静岡県立安久中学校にて行われた実験の記録

【学級担任日誌】
記載者  :森下明文
所属   :静岡県立安久中学校
     :学校運営委員
担当学級 :2年2組
授業年月日:9月5日(月曜日)
出席生徒数:29名
欠席生徒数:なし
早退生徒数:なし
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特記要項:1年生担当の寺西先生より、自身のクラスから一人の生徒の名前が名簿から消えているという旨の相談があった。

感想等:朝のHR前の時間、寺西先生が不思議そうな表情を浮かべて私のもとを訪れ、「自分のクラスの生徒が一人、名簿から消えているのですが……」と言葉を発した。しかしそんなものは当然だろう。その生徒は性格の修正を行うべく今日から治療を受けることとなっているのだ。それにあたってクラス名簿から削除し、しばらく他の場所に移ってもらうこととしているのだ。この治療によって当該生徒は悪しき考えを改め、美しい心を持つこととなり、そしてそれは周りのためにもなる。そうするように相談をしてきたのは寺西先生の方ではないか。まぁ、寺西先生はまだまだ新人の先生だから、非合理的な事を言ってしまうのも無理のないことないかもしれない。私は努めて冷静に、やさしい口調で「これも生徒のためですから、心配はいりませんよ」と言っておいた。寺西先生はそれでも不思議そうな表情を浮かべていたが、いずれ理解してくれることだろう。
また、当該生徒の治療法については、運営委員から”マクマリー降下法に基づく弱励起波の脳内パルス放射”をもって行うと通知があった。私も詳しくは分からないのだが、この治療法は今より4年後から5年後を目途に、若年性脳変性疾患の治療を目的として国に臨床試験の申請を行う予定となっているとのことで、ここで優れた効果が得られれば、実に有意義な実験となる。当該生徒も、自らの記録が人々の役に立つというのなら、これほどまでの幸せはないと考えることだろう。生徒の保護者には私の方からすでに説明を行っており、お礼金についても支度済みである。その際、「こんなに頂けるのですね。あの子を生んだ甲斐があるというものです。ぜひご自由にどうぞ」との返答を頂いた。