪な捕食者の狩場でもあった。それもまた事実のようです。