虎倉井ブリーズワールドの思い出を募集しています

「どうも、始まりましたよ生配信! 本日のトークテーマはずばり、今世間を騒がせている、旧虎倉井ブリーズワールドで大量の人骨が発見された事件についてです!」

 金髪の青年がゲーミングチェアに腰掛け、生配信を行っていた。青年は話題作りのために、他人に迷惑がかかるような過激な企画を行う。いわゆる迷惑系の配信者である。そんな彼が世間を騒がせる大事件に食いつくのは、いわば必然だった。

「俺も東京生まれ東京育ちだがら、虎倉井ブリーズワールドの名前は知ってたけど、こんなヤバい事件が起きるなんてまじビックリだよね。数十体の子供の人骨とか尋常じゃないって。行ったことはないけどマジ親に感謝だわ。ガキの頃に行ってたら俺も消えちゃってたかも。おー怖い怖い」

 青年が大袈裟に肩を抱き、画面外から二人の男性の大きな笑い声が聞こえた。金髪の青年以外は顔出していないが、このチャンネルは普段から三人で活動している。

「警察が現在捜査中とのことだけど、地下に祭壇があったって話もあるし、これって絶対に悪魔崇拝の儀式でしょう。小さい子供の血を捧げて悪魔をこの世に降臨させようとしたんだよ。それとも現代の口減らしだったりして? 何らかの事情で子供が邪魔になった親から子供を預かって、遊園地側が秘密裏に子供たちを始末していた的な。うーわ、もしそうなら超絶闇深案件じゃん。被害者の遺族の中には、今では大物議員になってる櫓井健一郎もいるらしいし、絶対に裏で悪いことしてるって」

 金髪の青年は何の根拠もない、杜撰で悪辣な考察をつらつらと並べていく。コメントは不謹慎だと配信をたしなめる内容と、「いいぞもっとやれ」と煽る過激な内容とで二分されている。

「この事件については少し前から、虎倉井ブリーズワールドの記憶を残す会ってグループが情報収集をしてたみたいで、最初は虎倉井ブリーズワールドのドキュメンタリー映像を撮影するって名目で、園内を撮影したホームビデオを一般から募集してたらしいけど、いくら真相を明らかにするためとはいえ、嘘の名目で映像集めはマズイでしょ。コンプラ意識がまじで終わってるわ。今度代表のところに突撃して正義ってもんを分からせてやるのも有りかもね」

 そう言って金髪の青年は、自身の手のひらに拳を打ち付ける仕草で、好戦的な一面を強調した。

「とにかく、近場で起きたこんな大事件を見過ごせない。俺のチャンネルではこれからも、この事件を追いかけるつもりです。もしかしたら貴重映像とか撮れちゃうかも。決定的瞬間を見逃さないために、今のうちにチャンネル登録をよろしく。通知もしっかりオンにしろよ。投げ銭も絶賛受付中でーす! 俺たちの交渉な取材活動のために、ぜひとも資金援助をお願いします!」

 両手をすり合わせてお願いする金髪の青年の姿で、この日の配信は終了した。