烈火の鬼神〜凍てつく人形の花嫁に愛をそそぐ〜

真鈴に重いものを背負わせた責任を感じた真知は、せめてもの償いとして真鈴が使う神具に霊力を施している。

(もっと強い霊力を施したいけど、伊澄家は実力者揃い。少しでも強い力を感じ取れば霊力の主を探し回るわ)

帝と鬼神が認めた一族はそう簡単に欺くことはできないということだ。

そんな中、一年に一度の新年の祭り、雪華祭(せっかさい)の日が近づいていた。

魔物が現れ始めた年から始まったもので魔物に打ち勝ち、平和を取り戻せるようにと願いが込められた祭りだ。祭りではその力を見せる模擬祓いが行われる。

中でも伊澄家の模擬祓いは注目度が高く、実力者である真鈴の霊力を見ようと大勢の祓い屋の一族が集まる。

毎年、両親と真鈴が出席していて、真知は病弱と言う理由で祭りには欠席し、留守を預かっている。

「真知様」

ぼーっとしていた真知は使用人の声でふと我に返る。

「はい。お入りください」

「失礼致します」

吉武が伊澄家の当主を継いでから使用人働いている、齢六十の女性。名を(こずえ)という。

「梢さん。真鈴の神具の手入れ終わりました。こちらを」

丁寧に布に包んだ神具を梢に手渡す。

「たしかに。本日もご苦労さまでした真知様」

「いえ。これくらいしか一族に貢献できませんので、当然のことです」

「真知は十分頑張っておいでです。それから旦那様からこちらを預かってまいりました」

「お父様から。何かしら」

手渡されたのは質の良い和紙の手紙。中の紙を取り出して読むと雪華祭の日時が書かれていた。

(日にちは毎年同じの元旦ね。招待客には両親と真鈴…これは…)

「梢さん、なぜ私の名が書かれているのでしょうか?」

吉武が真知を病弱と偽っているため、招待状に名前を書かれることは一切ない。しかし、今回はしっかりと真知の名前が書かれていた。

「詳しいことは分かりません。ただ、旦那様からは当日は付き人として着いてくるようにと承っております」

あくまで無能の娘を世間に晒さないという、吉武の邪な考えから付き人という役付けをしたのだろう。

「お父様がそう仰るなら従うまでです。ただ気になるのは、差出人の名前に鬼神と書いてあること」

「梢も確認した時は驚きました。まさかあの鬼神様、直々に招待なさるとは思いもしませんでした」

招待状は帝や鬼神は一切書くことはない。招待客の書類の確認や運営の監督役を主に受け持っている。