虎倉井ブリーズワールドの思い出を募集しています

 僕が小学生の頃のお話です。

 夏休み中の出来事でした。両親が用事で家を数日空けなければいけないタイミングあり、僕は三日ほど母方の実家に預けられることになりました。

 祖父母はとても優しい方々でしたし、不自由はありませんでしたが、少し不思議なところがあって、夏休み真っただ中にも関わらず、滞在中は僕に絶対に外遊びを許してくれなかったのです。時代を考えれば、子どもは元気に外で遊んできなさいとでも言いそうなものですが、僕が外で遊ばなくてもいいようにと、わざわざ発売したばかりのゲーム機まで買ってくれて。

 ゲームのおかげで時間は潰せましたが、僕は本来外で遊ぶのが好きな性格なので、だんだん家に籠っているのが耐えられなくなってきました。そして僕は一度だけ、祖父母に黙って出かけました。遠くに行くつもりはありません。ただ町を探索したいなと思っただけです。

 結局、近所の人に目撃されていたので、僕の外出は祖父母に伝わり、すぐに連れ戻されました。その時、普段優しい祖父母が凄まじい剣幕で僕を𠮟りつけ、その直後には安堵したように涙を流しました。どうしてそんなに心配するのと僕が聞くと、祖父母はこう言いました。

 「おにこ」に連れて行かれたかと思ったと。

 近くの山には「おにこ」という恐ろしい怪物が棲んでいるから、決して一人で出歩いてはいけないよと、祖父母は神妙な面持ちで僕に言い聞かせました。正直その時は意味が分からなかったけど、僕を本気で心配してくれたことは伝わってきたので、残りの期間はゲームをして大人しく過ごしていました。

 大人になった今ならば、子ども一人で出歩くのは危ないから、地域の伝承を引き合いに出して注意を促したのだと理解できますが、祖父母の慌てようはあまりにも実感がこもっていました。まるで過去にそういう出来事があったかように。

 現在、祖父母は亡くなっており、当時の話を聞くことは出来ません。

 後に亡くなった祖母の葬儀の場で小学生の頃の出来事を思い出し、独自に「おにこ」なる怪物についても調べてみたのですが、僕の調べた限り、あの地域にそういった伝承は確認できませんでした。祖父母の作り話とも思えませんが。

 あの山には本当に怪物が棲んでいるのでしょうか? 当時はただの山でしたが、現在あの土地には某遊園地が建っています。

 ペンネーム・深淵を除く者さん 20歳。