虎倉井ブリーズワールドの思い出を募集しています

 投稿者:元スタッフAさん

 私は以前、虎倉井ブリーズワールドに勤務していたものです。ずっと憧れていた遊園地スタッフのお仕事でしたし、遣り甲斐を感じ、とても充実した日々を送っていました。あの頃は本当に楽しかったです。

 しかし同時に、仕事の中で奇妙な違和感を覚えることもありました。遊園地である以上、度々小さなお子様の迷子が発生することがあります。痛恨の極みですが、そのまま行方不明となってしまったケースもある。当たり前のことですが、私たちスタッフは心配する親御さんのため、そして何よりも、心細くしているであろうお子様のために、必死に迷子の捜索を行いました。しかし、そんな現場のスタッフの必死さとは対照的に、報告を受けた園長はいつもどこか冷めていました。迷子が発生した時も、迷子が発見された時も、迷子が行方不明に発展した時も、まるで我関さずといった様子で。とても遊園地の責任者の態度とは思えません。

 一人の大人として、迷子の子供の身を案じる良心は持っていてもらいたいものですが、それはそれとして、仮にお金や保身のことしか考えていない人間だったとしても、あの態度は不自然に思えます。

 迷子が無事に保護されればよいですが、それが重大事故に繋がったら、遊園地側の責任問題が問われる。経営や保身を第一に考えていればそれこそ、「早く見つけ出せ」と焦燥に駆られるものではないでしょうか? 実際、迷子が行方不明に発展し、虎倉井ブリーズワールドへの世間の風当たりが強くなった時期もありましたが、そんな状況でも園長は、小さなお子様が行方不明になったという事実に胸を痛めるでも、親御さんやお子さんに対する他責で苛立つでもなく、ただただ冷めていました。善にしろ悪にしろ、人間らしい感情が失われているのではとさえ思えました。

 だけど、今になって思い返してみると、園長は冷めていたというよりも、迷子や行方不明が起こりえるもの。ある種の、予定調和のように捉えていた。だからこそ感情に変化が現れなかったのではないでしょうか? 突飛な発想かもしれませんが。
 
 そんな園長が一度だけ、表情を変えた瞬間を私はたまたま目撃していました。迷子になった女の子が発見されず、行方不明事件に発展した時、スタッフの誰もが安否を気遣い表情を曇らせる中、園長だけが安堵したような表情を浮かべていたのです。すぐに無表情に戻りましたし、本当に一瞬の出来事でしたから、私の位置からたまたまそういう表情に見えただけなのかもしれませんが、あの時の園長の安堵した表情は今でも忘れられません。園内で小さなお子さんが行方不明となり、園長がそれを知り安堵する。何をどうしたら、そういう状況が生まれるのでしょうか。


 投稿者・元スタッフBさん

 2000年頃。大学生だった私は一時期、虎倉井ブリーズワールドでアルバイトをしていて、主にキトラくんの着ぐるみに入っていました。失礼ながら、虎倉井ブリーズワールドに思い入れがあったわけではないのですが、私は当時演劇をやっていたので、着ぐるみに入り、セリフなしでそのキャラクターを演じるというのは、役者としての表現力を磨くことに繋がるのではという考えがありました。私が欲しかったのは、お給料以上に経験だったのです。

 キトラくんの着ぐるみに入り、キトラくんとしてお客さんと触れ合う時間は楽しかったです。夏場は流石に過酷でしたけどね。目的通り、役者としてもとても勉強になりました。小さな所作一つにキャラクター性が現れる。セリフ無しでも感情は伝えられる。相手が子供だからと侮ってはいけない。少しでも素を見せたら幻滅される。着ぐるみのバイトで得た経験は間違いなく、その後の演劇活動にも生かされました。正直な話、役者として大成はできませんでしたが、今でも趣味で演劇は続けています。

 そんな思い出深い、着ぐるみのアルバイトですが、当時とても不気味な体験をしたこともよく覚えています。仕事内容の説明を受けた時点で、園内で活動する着ぐるみは私を含めて二体だと聞かされていたのですが時折、もしかしたら着ぐるみは三体いるのではと感じることがあったんです。時間帯ごとに持ち場が決まっているので、着ぐるみ同士が鉢合わせすることは基本的にありませんが、着ぐるみで子供たちと触れ合っていると「あそことあそこにもキトラくんがいたよ」、「三匹目だ」とか、キトラくんが三体いるかのような言葉を貰うことが何度かあって。

 私も気になったので、休憩時間に正社員の方に、三体目のキトラくんがいるのか質問してみたのですが、「キトラくんの着ぐるみは二体だけだよ」と明言されました。ただその後に「ただ、君のように三体目のキトラくんがいるのではと感じるスタッフも多くてね。三人目のキトラくんの存在は、スタッフ間ではちょっとした怪談話になっている」とも言っていました。違和感を覚えているのは私だけではなかったみたいです。

 演劇活動が本格化した関係で、私はその後、虎倉井ブリーズワールドでのアルバイトを辞めました。勤務中はついぞ、三体目のキトラくんと出会うことはありませんでした。たぶん、三体目のキトラくんなんて居なくて、正社員の方がいっていたように、ただの怪談話の類だったのでしょう。だけど今になって思えば「怪談」という表現も気になります。可愛い虎の男の子なのに、「御伽噺(おとぎばなし)」ではなくどうして「怪談話」なのかと。三体目のキトラくんの存在は「ファンタジー」ではなく「ホラー」なのです。私自身もそうでしたがきっとみな無意識に、三体目のキトラくんの存在を、恐ろしいものと捉えていたんだと思います。


 投稿者:スタッフCさん

 私は虎倉井ブリーズワールドの元スタッフの一人です。園長に対して、当時からずっと引っ掛かりを覚えていたことがあります。

 スタッフの間では、虎倉井ブリーズワールドの園内には園長しか入ることができない、秘密のエリアが存在するという噂が囁かれていました。遊園地という大きな施設ですから、そういった都市伝説めいた噂が生まれるのはそう珍しいことではないでしょうが、私を含め、長年勤務しているスタッフは、この秘密のエリアの噂は概ね事実だろうという認識を持っていました。

 秘密のエリアは恐らく、タイガーフォレストのアトラクション内に存在すると思われます。その根拠は、園長が用事が無いにも関わらず、タイガーフォレストへと入っていく姿が目撃され、そのまま数時間戻ってこないということが度々あったからです。しかもその間、園長の姿は、アトラクション内、バックヤードを問わず、タイガーフォレストのスタッフの誰にも目撃されていません。そのため、タイガーフォレストのどこかに秘密のエリアの入り口があり、園長はそこに長時間いたのだろうというのが、ベテランスタッフの間では定説でした。

 長時間席を外していた園長が戻られた際、試しに一度「どこに行っておられたのですか?」と尋ねてみたことがありましたが、「君には関係のないことだ」と突き放されてしまいました。適当な話で場を取り繕うでもなく、とにかく話題を早く打ち切りたいという印象を受けました。まるで探られたくない腹でもあるかのように。例えばプライベートな空間でサボっていただけなら、こんな反応にはならないような気がします。園長は秘密のエリアで、一体何をしていたのでしょうか?

 一度、園長が出張で不在の時に、営業終了後に同僚と、タイガーフォレストに何か隠し扉のようなものがないかを調べたこともありましたが、結局秘密のエリアは見つかりませんでした。真相は園長のみぞが知るところです。虎倉井ブリーズワールドの建物は、廃墟となって今も残っていますが、園長亡き今も、秘密のエリアはまだ存在し続けているのでしょうね。


 投稿者:元スタッフDさん

 過去に虎倉井ブリーズワールドに勤務していた者です。迷子センターの担当だった身としては、見つけてあげることが出来なかったお子さんたちのことを思い出さずにはいられません。今でもあの子たちは虎倉井ブリーズワールドのどこかにいるのではないか? なぜだかそんな気がしてなりません。

 一従業員が持ち出していいものでないことは百も承知ですが、迷子のお子さんの情報を記した業務日報の写しは、今でも自宅に大切に保管してあります。虎倉井ブリーズワールドの閉園による混乱で、当時の記録が失われてしまう恐れがありましたので。遅すぎるなんてことはない。今からでもあの子たちが発見されることを、切に願っています。